転職、育休、海外赴任、留学、闘病などのライフイベントによって、公的年金の加入期間にブランクが生じるケースは少なくありません。
「加入期間が短いと、将来の年金はどうなるんだろう」と気になっている40歳代・50歳代の方も多いのではないでしょうか。
筆者はかつて地方自治体の窓口で年金や健康保険の切り替え対応をしていましたが、厚生年金から国民年金への加入を忘れていたり、手続きはしたものの保険料の支払いが苦しくて未納になったりするケースが多かったものです。
今回は、厚生労働省の最新データをもとに、加入期間が短い場合の年金額の目安と、少しでも増やすための対策を解説します。
年金制度は「国民年金と厚生年金」で構成される
日本の公的年金制度は、下図のとおり基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」で構成されています。よく「2階建て構造」と言われますね。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金から支給される老齢基礎年金は、「20歳〜60歳の40年間(480月)」フルに保険料を納めて満額が受け取れます。
もし未納や免除の期間があれば、その分が満額より差し引かれるということです。
厚生年金は「加入月数」と「納めた保険料」に応じて金額が決まります。加入期間が短ければその分、老後の受給額も少なくなる仕組みです。
2026年度、老齢基礎年金の満額は月7万608円
2026年度も年金は増額改定され、6月15日支給分(4月・5月分)から反映されました。
令和8年度の年金額の例
- 国民年金(老齢基礎年金):7万608円(1人分・40年間全期間納付の満額)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分)
この満額7万608円は「40年間まったくブランクなく保険料を納めた」場合の額です。加入期間が短くなれば、その分老齢基礎年金は減額されます。
加入期間別、年金額はいくらになるか
では、年金の加入期間別に年金額はいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。
老齢基礎年金(国民年金)の場合
老齢基礎年金は「満額×(納付月数÷480月)」で計算されます。2026年度の満額7万608円で試算すると次のとおりです。
- 10年間(120月)納付:7万608円×120/480=月1万7652円
- 20年間(240月)納付:7万608円×240/480=月3万5304円
- 25年間(300月)納付:7万608円×300/480=月4万4130円
- 30年間(360月)納付:7万608円×360/480=月5万2956円
- 35年間(420月)納付:7万608円×420/480=月6万1782円
- 40年間(480月)納付:月7万608円(満額)
受給資格を得るには最低10年間の加入期間が必要です。10年ちょうどだと月額約1万7652円と、生活費としては到底足りない水準になります。
厚生年金(老齢厚生年金)の場合
厚生年金の報酬比例部分は「平均標準報酬額×0.005481×加入月数」で計算されます。仮に平均標準報酬30万円で計算すると、次のとおりです。
- 10年間(120月)加入:30万円×0.005481×120=年間19万7316円(月約1万6443円)
- 20年間(240月)加入:年間39万4632円(月約3万2886円)
- 30年間(360月)加入:年間59万1948円(月約4万9329円)
- 40年間(480月)加入:年間78万9264円(月約6万5772円)
これに老齢基礎年金がプラスされます。加入期間が短いほど、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が減るため、影響は二重に効いてきます。
年金加入期間を延ばす3つの方法
もし過去に空白期間があり、これから挽回したい場合にはどのようにすればいいのでしょうか。
60歳〜65歳の任意加入制度
60歳までに老齢基礎年金の満額に届いていない場合、60〜65歳の間に任意加入すれば、その分年金額を増やせます。海外居住期間や免除期間があった方に特に有効です。
免除・猶予期間の追納
過去に免除・猶予を受けていた期間は、10年以内なら追納可能です。追納すれば納付済み扱いとなり、老齢基礎年金の減額を抑えられます。
厚生年金加入で働き続ける
60歳以降も厚生年金に加入して働けば、加入月数と保険料額に応じて老齢厚生年金が増えます。「経過的加算」で老齢基礎年金の不足分もカバーできる仕組みです。
【元公務員が解説】年金がもらえない不安に備える3つの視点
早めに現状を把握し、複数の対策を組み合わせるほど、老後の家計は立て直しやすくなります。相談現場で多く聞いてきた困りごとから、着手しやすい3つの視点にまとめました。
自分の加入状況をまず「見える化」する
不安の多くは「わからない」から生まれます。
ねんきんネットに登録すれば、これまでの加入期間・保険料納付状況・将来の受給見込額を、パソコンやスマートフォンから確認できます。
毎年届く「ねんきん定期便」と合わせて、まずは自分が受給資格期間(10年)を満たしているか、追納できる免除・猶予期間が残っていないかをチェックしましょう。事実を数字で確認するだけで、次に打つ手が具体的に見えてきます。
相談先を早めに使い分ける
年金の相談窓口は複数あり、目的によって使い分けると効率的です。
加入履歴や受給見込みの確認は最寄りの年金事務所、追納や任意加入の手続きは市区町村の国民年金係、老後の家計全体の設計はファイナンシャルプランナーや社会保険労務士、生活が立ち行かない場合は自治体の福祉窓口と、テーマごとに窓口が違います。
「どこに聞けばいいかわからない」段階で年金事務所や自治体窓口に電話してみると、次にとるべき窓口を案内してもらえます。
「単独対策」ではなく「組み合わせ」で埋める
年金の不足額を1つの手段だけで埋めようとすると、負担が偏りがちです。追納で加入期間を確保しつつ、iDeCoやNISAで自助努力を並行し、健康なうちは就労延長で厚生年金を厚くする。住まいの固定費を見直して支出そのものを下げる。
こうした複数の対策を「一度に全部」ではなく段階的に組み合わせるほど、無理なく老後の穴を埋めていけます。
まずは今月から一つ始める、というくらいの気軽さで動き出すのが継続のコツです。
まとめにかえて
加入期間が短いと、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が減額されます。まずは「ねんきん定期便」で自分の加入状況と見込み額を確認しましょう。
もし満額に届いていない場合、任意加入・追納・厚生年金加入延長で少しずつ増やすことができます。
記事で紹介した方法以外にも繰下げ受給などの制度を利用することもできますし、年金以外の「NISA」「iDeCo」「個人年金保険」などを利用する選択肢もあります。
どれもデメリットが存在しますが、正しく把握することが大切です。
40歳代・50歳代のうちに把握しておけば、対策の選択肢はまだ十分にあります。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
