5月26日、リスクモンスター株式会社より「第2回『賃金引上げに関するアンケート』」の結果が公表され、春闘並みの賃上げを実感している人は全体の5%程度に留まるなど、シビアな現状が示されました。
現役世代の収入増がなかなか実感しにくい中、生活のベースとなる「公的年金」についてはいかがでしょうか。
今月は2カ月に一度の年金支給がない月ですが、ご自身の年金についてじっくり考える良い機会かもしれません。
かつて私が多くのお客さまのライフプランに携わり、現在もメディアで数多くのお金に関するニュースを伝えてきた経験を通じても、将来への不安を和らげるためには、まず自分がいくら年金を受け取れるのか客観的なデータで把握することが第一歩になると感じています。
この記事では、2026年度の最新年金額や、厚生年金・国民年金受給者の平均月額、さらに65歳以上の無職世帯の家計収支まで、公的なデータを基にわかりやすく解説します。ご自身のセカンドライフを豊かにするためのヒントが、きっと見つかるはずです。
公的年金制度の基本!「2階建て」構造について解説
日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2種類から成り立っており、「2階建て」構造と呼ばれることがあります。
日本の公的年金制度のしくみ
国民年金(基礎年金)とは?1階部分の仕組みを解説
はじめに、制度の1階部分にあたる「国民年金」について解説します。国民年金は、日本に住む20歳から60歳未満の方が原則として加入する制度です。
国民年金の保険料は全国一律で、毎年度見直しが行われます。参考として、2025年度の月額保険料は1万7510円です。
40年間すべての保険料を納めると、65歳から満額の老齢基礎年金を受け取れます(2025年度の満額は月額6万9308円)。保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて年金額が減額されます。
厚生年金とは?2階部分の仕組みを解説
次に、2階部分である厚生年金制度を説明します。会社員や公務員、また特定の事業所で働くパートタイマーなど、一定の条件を満たす方が加入対象です。
厚生年金は国民年金に上乗せされる形で加入するため、「2階建て」といわれています。
国民年金と違い、厚生年金の保険料は給与額に基づいて決まるため、収入が高いほど保険料も上がります。ただし、保険料には上限が設けられており、一定以上の収入がある方は同額です。
将来受け取る年金額は、厚生年金への加入期間や納付した保険料額によって変わるため、受給額には個人差が生じやすい特徴があります。
【2026年度】年金額改定のポイントをチェック
公的年金の支給額は、毎年の物価や賃金の動きに応じて改定される仕組みです。
2026年度の年金額は、2026年1月23日に公表されました。
2026年度の年金額の例
2025年度と比べると、国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げが決定しています。
2026年度の国民年金・厚生年金はいくらもらえる?
- 国民年金(老齢基礎年金・満額1人分):月額7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的なモデル):月額23万7279円(前年度比+4495円)
※昭和31年4月1日より前に生まれた方の老齢基礎年金(満額)は月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※厚生年金のモデルケースは、平均的な収入(賞与込みで月額換算45万5000円)の夫が40年間勤務し、妻が専業主婦だった場合の給付水準です。
厚生年金・国民年金の平均月額はいくら?受給額の分布も紹介
多くの方が関心を持つ「厚生年金」と「国民年金」の平均的な月額は、どの程度なのでしょうか。
ここでは、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、60歳から90歳以上の全受給権者を対象とした「平均年金月額」と「受給額の分布」を見ていきます。
厚生年金の平均月額を男女別に比較
厚生年金の平均額(全年齢)
- 全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
厚生年金の受給額分布【1万円刻み】
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均月額は全体で15万289円ですが、男女間では約6万円の差があり、男性が16万9967円、女性が11万1413円となっています。
国民年金の平均月額と受給額分布を男女別に解説
国民年金の平均額(全年齢)
- 全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金の受給額分布【1万円刻み】
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金全体の平均月額は5万9310円で、男女別では男性が6万1595円、女性が5万7582円でした。
受給額の分布を見ると「6万円以上~7万円未満」の層が最も多く、多くの方が満額に近い金額を受け取っていることがわかります。
【65歳以上・無職】シニア世帯のリアルな家計収支
ここでは、65歳以上で仕事をしていない夫婦世帯と単身世帯の、1カ月あたりの家計収支について見ていきます。
2026年2月6日に総務省より公表された「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上無職の夫婦世帯と単身世帯のひと月の家計収支を見てみましょう。
