7月も下旬にさしかかり、1年の後半に向けて生活設計を見直す方も多いのではないでしょうか。ファイナンシャルプランナーとしてこれまで多くのお客様のお金の相談をお受けしてきましたが、特にシニア世代の方からは、将来の社会保険料、とりわけ医療費の負担について不安に思われるという声をよく伺います。
厚生労働省から令和8・9年度の後期高齢者医療制度に関する保険料率の見込みが公表されました。この記事では、最新の保険料見込みや地域による負担の違い、そして新たに導入される高額療養費制度の見直しについて、ポイントを絞って解説していきます。
令和8・9年度の後期高齢者医療保険料、平均月額7989円へ。7.8%の引き上げ見込み
後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について
厚生労働省が公表した見込みによると、令和8・9年度における後期高齢者医療保険料(医療分)は、1人あたりの全国平均で月額7989円となる予定です。
この金額は、令和6・7年度の月額7411円と比較して578円、率にして7.8%の増加に相当します。
保険料が上がる2つの背景:「医療費の増加」と「後期高齢者の負担割合引き上げ」
保険料が上昇する背景には、主に2つの要因があります。1つは1人あたりの医療給付費が約4.89%増えること、もう1つは医療給付費に占める後期高齢者の負担割合が13.27%に引き上げられることです。
ただし、政府は過去の剰余金や財政安定化基金からの資金を活用することで、保険料の急激な上昇を緩和する措置も講じています。
後期高齢者医療保険料の地域差は?都道府県別の負担額ランキングトップ5
後期高齢者医療保険料は、全国一律ではなく、各都道府県に設置されている「後期高齢者医療広域連合」がそれぞれ定めています。
そのため、地域の医療費水準や財政状況などに応じて保険料額に大きな差が生まれるのが特徴です。
保険料負担が大きい都道府県トップ5(月額見込み)
- 東京都:1万352円
- 神奈川県:9842円
- 愛知県:9045円
- 大阪府:9010円
- 沖縄県:8731円
保険料負担が小さい都道府県トップ5(月額見込み)
- 青森県:4990円
- 岩手県:5496円
- 福島県:5744円
- 秋田県:5847円
- 新潟県:5852円
保険料が最も高額な東京都と、最も低額な青森県を比較すると、その差は月額で5362円にもなり、2倍以上の開きがあることがわかります。
このように、居住する地域によって保険料負担が大きく変わる点は、今後の生活設計を考えるうえで重要なポイントといえるでしょう。
8月から変わる高額療養費制度、「年間上限」新設で長期治療の負担軽減
高額療養費の年間上限の新設
「高額療養費制度」とは、1カ月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。
年齢や所得に応じて月々の上限額が設定されており、高額な医療が必要になった際の家計負担を軽減する役割を担っています。
この制度の持続可能性を高めるため、2026年8月より、負担能力に応じた内容に見直されることが決まりました。
新設される「年間自己負担上限」とは?治療が長期化した場合の家計負担を軽減
今回の制度見直しにおける最大のポイントは、一部所得層で月々の負担上限が引き上げられる一方で、新たに「年間の自己負担上限」が設けられることです。これにより、治療が長期にわたる場合の経済的負担を和らげる狙いがあります。
従来の制度では、上限額は月単位で設定されていたため、治療が数カ月に及ぶと負担が大きくなるという課題がありました。
新しい制度では、年間の自己負担額が上限に達した場合、それ以降の同一年内における医療費の窓口負担は発生しなくなります(ただし、入院時の食費など一部は対象外です)。
今後の制度変更に備え、まずは情報収集から
この記事では、公表された後期高齢者医療制度の保険料率の見込みを基に、将来の保険料引き上げや高額療養費制度の変更点について解説しました。
全国平均で月額7989円への値上げが見込まれるなど、ご自身の家計への影響を考え、少し不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
また、住んでいる地域によって保険料に大きな差があることも、より身近な問題として感じられたのではないでしょうか。
一方で、今回の改定には、治療が長引いた際の負担を軽減する年間の自己負担上限が導入されるなど、生活を守るための前向きな側面も含まれています。
これからの暮らしをより安心できるものにするためにも、まずはお住まいの自治体から送付される通知や案内を丁寧に確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
早い段階で正確な情報を把握しておくことが、将来に向けた備えを具体的に進める第一歩となります。こうした小さな準備の積み重ねが、未来の大きな安心感につながるはずです。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
