この記事はここがポイント
- 熊本地震被災のイオン(8267)・イオン九州(2653)、逆風下も前日比プラスで終了
- イオン九州、施設被害公表も29日出来高95,200株に急増
- イオン九州2027年2月期1Q、営業収益3.0%増・営業利益18.3%増と本業堅調
29日の東京株式市場は続落となりました。
前日の米国市場におけるハイテク株安の流れを受けたほか、半導体株比率の高い韓国総合株価指数(KOSPI)で午後にサーキットブレーカーが発動するなど、半導体関連銘柄を中心に売りが先行しました。
マーケットでは「半導体売り・ディフェンシブ買い」の対比が鮮明化しており、これまで出遅れ感のあった小売りやエンタメなど、内需・ディフェンシブ銘柄を物色する動きが加速しています。
熊本地震の影響を受けたイオンとイオン九州 施設被害と営業状況
28日に発生した熊本地震において、「イオンモール熊本」(熊本県嘉島町)をはじめとするグループ施設が被害を受け 、市場ではイオン<8267>およびイオン九州<2653>の値動きに注目が集まっていました。
イオン九州が29日に開示した「令和8年熊本地震の影響に関するお知らせ」によると、同社および子会社が運営する店舗において配管の破損や天井ボードの落下、商品の破損等の被害が発生し、熊本県内の総合スーパーやスーパーマーケット等で営業を見合わせている状況です。
人的被害も報告されています。
また、業績への影響については現在調査中とし、「業績に重大な影響を及ぼすことが見込まれる場合は速やかに知らせる」としています。
なお、避難誘導後に爆発が生じるなどの不測の被害を受けた「イオンモール熊本」について、イオンは29日午後4時半から熊本市内で記者会見を開きました。
記者会見にはイオンの吉田昭夫社長とイオンモールの大野恵司社長が出席しました。
【足元業績】イオン九州の第1四半期決算は「営業増益」を確保
今回の地震被害に対する精査が進められる一方、イオン九州の直近の足元業績は本業で堅調な推移を見せています。
同社が7月10日に発表した2027年2月期 第1四半期連結決算(2026年3月1日~5月31日)の要点は以下の通りです。
- 連結経営成績
- 営業収益:1,358億9,300万円(前年同期比+3.0%)
- 営業利益:6億5,500万円(同+18.3%)
- 経常利益:4億8,900万円(同△15.5%)
- 四半期純利益:4億7,800万円(同△7.0%)
新規出店や旧ジョイフルサンの吸収合併効果に加え、価格戦略「ガチトク」やトップバリュの「価格凍結宣言」といった生活応援施策、猛暑対策商品の早期展開が奏功し、営業利益ベースでは2ケタ増益を達成しました。
また、大分県でスーパー等を展開するトキハインダストリーの完全子会社化など、九州内での事業基盤強化を進めています。
賃上げをはじめとする人的資本投資や、「iAEON」アプリの新規会員獲得・利用拡大を図るための販促施策強化などのコスト増により経常利益・純利益は前年同期を下回ったものの、通期連結業績予想(営業収益6,000億円、営業利益108億円、最終利益65億円)は据え置かれており、本業の稼ぐ力は堅調に維持されています。
イオンおよびイオン九州の株価動向と主要指標
こうした不測の事態を受けつつも、相場全体の「ディフェンシブ買い」の流れも支えとなり、29日の両社の株価はいずれも前日比プラスで取引を終えました。
一部の個人投資家からは「応援の意味も込めて買い支えたい」との声も聞かれていました。
両社の29日終値時点における株価および主要指標は以下の通りです。
イオン
- 株価(終値):1,439.5円
- 前日比:+1.37%
- 出来高:19,302,100株
- PER(会社予想):54.57倍
- PBR(実績ベース):3.3倍
- 配当利回り:1.04%
イオン九州
- 株価(終値):2,847円
- 前日比:+0.07%
- 出来高:95,200株
- PER(会社予想):14.97倍
- PBR(実績ベース):1.63倍
- 配当利回り:1.76%
イオン九州は出来高が急増
今回の取引において、イオン九州では出来高の急増が見られました。
29日の同社の出来高は9万5,200株を記録しています。
通常、同銘柄はそれほど流動性の高い銘柄とは言いづらい特徴があります。
実際、前日の28日は2万6,200株、27日に至っては9,600株にとどまっていました。
被害報道や多数の店舗での営業見合わせによる動向に関心が集まる一方、内需・ディフェンシブ銘柄への見直し買いが入ったことで、市場参加者の取引意欲が押し上げられた格好です。
今後も業績への影響精査や復旧のプロセスを含め、株式市場において慎重な見極めが続くとみられます。
【記者コメント】
熊本地震による店舗被害や爆発事故といった不測の事態を受け、両社株には警戒感が先行したものの、29日の株式市場では内需・ディフェンシブ銘柄への資金シフトが追い風となり、いずれもプラス圏で取引を終えました。
イオン九州の足元業績は本業で増益を保つなど底堅さを示している一方、通常は流動性の低い同社株の出来高が急増したことは、市場の関心の高さを物語っています。
短期的には営業停滞や復旧コストに伴う業績影響の精査が必要となりますが、中長期的には地域インフラとしての復旧プロセスと生活応援施策による需要獲得が今後の株価評価を左右しそうです。
引き続き、会社側からの詳細な情報開示が注目されます。
参考
- イオン株式会社 イオンモール熊本の爆発事故について
- イオン九州 令和8年熊本地震の影響に関するお知らせ
- イオン九州 熊本県で発生した地震の影響による店舗の営業状況について
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