ケース1:65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支
65歳以上の生活費(夫婦世帯)
実収入の月額平均:25万4395円
■うち社会保障給付(主に年金)22万8614円
支出の月額平均:29万6829円
■うち消費支出(いわゆる生活費):26万3979円
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
・ うち諸雑費:2万2047円
・うち交際費:2万3257円
・うち仕送り金:1135円
■うち非消費支出:3万2850円
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
月々の家計収支の結果
- 4万2434円の赤字
この夫婦世帯の場合、ひと月の実収入25万4395円に対し、支出は合計29万6829円で、月の家計収支は4万2434円の赤字となっています。
ケース2:65歳以上の無職単身世帯の家計収支
65歳以上の生活費(単身世帯)
実収入の月額平均:13万1456円
■うち社会保障給付(主に年金):12万212円
支出の月額平均:16万1435円
■うち消費支出:14万8445円
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教育:0円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
・うち諸雑費:1万4052円
・うち交際費:1万6956円
・うち仕送り金:591円
■うち非消費支出:1万2990円
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
月々の家計収支の結果
- 2万9980円の赤字
単身世帯の場合は、ひと月の実収入13万1456円に対し、支出は合計16万1435円で、月の家計収支は毎月2万9980円の赤字となっています。
年金受給者の確定申告は必要?不要なケースと便利なスマホ申告
年金受給者の中には、特定の条件を満たすことで「確定申告不要制度」の対象となり、確定申告が免除される場合があります。
確定申告が不要になる2つの条件とは
確定申告が不要になるのは、以下の2つの条件を両方満たす場合です。
確定申告不要制度の対象者
- 公的年金等(※1)の収入金額の合計が400万円以下で、かつ、そのすべてが源泉徴収の対象であること
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下であること
※1 国民年金、厚生年金、老齢共済年金などの老齢年金や、恩給、確定給付企業年金などが該当します。
※2 生命保険の個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金などが該当します。
ただし、確定申告が不要な場合でも、申告をすることで所得税が戻ってくるケース(※3)があります。
さらに、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になるケース(※4)もあります。例えば、源泉徴収票に記載されていない生命保険料控除や地震保険料控除などを適用したい場合や、公的年金以外の所得がある場合です。
※3 医療費控除や雑損控除などを適用し、公的年金から源泉徴収された所得税の還付を受けたい場合などです。
※4 所得税の確定申告を行えば、その内容が市区町村に連携されるため、別途住民税の申告をする必要はありません。
スマホとマイナンバーカードで確定申告がもっと手軽に
近年、スマートフォンとマイナンバーカードの連携機能が向上し、令和7年(2025年)分の確定申告はさらに手軽に行えるようになります。
スマートフォンのマイナンバーカード機能を使えば、カード本体を直接読み取ることなく、申告書の作成からe-Taxでの送信まで完結できます。
国税庁の公式サイトにある「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が完成します。自動計算機能により、計算ミスも防げるでしょう。
また、マイナポータルと連携させれば、保険料控除証明書や源泉徴収票などの情報を自動で取り込み、申告書に反映させることが可能です。これにより、書類集めや入力の手間が大幅に削減され、確定申告にかかる時間を短縮できます。
筆者からのひとこと:「退職金があるから大丈夫」と油断は禁物!まずは年金見込み額の確認を
この記事では、公的年金の基本的な仕組みから2026年度の年金額、高齢者世帯の家計実態まで、幅広く解説しました。
平均的なデータとご自身の状況を比べることで、客観的な立ち位置を把握する一助となったのではないでしょうか。
公的なデータからは、年金収入のみでゆとりある生活を送ることが容易ではないという現実も浮かび上がります。
かつて銀行窓口で資産運用業務に従事していた頃、現役時代に十分な収入を得ていたお客様であっても、いざご自身の年金見込額を正確に確認して「思っていたより少ない」とギャップに驚かれるケースを幾度となく目の当たりにしてきました。
だからこそ、早い段階でご自身の年金見込額を把握し、将来のライフプランを具体的に描いておくことが重要です。
まずは第一歩として、「ねんきんネット」などでご自身の年金記録を確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
