この記事はここがポイント
- 50代iDeCoは「増やす」より「守る」が肝。非課税スイッチングで利益を確保する戦略。
- 10年間月2万円積立、投資信託(年利3%)は定期預金(年利0.3%)に対し約32万円の利益差。
- 50代からのiDeCoも可能。月5,000円からの少額でも長期・節税メリット享受。
「老後資金のために、そろそろiDeCoを始めたほうがいいのかな……」
ニュースなどで話題になるたび、50代から慌てて投資信託の積立を検討する方は少なくありません。
しかし、元銀行員の視点からあえてお伝えします。50代のiDeCoにおいて、「どうやって増やすか(商品選び)」から考え始めるのは少し危険です。運用できる期間が残り少ない50代が真っ先に知っておくべきなのは、「増やしたお金を、どうやって確実に守り切るか」という出口の戦略なのです。
今回は、50代が絶対に知っておくべき「利益を守るテクニック」を筆頭に、10年間でのリアルな運用シミュレーションや初心者が陥りがちな罠など、後悔しないための老後資産の作り方を解説します。
50代後半になったら知っておきたい「スイッチング(預け替え)」の効果的な活用
iDeCoは「一度積立設定をしたらほったらかし」が基本と言われますが、60歳の受け取りが近づいてきたら意識したメンテナンスが必要です。
せっかく投資信託で順調に資産が増えていても、受け取り直前のタイミングで金融危機などが起き、相場が大暴落してしまっては、大切な老後資金の計画が大きく狂ってしまいます。
そこで意識的に利用したいのが、iDeCoならではの「スイッチング(預け替え)」という機能です。
これは、運用して利益が出ている「投資信託」の一部または全部を売却し、他の商品に買い替える手続きを指します。
通常の投資では利益を確定する際に約20%の税金が引かれますが、iDeCoの口座内であれば、非課税のまま「攻め(投資信託)」から「守り(定期預金)」へシフトチェンジできる点がメリットです。
目標金額に達した時や受け取りが迫ってきた時は、この機能を使って利益を確定させて守る。これが50代のiDeCoの効率的な活用方法と言えるでしょう。
【10年間積立投資】定期預金と積立投資ではどのくらい差がつくのか
「攻め」の部分を見ていきましょう。50歳から60歳までの10年間、実際に毎月積み立てた場合、定期預金と投資信託ではどのくらい結果に差がつくのでしょうか。
【毎月2万円を10年間(元本240万円)積み立てた場合】
- 定期預金(年利0.3%で試算):2,472,979円 (利益: 72,979円)
- 投資信託(年利3%で運用) :2,794,800円 (利益:394,800円)
※手数料等は考慮せず簡易計算した目安です
年利3%で10年間積立投資をしていた場合、約40万円も資産を多く増やしています。
ラストスパートの10年間でも攻める姿勢は崩さず、効率的にスイッチングで利益を確定していくことが重要です。
元銀行員が伝えたい「初心者が気を付けたい投資信託の注意点」
元銀行員として積立投資のアドバイスしていた頃、「定期預金では資産が目減りするから、投資信託を選べばいいんですね。」と発言する投資初心者が多々いらっしゃいました。
最近の投資ブームに乗って、人気の「全世界株式(オール・カントリー)」や「海外株式」といった投資信託を100%の割合で選ぶ人が急増しています。
しかし、全世界に分散投資している=多くの国に投資している、では必ずしもないことに注意が必要です。
実は、こうした人気商品の目論見書(中身の説明書)を開けてよく見てみると、構成銘柄の6割から7割が「アメリカの企業」で占められているケースが非常に多いのです。
アメリカ経済が好調なうちはどんどん増えていきますが、もし大きくつまずいた時、あなたの老後資金は同時に大打撃を受けるリスクを抱えることになります。
投資信託を選択する際は内訳を必ず確認するようにしましょう。
iDeCoの平均掛金額はどのくらい?
運用する上での注意点がわかったところで、「毎月いくら積み立てればいいのか」と悩む方も多いでしょう。無理のない掛金を設定するために、ほかの人がどのくらい積み立てているのか平均額を見てみましょう。
掛金額分布
最新のデータを見ると、全体の平均掛金額は16,645円となっています。
掛金の分布で最も多いのは「20,000円〜(約179万人)」の層です。これは、会社員(企業年金なし・第2号加入者)の掛金上限が月額23,000円であるため、上限いっぱいで設定している人が多いことが大きく影響しています。
一方、「10,000円未満(約76万人)」や「10,000円〜(約109万人)」といった、1万円前後の少額から始めている層も非常に多いという点です。
「まとまったお金がないと意味がないのでは?」と思い込んでいる方も多いですが、そんなことはありません。
月々5,000円や10,000円といった無理のない少額からでも、まずは早く始めて「長期投資の恩恵」と「節税メリット」を長く受けることが何よりも大切なのです。
50代から始めるiDeCoの老後資産形成とは
50代から老後資産形成を始めるのは、一見遅いと思われるかもしれません。しかし、決して諦める必要はありません。「今」がこれからの人生の中で一番若い時です。
焦って流行りの商品に飛びつくのではなく、まずは「家計全体の現状」を正しく把握すること。その上で、50代の強力な味方となるiDeCoを正しく活用すれば、税負担を軽減しながら老後に向けた資産の再構築は十分に間に合います。
まずはご自身の資産バランスを見つめ直し、iDeCoの資料請求という小さな、けれど確実な第一歩から、将来に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。
みずほ銀行出身。FP2級保有。確定拠出年金の講師として全国でセミナーに登壇。フィンテック企業広報を経て、現在はLIMOで官公庁データを基に、年金や資産運用、新NISA、iDeCo等の記事を執筆。
