2026年8月、偶数月である今月は年金の支給月です。昨今では「年金制度改正法」の成立・施行により、パートやアルバイトで働く方の厚生年金(会社員などが加入する年金制度)への加入対象が段階的に拡大されるなど、私たちの社会保障制度は大きな転換期を迎えています。
「老後は現役時代の年収に応じた年金がもらえるから大丈夫」と思われる方もいるかもしれませんが、実際の受給額を見ると、年金だけでゆとりのある生活を送るには少し工夫が必要な現状が見えてきます。
本記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、最新の年金事情と、将来に向けて私たちが無理なくできる備えについて解説します。
厚生年金、いちどの支給で「40万円(月額20万円)」以上受け取る人はどれくらいいる?
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(基礎年金である国民年金分を含む)の平均受給額は、月額約15万円(15万289円)です。
男女別では男性が約17万円、女性が約11万1000円と、大きな開きがあるのが現状です。
厚生年金の受給額ごとの受給権者数
厚生年金の受給額
さらに詳しく受給額の分布を見てみると、驚きの実態が浮かび上がります。
- 20万円以上: 全体の18.8%(5人に1人以下)
- 30万円以上(年間360万円超): わずか0.12%
つまり、月額30万円以上の年金を受け取れる方は全体のほんの一握りです。多くの方が月15万円〜20万円未満の範囲で生活をやりくりしているのが実情です。
また、平均受給額には男女差があり、男性が約17万円であるのに対し、女性は約11万1000円となっています。
これには、女性が育児や介護などでキャリアを中断せざるを得なかったり、パートタイムなどの非正規雇用で働く期間が長かったりといった、働き方の違いが大きく影響しています。
社会保障給付費144兆円超!私たちの暮らしを支える給付と負担の現状
私たちが受け取る年金をはじめ、医療や介護などの公的なサポート(社会保障制度)には、皆さんが支払う保険料だけでなく、多額の公費(税金)が使われています。
社会保障の給付と負担の現状
厚生労働省の資料によると、2026年度予算ベースにおける「社会保障給付費(国が年金や医療などのために支払うお金の総額)」は144.1兆円にのぼり、対GDP比(国の経済規模に対する割合)で20.8%を占めています。社会保障給付費は高齢化に伴って年々増加しており、それに伴い私たちの国民負担率(所得に対する税金や社会保険料の割合)も上昇傾向にあります。
「子どもから高齢期まで」ライフステージ別に見る給付と負担
ライフサイクルで見た社会保険及び保育・教育等サービスの給付と負担のイメージ
子どもから子育て世代、そしてご高齢の方まで、すべての方が安心できる社会保障制度を維持するためには、「給付(もらうお金)」と「負担(払うお金)」のバランスについて、将来世代に負担を先送りしないよう、国全体で継続的な検討が必要とされています。
将来の安心のために今からできる3つの備え
公的年金は老後生活を支える大切な土台ですが、より安心して暮らすためには自分自身での備えも重要です。まずは次の3つから始めてみましょう。
年金見込額を確認する
- 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で将来受け取れる年金額を把握する
- 老後資金の不足額や必要な備えを具体的にイメージする
家計の固定費を見直す
- サブスクリプションサービスや通信費、保険料などを定期的にチェックする
- 節約できた分を将来の資金づくりに回す
NISAやiDeCoで資産形成を始める
- 無理のない金額から積立投資を始める
- 税制優遇制度を活用しながら長期的に資産を育てる
月30万円以上の年金を受け取れる人はごく一部ですが、必要以上に不安になる必要はありません。大切なのは、他人と比較するのではなく、ご自身のライフプランや家計状況に合わせて無理なく準備を進めることです。
まずは「年金を知る」「家計を整える」「資産形成を始める」の3つを意識し、できることから一歩ずつ取り組んでいきましょう。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
