この記事はここがポイント
- 障害年金請求は初診日1年6カ月後の障害認定日が基準、事後重症による請求も可能
- 令和8年度、障害基礎年金1級105.9万円、2級84.7万円、障害厚生年金3級最低63.55万円
- 障害者手帳なしでも申請可能、初診日不明対応や5年時効に注意し早めの相談を
「まさか自分が障害年金の対象になるとは思わなかった」と、生命保険会社に勤務していた時にお客様から話を伺ったことがあります。
病気やケガは、誰にとっても他人事ではありません。万が一のときに知っておきたい制度として、今回は障害年金を取り上げます。
日々の仕事や生活の中で、もし病気やケガによって今まで通りの暮らしを送るのが難しくなってしまったら、これからの生活費や家族の支えをどうすればよいのでしょうか。そのような万が一の事態に備え、現役世代の暮らしを経済的に支えてくれる心強い公的制度が「障害年金」です。
今回は日本年金機構の最新の調査結果をもとに、令和8年度の支給額や請求のタイミングについて分かりやすく解説します。
障害年金はいくらもらえる?障害基礎年金1級は年105.9万円、2級は84.7万円
障害年金には、自営業者などが対象となる「障害基礎年金」と、会社員や公務員などが対象となる「障害厚生年金」の2種類があります。受給額は障害の程度(1級から3級)によって異なり、令和8年度の年間支給額は以下のとおりです。
障害年金の年間支給額(2026年度)
■1級の支給額
- 障害基礎年金:105万9125円(昭和31年4月1日以前生まれの方は105万6125円)
- 障害厚生年金:報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
■2級の支給額
- 障害基礎年金:84万7300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は84万4900円)
- 障害厚生年金:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
■3級の支給額
- 障害基礎年金:支給なし
- 障害厚生年金:報酬比例の年金額(最低保障額63万5500円、昭和31年4月1日以前生まれの方は63万3700円)
1級・2級の障害厚生年金に該当する方は、障害基礎年金もあわせて受給できます。3級には障害基礎年金の制度がないため、障害厚生年金のみとなります。なお、3級よりさらに軽い障害には、一括支給の「障害手当金」(最低保障額127万1000円)が用意されています。
障害年金の受給を左右する「1年6カ月」のルールとは
障害年金は、病気やケガによってどれだけ生活や労働に支障が出ているかで判断されます。障害者手帳がなくても申請可能で、精神疾患や内部疾患も対象です。ここでは、請求のタイミングに関わる重要な考え方を、厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」から見ていきます。
まず押さえておきたいのが「障害認定日」です。これは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)から「1年6カ月」を過ぎた日のことを指します(1年6カ月以内に症状が固定した場合は、その日が障害認定日になります)。この障害認定日を軸に、請求方法は大きく3つに分かれます。
①障害認定日による請求
障害認定日による請求
障害認定日の時点で、法令に定める障害の状態に該当していた場合の請求方法です。この場合、障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。
例えば、初診日が令和6年3月25日であれば、障害認定日はそこから1年6カ月後の令和7年9月25日です。この時点で障害の状態に該当していれば、請求により令和7年10月分から受け取れます。なお、請求書は障害認定日以降いつでも提出できますが、遡って受け取れる年金は時効により5年分が限度です。
②事後重症による請求
事後重症による請求
障害認定日の時点では障害の状態に該当していなかったものの、その後病状が悪化して該当するようになった場合の請求方法です。この場合は、障害認定日の翌月分ではなく「請求日の翌月分」から年金を受け取ります。
例えば、障害認定日には該当しなかった方が、その後人工透析を開始し、その状態で請求した場合、請求日の翌月分から受け取りが始まります。事後重症による請求は、65歳の誕生日の前々日までに行う必要がある点にも注意が必要です。
③初めて2級による請求
初めて2級による請求
すでに何らかの障害(先発の障害)がある方が、別の病気やケガ(基準傷病)による新たな障害を負い、2つの障害を併せて初めて1級または2級の状態になった場合の請求方法です。基準傷病の障害認定日から65歳に達する日の前日までの間に該当すれば、2つの障害を併せた程度で、請求日の翌月分から受給できます。ただし、基準傷病の初診日が先発の障害の初診日より後にあることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
いずれの請求方法でも、初診日の前日において保険料の納付要件(原則、被保険者期間の3分の2以上の納付・免除、または直近1年間に未納がないこと)を満たしていることが前提となります。請求日が遅くなるほど受け取りの開始も遅くなるため、該当する可能性がある場合は早めの請求が望まれます。
初診日不明・時効・等級変更…障害年金の気になるポイントを解説
ここからは、日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」をもとに、よくいただく疑問を3つ解説します。
①初診日を証明する書類を準備できないときはどうすればよい?
障害年金の請求には初診日の証明が必須ですが、病院の廃院やカルテの破棄により証明書が得られないケースがあります。しかし、診察券やお薬手帳など、初診日を合理的に推定できる一定の書類があれば、申し立てた日が認められる場合があります。まずは諦めずに、お近くの年金事務所へ相談してみるのが確実です。
②障害認定日から複数年が経過!障害年金の請求はできる?
障害認定日から何年も経過している場合でも、当時の診断書と現在の診断書の2種類を用意すれば請求自体は可能です。ただし、公的年金には5年という時効が設けられている点には注意が必要です。仮に過去に遡って受給権が認められた場合でも、実際に支給されるのは請求時点から過去5年分となります。大切な給付をしっかりと受け取るためにも、該当する可能性がある方は、一度お早めに専門窓口へ相談してみるのが安心です。
③受給中に病状が悪化したら?障害等級を変更することはできる?
現在、3級の障害厚生年金などを受給している方が、病状の悪化により上位の等級に該当するようになった場合は、年金額の改定請求ができます。この請求書は原則として65歳になる前(誕生日の前々日まで)に提出する必要があります。ただし、過去に一度でも障害基礎年金の受給権を有した(2級以上に該当した)ことがある方なら、65歳を過ぎた後でも改定請求が可能です。
まとめにかえて
今回は、令和8年度の障害年金の支給額や、障害認定日による請求・事後重症による請求・初めて2級による請求といった請求方法について解説しました。障害年金は請求のタイミングによって受給開始時期が変わるため、制度の仕組みを正しく理解し、早めに手続きを進めることが大切です。
障害認定日はあくまで「初診日から1年6カ月」という機械的な基準ですが、そこで該当しなかった場合でも、事後重症という形で請求できる道があるという点は、意外と知られていないかもしれません。受給の手続きにおいては、初診日の証明や5年の時効といった注意点も存在します。正確な仕組みの把握と速やかな対応が重要です。
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及び相続診断士。ジブラルタ生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。

「障害年金」は、私たちが病気やけがなどによって障害の状態になったときに生活を支えるための公的制度です。「障害の状態」には、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由だけでなく、長期療養が必要ながんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの内部疾患や、統合失調症をはじめとする精神障害により仕事や日常生活が著しく制限される場合も含まれます。
また、障害者手帳を持っていない場合でも受給できる可能性がありますので、該当するかもしれないと思った際は、年金事務所などへ早めに相談するとよいでしょう。