この記事はここがポイント
- 老後2000万円は介護費用など考慮すると約2368万円が安心の防衛ライン。
- 貯蓄のみでこの目標を目指すには毎月約8万3333円の高額積立が必要。
- NISA積立投資なら20年運用で利回り3%は月6万1190円、6%は月4万4108円の積立で目標達成可能。
厳しい残暑が続く8月中旬、今年もいよいよ後半戦に入りましたね。お盆休みなどをきっかけに、ご自身の将来やお金について考える時間を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。物価高がニュースを賑わす中、「老後2000万円問題」という言葉を思い出し、漠然とした不安を抱えている方も多いはずです。
筆者が証券会社に勤務していた時代、数多くのお客様から資産運用や老後資金の形成に関するご相談を受けてきました。その中で、「結局、私の場合はいくら準備すればいいの?」「どうやって資産を作ればいいの?」という疑問の声は本当に多く寄せられました。
今回は、投資初心者の方にもわかりやすく、最新データをもとにした「リアルな老後必要額」と、無理なく準備するためのNISA活用法をプロの目線から解説します。
【老後はいくらあると安心?】老後2000万円問題の「現在地」30年間の不足額を試算!
「老後2000万円問題」は、2019年に金融庁の報告書がきっかけで注目されました。当時は2017年のデータを基に「毎月約5.5万円の赤字」として試算されていましたが、物価上昇や年金額の改定を経た最新の「2025年(令和7年)平均結果」ではどのように変化するのでしょうか。
総務省の最新調査に基づき老後の家計収支(無職世帯)について、30年間での生活費の不足分を試算してみましょう。
65歳以上の《夫婦のみ・単身》無職世帯それぞれの家計収支
「生活費の赤字」は以下の通りです。
- 【夫婦ふたり】毎月の赤字:約4.2万円 = 30年で約1528万円の不足
- 【おひとり様】毎月の赤字:約3.0万円 = 30年で約1079万円の不足
「特別なことをせず、普通に生活するだけ」でも、これだけの貯金の取り崩しが必要になります。
「プラスアルファの備え」が2000万円の正体
予想外の支出にも「備え」を

「では、夫婦で1500万円貯めればいいの?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。上記の「約1528万円」には「特別な支出」が含まれていないからです。
公益財団法人 生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護にかかる費用の目安は以下の通りです。
- 一時費用(住宅改修など): 平均47万円
- 月額介護費用: 平均9.0万円
- 平均介護期間: 55.0ヶ月(4年7ヶ月)
こうした「もしも」の支出を夫婦の赤字(約1528万円)に足すと、合計で「約2368万円」になります。つまり2000万円という数字は、決して贅沢をするためのお金ではなく、何かあったときのための「安心の防衛ライン」なのです。
貯金だけで「2000万円」目指すのはキツい?《NISA》20年間の積立投資シミュレーション
老後の備えとして「2000万円」を目標にする場合、投資を使わず貯蓄だけで準備しようとすると、毎月約8万3333円という高額な積立が必要です。しかし、NISA(少額投資非課税制度)を活用し複利効果を得ることで、月々の負担を大きく抑えられます。金融庁のつみたてシミュレーターを使い、期間20年・2つの想定利回りで比較してみましょう。
①堅実に増やしたい(利回り3%想定)
利回り3%は、国内外の株式と債券を組み合わせた「バランス型」の投資信託などで手堅い運用のイメージです。
《目標金額2000万円・想定利回り3%・積立期間20年》
- 毎月の積立額: 6万1190円
- 20年間の元本: 1469万円(運用収益:531万円)
- 貯蓄のみの場合と比べて、月々の負担を約2万2000円軽減しながら目標達成を目指せます。
②しっかり増やしたい(利回り6%想定)
利回り6%は、全世界株式(オール・カントリー)や米国株インデックスなど、株式中心に運用した場合の長期平均に近い設定です。
《目標金額2000万円・想定利回り6%・積立期間20年》
- 毎月の積立額: 4万4108円
- 20年間の元本: 1059万円(運用収益:941万円)
3%運用と比較しても月々の積立額が約1万7000円少なく済むため、浮いたお金を現在の生活や教育費などに柔軟に回しやすくなります。
※シミュレーションは過去のデータに基づいた試算であり、将来の成果を保証するものではありません。投資には価格変動リスクがあることを理解して進めましょう。
まとめにかえて
「2000万円」という大きな目標を見るとハードルが高く感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、ご自身の年齢や現在の資産状況によっては、必ずしも今すぐ2000万円を用意しなければならないわけではありませんので、過度に悲観しないでください。
また、証券会社で勤務していた頃、「老後資金を積立投資で準備したい」というご相談を受ける機会が数多くありました。その中で、多くの方に共通して気になったことが「リターンだけを考えた投資」です。多くのお客様の資産運用に伴走してきて強く感じるのは、「リターンだけを追い求めた無理な投資は長続きしない」ということです。
まずは「ご自身の現在の資産状況と、目標とする金額」をしっかり把握しましょう。資産運用は、リスクについては避けられがちのため、リスクを第一に考え、ご自身に合った物を選ぶことを念頭に置いておきましょう。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。

記事内で試算された不足額は年金収入を家計の柱とする無職世帯を前提としていますが、定年後も無理のない範囲で働き続けて収入を得ることで、この赤字額そのものを大幅に圧縮することが可能です。
また、昨今の物価高を踏まえると、NISA等での資産運用は「お金を増やす」ためだけでなく、インフレによる現金の「実質的な目減りを防ぐ(価値を守る)」という重要な役割も担っています。金融資産を育てることと並行して、長く働き続けられる健康やスキルの維持を意識することも、これからの老後対策の大きな柱と言えるでしょう。