本格的な夏の訪れとともに、夏のボーナスの支給時期となりました。
しかし、依然として続く物価高は家計への影響も大きく、将来の生活に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
筆者は先日、同世代の友人とランチをした際、「子育てが落ち着いてきたから働く時間を増やしたいけれど、扶養を外れるべきか迷っている」という話題になりました。
実は、この働き方の選択は、現在の家計だけでなく、将来受け取る年金額にも大きく関わってきます。
2026年度の年金額はプラス改定となったものの、物価上昇には及んでいません。
本記事では、最新データを基に女性の年金受給額の実態や、ライフコースによる違いを詳しく解説します。
女性の年金受給額、平均はいくら?国民年金5.7万円・厚生年金11.1万円のリアルな実態
厚生労働省年金局が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、現在年金を受給している方の状況は以下の通りです。
- 国民年金受給権者数(男女計):3345万4617人
- 厚生年金受給権者数(女性):540万5752人
時代の変化に伴い、現在のシニア世代よりも厚生年金の対象となる女性は今後増加すると見込まれますが、それぞれの平均的な受給額はどのくらいなのでしょうか。
国民年金の平均月額&受給分布
国民年金に加入している女性の平均年金月額は5万7582円です。
参考として、国民年金受給権者全体(男女計)の受給額分布も見ていきましょう。
【女性・国民年金】受給額の分布で見る個人差
【男女別グラフ】国民年金の受給額分布
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
1万円ごとの区分で確認すると、6万円以上7万円未満の層が最も多くなっています。
ただし、女性で通算の受給権期間が25年未満の方の場合、平均年金月額は2万374円まで下がります。加入期間が極端に短いと、老後の生活を支えるには不十分といえるでしょう。
満額受給できたとしても、国民年金だけで生活を維持するのは難しいため、別途貯蓄などで備えを準備しておくことが重要です。
厚生年金の平均月額&受給分布
厚生年金保険(第1号)の女性平均年金月額は11万1413円です。
平均月額を比較すると、国民年金のおよそ2倍の年金収入が期待できます。
しかし、厚生年金の受給額は現役時代の収入と加入期間に基づいて計算されるため、個人差が非常に大きいのが特徴です。
【女性・厚生年金】受給額の分布で見る個人差
【男女別グラフ】厚生年金の受給額分布
- ~1万円未満:1万2953人
- 1万円以上~2万円未満:3880人
- 2万円以上~3万円未満:2万9993人
- 3万円以上~4万円未満:6万3025人
- 4万円以上~5万円未満:6万1945人
- 5万円以上~6万円未満:6万9313人
- 6万円以上~7万円未満:18万892人
- 7万円以上~8万円未満:34万8764人
- 8万円以上~9万円未満:54万1901人
- 9万円以上~10万円未満:75万1358人
- 10万円以上~11万円未満:81万3990人
- 11万円以上~12万円未満:69万5128人
- 12万円以上~13万円未満:52万2466人
- 13万円以上~14万円未満:37万4169人
- 14万円以上~15万円未満:27万1489人
- 15万円以上~16万円未満:20万322人
- 16万円以上~17万円未満:14万7604人
- 17万円以上~18万円未満:10万5489人
- 18万円以上~19万円未満:7万1561人
- 19万円以上~20万円未満:4万8617人
- 20万円以上~21万円未満:3万3387人
- 21万円以上~22万円未満:2万1931人
- 22万円以上~23万円未満:1万4116人
- 23万円以上~24万円未満:8813人
- 24万円以上~25万円未満:5491人
- 25万円以上~26万円未満:3233人
- 26万円以上~27万円未満:1811人
- 27万円以上~28万円未満:927人
- 28万円以上~29万円未満:479人
- 29万円以上~30万円未満:223人
- 30万円以上~:482人
実際の受給額の個人差は大きいため、「厚生年金だから安心」と考えるのではなく、ご自身の収入で将来いくら受け取れそうかシミュレーションした上で、資金計画を立てることが大切です。
