日本年金機構が6月3日に更新した「令和8年4月分からの年金額をお知らせする「年金額改定通知書」、「年金振込通知書」の発送を行います」によれば、年金が減額になる在職老齢年金の基準額が月51万円から65万円へと引き上げられました。
シニア世代の働き方に関する制度が緩和される一方で、60歳代を迎え、年金生活が目前に迫ってくると、「同世代は年金をいくら受け取っているのだろう」と、周囲の状況が気になるものです。
日々メディアの編集部で年金や経済の動向を見つめる筆者の立場からも、ご自身の老後を考える上で、世間のリアルな受給実態を把握しておくことは非常に有益だと感じています。
この記事では、公的年金の基本的な仕組みを解説するとともに、厚生労働省の最新データに基づき、60歳代から90歳以上までの厚生年金と国民年金の平均受給額を年齢別に詳しく紹介します。
さらに、現役時代の働き方が年金額にどう影響するのか、具体的なモデルケースも交えて解説します。ご自身の将来設計を考える上での、一つの目安としてお役立てください。
公的年金の基本!「2階建て構造」とは?国民年金と厚生年金の仕組み
日本の公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」と表現されます。
これは、制度の土台となる1階部分の「国民年金(基礎年金)」と、その上に乗る2階部分の「厚生年金」で構成されているためです。
厚生年金と国民年金の仕組み
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
1階部分「国民年金(基礎年金)」の概要
- 加入対象者:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての方が対象です。
- 年金保険料:保険料は所得にかかわらず一律で、年度ごとに見直されます(2026年度月額:1万7920円)。
- 受給額:20歳から60歳までの40年間、保険料をすべて納付すると満額を受け取れます(2026年度月額:7万608円)。
国民年金の加入者は、働き方などに応じて第1号から第3号被保険者に区分されます。このうち、会社員や公務員である第2号被保険者は、次に説明する厚生年金にも加入します。
厚生年金の保険料には国民年金分も含まれているため、別途国民年金の保険料を納める必要はありません。また、第2号被保険者に扶養されている配偶者である第3号被保険者も、個別に保険料を納付する必要はありません。
2階部分「厚生年金」の概要
- 加入対象者:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす方が国民年金に上乗せして加入します。
- 年金保険料:収入(給与や賞与)に応じて保険料が変動しますが、上限が設けられています(※2)。
- 受給額:加入していた期間や、納付した保険料の総額によって個人差が生じます。
※1 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
【年齢別】厚生年金の平均受給月額一覧(60歳代〜90歳以上)
ここからは、厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、年齢ごとの平均年金月額を一覧で見ていきます。
はじめに、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均受給月額を年齢別に確認しましょう。
60歳代(60〜69歳)の厚生年金・平均月額
60歳代の厚生年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の受給額には、特別支給の老齢厚生年金のうち、定額部分の支給開始年齢引き上げにともない、報酬比例部分のみを受け取っている方の金額も含まれています。
70歳代(70〜79歳)の厚生年金・平均月額
70歳代の厚生年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
80歳代(80〜89歳)の厚生年金・平均月額
80歳代の厚生年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
90歳以上の厚生年金・平均月額
90歳代の厚生年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 90歳以上:16万4027円
原則的な年金受給開始年齢である65歳以降で見ると、厚生年金の平均月額は14万円〜16万円台で推移していることがわかります。
年齢が上がるにつれて、平均額も緩やかに上昇する傾向が見られます。
【年齢別】国民年金の平均受給月額一覧(60歳代〜90歳以上)
続いて、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給月額を年齢別に見ていきましょう。厚生年金と同様に、年齢による差はあるのでしょうか。
60歳代(60〜69歳)の国民年金・平均月額
60歳代の国民年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満で国民年金(老齢基礎年金)を受け取っているのは、繰上げ受給を選択した方です。
70歳代(70〜79歳)の国民年金・平均月額
70歳代の国民年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
80歳代(80〜89歳)の国民年金・平均月額
80歳代の国民年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
90歳以上の国民年金・平均月額
90歳代の国民年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 90歳以上:5万5633円
原則として年金の受給が始まる65歳以降では、国民年金(老齢基礎年金)の平均月額は5万円〜6万円台であることがわかりました。
厚生年金と国民年金、受給額の個人差はどれくらい?
