この記事はここがポイント
- 2026年8月改定の高額療養費制度は、住民税非課税世帯の医療費負担を軽減
- 住民税非課税の年金収入目安、横浜市では65歳以上単身155万円以下
- 住民税非課税世帯は、高額療養費に加え国保・介護保険料減免など公的サポートが適用
筆者は、FP(ファイナンシャルプランナー)ですが、シニア世代からお金のご相談をお受けしていると、「年金から引かれる税金が高くて苦しい」「病気になったときの医療費が不安」といった切実なお声をうかがうこともあります。
実は、「住民税が課税されるかどうか」は、単に税金の支払いがあるかだけでなく、医療費や介護費用などの公的サポートの自己負担額を大きく左右する重要な分岐点です。
とくに今月(2026年8月)から「高額療養費制度」の見直しがスタートしました。全体として負担上限が見直される中で、所得の少ない「住民税非課税世帯」に対しては、生活への影響を抑えるための手厚い「負担軽減措置」が講じられています。
本記事では、住民税の仕組みと「年金収入いくらまでなら非課税になるのか」のボーダーラインを解説した上で、今月改定された高額療養費制度における非課税世帯への負担軽減措置について詳しく解説します。
【住民税の基本】そもそも「住民税」の仕組みとは?「均等割」・「所得割」の2層構造
住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に支払う地方税です。地方自治体の重要な財源であり、公共サービスやインフラ整備に使われます。
住民税の基本:「均等割」と「所得割」の2層構造
住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造
個人住民税は、均等割と所得割の2つの部分から成り立っています。
- 均等割: 所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割: 所得に応じて税額が決まる部分
公的年金からの天引き(特別徴収)
受給している公的年金から年6回の年金支給時に、住民税があらかじめ天引き(特別徴収)されます。納税者の方々には納税通知書により税額などをお知らせします。
納税通知書の発送日は自治体によりますが、一般的に毎年6月初旬~中旬頃届くところが多いです。
【住民税非課税世帯】年金収入「いくらまでなら住民税はかからない?」
均等割・所得割のどちらも課税されない状態を「住民税非課税」と言います。「住民税非課税世帯」は、世帯全員が住民税非課税となる世帯を指します。
では、住民税が非課税となる要件を詳しく見てみましょう。以下のいずれかに該当した場合、住民税が非課税となります。
- 生活保護を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
- 前年の所得が各市区町村の基準を下回る
1と2の要件は全ての市区町村で共通ですが、3の所得要件は市区町村ごとに異なる基準があります。
年金収入に対する市民税・県民税が非課税となる目安はいくら?【横浜市の例】
収入が「公的年金のみ」の場合、いくらまでなら住民税がかからないか、神奈川県横浜市の例でみてみましょう。目安は以下の通りです。
配偶者のいない方(単身)
- 65歳以上: 155万円以下
- 65歳未満: 105万円以下
配偶者のいる方(本人の年金収入の目安)
- 65歳以上: 211万円以下
- 65歳未満: 171万3334円以下
※年金の収入のみあるものとして計算しています。また、配偶者のいる方については、配偶者に収入が無いものとして計算しています。
【高額療養費制度】今月8月から変わる!住民税非課税世帯への「負担軽減措置」をみる
今月(2026年8月)より、ひと月に医療機関の窓口で支払った金額が高額になった際に払い戻しが受けられる「高額療養費制度」の上限額が見直されました。
全体として負担額の基準が変わる中で、住民税非課税世帯に対しては生活を圧迫しないよう、手厚い負担軽減措置が設けられています。 対象となる非課税世帯は、年齢や所得状況に応じて主に以下の3つの区分に分けられます。
高額療養費制度の上限額
【対象区分と自己負担上限額(2026年8月〜2027年7月)】
70歳未満の非課税世帯(区分オ)
月額上限は3万6900円(直近12ヶ月で4回目以降の「多数回該当」時は2万4600円)、年間上限は29万円に抑えられます。
70歳以上の非課税世帯Ⅱ
世帯ごとの月額上限は2万5700円(多数回該当時は24,600円)、年間上限は29万円です。さらに、個人ごとの外来月額上限が1万1000円(年間上限14.4万円)に設定されています。
70歳以上の非課税世帯Ⅰ(年金収入約80万円以下など)
世帯ごとの月額上限は1万5700円、年間上限は18万円と最も自己負担が低く設定されています。個人ごとの外来月額上限も8000円まで抑えられます。
万が一の入院や手術で医療費がふくらんでも、こうした上限額の仕組みを知っておくことで精神的な不安は大きく和らぐはずです。いざという時に慌てず制度を活用できるよう、今のうちにご自身がどの区分に当てはまるのか確認しておきましょう。
まとめにかえて
住民税の基本的な仕組みから非課税となるボーダーライン、そして今月スタートした高額療養費の改定における負担軽減措置について解説しました。
住民税非課税世帯に該当すると、高額療養費の上限額が低く抑えられるほか、国民健康保険料や介護保険料の減免など、数多くのセーフティネットが適用されます。医療や介護の不安が大きいシニア世代にとって、この負担軽減措置は生活を守る大きな助けとなるはずです。
ただし、FPとしてひとつお伝えしたいのは、「非課税にとらわれすぎないこと」の大切さです。
税金や医療費の負担を少しでも減らしたいというお気持ちから、働く時間や収入を控えめに調整される方もいらっしゃいます。しかし、非課税ラインを意識するあまり収入を抑えてしまうと、かえって手元に残るお金が減り、日々の暮らしが窮屈になってしまうこともあります。
制度による負担軽減措置は、あくまで生活を支える「安心の枠組み」です。目先の負担軽減だけでなく、これからの生活でどれくらいのお金が必要かという全体バランスを見つめ直し、ご自身に合った働き方や暮らし方を選んでいきましょう。
参考資料
- 総務省「個人住民税」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(リーフレット)」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 特設サイト 」
- 大田区ホームページ「介護保険料」
- 東京都武蔵野市「個人住民税 納税通知書の見方・ご自宅に納税通知書が届いたかた【普通徴収・公的年金からの特別徴収】」
- 神奈川県横浜市「年金収入に対する市民税・県民税が非課税となる目安はいくらですか?」
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
