日立製作所<6501>、2026年3月期通期増収増益で翌期も+9.6%増益予想——株価は半年で小幅下落、決算翌日-5.8%が示すもの
testing/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
04:30
日立製作所<6501>、2026年3月期通期増収増益で翌期も+9.6%増益予想——株価は半年で小幅下落、決算翌日-5.8%が示すもの
testing/Shutterstock.com

この記事はここがポイント

  • 増収増益・翌期9.6%増益予想でも決算翌日株価は5.8%急落、市場期待との差分に反応
  • 2026年3月期は売上・営業利益が増加し、当期利益8,024億円で過去5期最高の水準
  • 有利子負債は約79%圧縮、1株配当50円で7期連続増配を継続する資本配分

増益期の株価が、増益率と同じ方向に動くとは限りません。連続増益の期待が既に評価に織り込まれている銘柄では、実績や予想の絶対水準よりも、市場の期待との差分が価格に反映される場面があります。日立製作所<6501>の直近半年は、そのプロセスの縮図と受け止められる動きを見せました。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

それでは早速見ていきましょう。

通期増収・営業利益2年で+58.7%——翌期予想も+9.6%増益で増益局面が継続

2026年3月期通期の決算内容(IFRS=国際財務報告基準、2026年4月27日開示)は、増収と増益の同居となりました。

売上収益は10兆5,868億円で前期比+8.2%、営業利益は1兆1,993億円、当期利益は8,024億円で前期比+30.3%と、いずれも力強い数値で着地しています。

営業利益について直接の前期比は短信上で明示されていないものの、2024年3月期通期の7,558億円との比較では2年間で+58.7%と、大きな伸長です。第3四半期時点で示していた通期予想(売上収益10兆5,000億円、営業利益1兆1,500億円、当期利益7,600億円)と比べても、実績は営業利益で104.3%、当期利益で105.6%と、予想を上回って着地した姿として読み取れます。

同時に開示された翌2027年3月期の会社予想は、売上収益11兆1,000億円で+4.8%、営業利益1兆3,150億円で+9.6%、当期利益8,500億円で+5.9%と、増益基調の継続を織り込んだ数値です。増収の勢いは鈍化する見通しですが、営業利益と当期利益はいずれも増加を続ける想定となっています。

過去5期の利益トレンドと業種内相対水準——ROEは業種中央値の1.7倍超

背景にあるのは、過去5期の利益トレンドとして眺めた場合の局面の重みではないでしょうか。

2022年3月期の当期利益5,835億円から、2023年3月期6,491億円、2024年3月期5,899億円、2025年3月期6,157億円と横ばい圏を経たのち、直近の2026年3月期には8,024億円まで押し上がりました。過去5期の中で最高水準に達しており、増益基調のトレンド転換が数値として確認できる期であったと読み取れます。

ROE(自己資本利益率)にも同じ位相が映っています。2022年3月期の14.8%から2023年3月期14.0%、2024年3月期11.1%、2025年3月期10.7%と下押しを経たのち、2026年3月期には12.9%まで戻しました。

業種内での相対水準を見ますと、電気機器179社(2026年3月期)のROE中央値は7.4%で、同社の12.9%は中央値のおよそ1.7倍にあたります。営業利益率も同社の11.3%が業種中央値6.7%を大きく上回っており、稼ぐ力の相対的な厚みが業種内でも目立つ位置にあります。

有利子負債は5期で約-79%圧縮、7期連続増配へ——資本配分の一貫性

見るべきは、こうした利益回復のフェーズが資本配分の切り替えを伴って進んできた点ではないでしょうか。

有利子負債(短期+長期の合計)は、2022年3月期末の2兆7,903億円から2023年3月期末2兆715億円、2024年3月期末9,925億円、2025年3月期末8,373億円、2026年3月期末5,832億円へと5期で約-79%まで圧縮されました。事業ポートフォリオ再編の中で財務規律を効かせてきた姿と解釈できます。

一方、株主還元姿勢は緩んでいません。分割調整後の1株配当は2022年3月期の25円から2023年3月期29円、2024年3月期36円、2025年3月期43円、2026年3月期50円と積み上がり、連続増配は7期に達しています。

純資産配当率(DOE)は3.5%と電気機器中央値の2.7%を上回っており、絶対的な還元厚みは業界内でも上位帯に位置しています。配当性向は2026年3月期で28.3%と業種中央値の35.7%を下回っており、利益水準の伸びに合わせて還元を積み上げる余地はまだ残されている構図です。

株価-1.3%の半年——V字の中で決算翌日-5.8%が示す期待の織り込み

株価の直近半年の推移は、これらの業績局面と評価水準の綱引きを反映していると考えられます。

2026年1月28日の起点5,087円から、2月9日には期間内の最高終値5,818円まで駆け上がる場面がありましたが、その後は下押しに転じ、3月31日には期間内の最安終値4,464円まで沈みました。ピーク比では-23.3%の下落です。

通期決算開示日の4月27日終値は5,356円と、開示直前の水準まで戻していた一方、翌4月28日終値は5,047円へと-5.8%の急落を見せました。翌期の営業利益+9.6%増益予想が示されたものの、株価は「発表イベント通過後の期待調整」に近い反応を見せた格好です。

そこから7月27日終値の5,023円まで小幅な動きが続き、半年トータルでは-1.3%とほぼ横ばい圏に着地しました。

過去5年で見た株主総利回り(TSR)は4.64倍で、同期間のTOPIX2.02倍を大きく上回っています。長期のパフォーマンスは強い一方、直近半年は評価水準そのものが試されるフェーズにあると読み取れます。

筆者コメント

連続増益局面にある銘柄でも、株価は業績の水準そのものよりも「次の期待との差分」に反応する場面があります。同社は過去5期で見ますと当期利益・ROEが下押しから反転し、有利子負債は約-79%まで圧縮され、7期連続の増配が続いています。稼ぐ力・財務健全性・株主還元のいずれの観点でも、業界内で相対的に厚い位置にあります。

その一方で、株価は決算開示翌日に-5.8%と急落し、半年トータルではほぼ横ばい圏に留まりました。長期のTSRが4.64倍と評価水準そのものが既に高い水準まで積み上がっていることが、翌期予想の増益率+9.6%との「差分」に敏感な反応を生んだ可能性が考えられます。

増益銘柄を眺めるときは、実績や予想の絶対値だけでなく、市場が既に織り込んでいる期待との差分と、資本配分・還元姿勢の一貫性を同時に見ていく着眼点が有効ではないでしょうか。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
Google で優先するソースとして追加
石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

関連タグ