老後の暮らしを支える公的年金は、生活の基盤となる大切な収入源です。多くの方が、できるだけ多くの年金を受け取りたいと考えていることでしょう。
ただし、年金の受給額は現役時代の加入状況によって決まるため、個人差が非常に大きい点には注意が必要です。
これを踏まえ、実際にどの程度の個人差があるのかを確認してみましょう。
【男女別】厚生年金の平均月額と受給額の分布
厚生年金の平均額(全年齢)
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
厚生年金の受給額分布(1万円ごと)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
男女別に見ると、男性の平均が16万9967円、女性が11万1413円と、約6万円の差があります。
また、受給額の分布グラフが示すように、「月額1万円未満から30万円以上」まで幅広く分布しており、個々の状況を確認することの重要性がわかります。
【男女別】国民年金の平均月額と受給額の分布
国民年金の平均額(全年齢)
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の受給額分布(1万円ごと)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は、男女全体および男女別でも5万円台となっています。分布を見ると「月額1万円未満〜7万円以上」に広がっていることが確認できます。
国民年金は満額が定められているため、厚生年金ほど受給額に大きなばらつきは生じません。
最も多いボリュームゾーンは「6万円以上〜7万円未満」であり、多くの人が満額に近い金額を受け取れていることがうかがえます。
働き方の違いで年金額は変わる?ライフコース別モデルケース
年金の受給額には個人差があるからこそ、平均値だけでは実態が見えにくいものです。ここでは「将来、自分はいくらくらいもらえるのか」をイメージするため、ライフコース別の目安額を紹介します。
厚生労働省が公表した資料から、働き方の違いによる年金額の例を見ていきましょう。
この資料では、年金の加入経歴を5つのパターンに分け、それぞれの概算額が示されています。
ライフコース別のモデル年金額
出所:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
モデルケース1:厚生年金加入が中心の男性
《年金月額》17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
モデルケース2:国民年金加入が中心の男性
《年金月額》6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
モデルケース3:厚生年金加入が中心の女性
《年金月額》13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
モデルケース4:国民年金加入が中心の女性
《年金月額》6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
モデルケース5:第3号被保険者期間が中心の女性
《年金月額》7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
厚生年金の加入期間の長さや、現役時代の平均収入によって、将来受け取る年金の月額は大きく変動します。
特に、現役時代に国民年金と厚生年金のどちらに主として加入していたかによって、老後の受給額に大きな差が出ることがわかります。
年金だけで生活している高齢者世帯の割合は?
現在、年金を受給している高齢者世帯の中で、年金収入のみで生活しているのはどのくらいの割合なのでしょうか。
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯(※)の平均的な所得のうち、「公的年金・恩給」が63.5%を占めています。次いで、仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%という構成です。
また、「公的年金・恩給を受給している世帯」に限定すると、全収入が「公的年金・恩給」である世帯は43.4%という結果でした。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
総所得に占める公的年金・恩給の割合
高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成
出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
このデータから、半数以上の世帯が年金以外の収入源を確保し、生活を補っている実態がわかります。
シニア世代が「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?
老後は年金だけで暮らせるのでしょうか。実際に60歳代・70歳代の家計事情を見てみましょう。
60歳代・70歳代の約3割が「年金だけでは日常生活費もカバーできない」
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025」では、二人以上世帯のうち60歳代の33.6%、70歳代の26.5%が、「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。
「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?
物価の上昇が続くなか、年金だけで家計をやりくりすることに不安を感じている世帯は少なくありません。健康や介護への備えなど、将来を見据えた支出もあることから、年金だけで生活を成り立たせるのが難しいケースも見られます。
老後の暮らしは、年金の受給額だけで決まるものではありません。貯蓄や支出の状況も含めて、自分に合った家計のバランスを考えておきたいですね。
元銀行員の筆者からのアドバイス!「平均に惑わされない」老後計画を
本記事では、公的年金の基本的な仕組みから、年齢別の平均受給額、さらに働き方による受給額の違いをモデルケースで解説しました。
全体の平均額は、ご自身の状況を客観的に見るための参考になります。しかし、私自身、銀行員時代の経験や現在の記者としての活動を通じても、将来への漠然とした不安を解消するには「ご自身が将来いくら受け取れるのか」を正確に把握することが何より重要だと感じています。
これまで見てきたように、年金の受給額は現役時代の働き方や加入期間に大きく左右されるため、個人差が非常に大きいという特徴があります。
ご自身の正確な年金見込額を知るためには、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、オンラインでいつでも年金記録を確認できる「ねんきんネット」の活用が便利です。
平均額は目安の一つです。ねんきん定期便などで自分の受給見込み額を確認し、老後の資金計画に役立てましょう。
参考資料
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