加入期間が短くなったり、パート勤務などで収入が減少したりすると将来の受給額に影響します。
働き方を変える際には、将来のことも含めて検討するのがよいでしょう。
働き方で年金額は変わる?専業主婦・会社員・自営業、3つのモデルケースで比較
厚生労働省が公表している「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」をもとに、より現実に近い女性の働き方別の年金受給額の目安を見ていきましょう。
ご自身の経歴と近いモデルケースを参考にしてみてください。
女性のライフコース別・年金月額の目安
ライフコース別《65歳以降の年金めやす》5つのパターン
①キャリアを継続した女性(厚生年金中心)の場合
- 想定: 平均年収約427万円で33年間就業
- 年金月額の目安: 13万4640円
②自営業で働いた女性(国民年金中心)の場合
- 想定: 厚生年金加入期間約6.5年
- 年金月額の目安: 6万1771円
③専業主婦の期間が長かった女性(第3号被保険者中心)の場合
- 想定:厚生年金加入期間約6.7年
- 年金月額の目安: 7万8249円
男性のモデルケースと比較してわかること
現役時代の働き方によって、将来の年金額に数万円単位の差が生まれることがわかります。
さらに、同資料に示された男性のモデルケースと比較すると、男女間の受給額の違いも明確になります。
男性で「会社員経験が長い(厚生年金が中心)」ケースでは、平均収入50万9000円(年収約610万円)で39.8年就業したパターンが想定されており、年金月額の目安は17万6793円と試算されています。
キャリアを重ねた女性のモデル(13万4640円)と比べると、月額で約4万2000円の差があります。これは、就業期間の長さ(男性約40年、女性33年)や現役時代の平均年収の違いが影響していると考えられます。
一方で、「自営業・フリーランス(国民年金が中心)」の男性の目安は6万3513円であり、同じく国民年金が中心の女性(6万1771円)とは大きな差は見られません。
国民年金は加入期間に応じて計算されるため男女差が生じにくいですが、報酬比例の厚生年金では、就業期間や収入の差が老後の受給額に直接的に反映されます。
女性は出産や育児といったライフイベントにより就業期間が中断されたり、働き方を調整せざるを得ない時期が男性よりも生じやすいです。
これが、男女の厚生年金受給額に差が生まれる背景の一つと言えるでしょう。
「女性の働き方」と「老齢年金」はどう関係する?日本の年金制度の仕組み
日本の年金制度は、国内に住む20歳以上の方すべてに加入が義務付けられていますが、働き方によって加入する年金制度が異なります。
国民年金の被保険者は、働き方などに応じて「第1号被保険者」から「第3号被保険者」までの3種類に区分されます。
【図解】2階建ての年金制度
多くの場合、20歳以降の学生時代は第1号被保険者として国民年金に加入し、その後会社員や公務員などとして就職すると厚生年金の加入対象となります。
結婚や出産、育児、親の介護といったライフステージの変化に直面した際、働き方を調整するのは依然として女性が多いのが現状です。
その結果、女性が専業主婦になったり、扶養内でパート勤務をしたりする場合、国民年金の対象となります。厚生年金の対象となる働き方を続けた場合と比べて、老後の年金にどれほどの差が生じるのでしょうか。
豊かな老後を迎えるために。2028年から変わる「遺族厚生年金」にも要注意
現在のシニア世代のデータやモデルケースを見て、「自分が思っていたよりも少ない」と感じた方もいるかもしれません。
それに加えて、今後の女性の資金計画に大きな影響を与えるのが「遺族厚生年金の見直し」です。
女性の就業率の向上などを背景に、2028年4月から遺族厚生年金の男女差を解消する制度改正が段階的に実施される予定です。
遺族厚生年金の見直しについて
現在、こどものいない女性が夫と死別した場合、30歳未満であれば5年間の有期給付ですが、30歳以上であれば一生涯(無期給付)遺族厚生年金を受け取ることができます。
しかし見直し後は、男女共通で「60歳未満での死別は原則5年間の有期給付」へと再編されます(配慮が必要な場合は5年目以降も給付継続)。
つまり、「夫に万が一のことがあっても、自分の年齢に関わらず遺族厚生年金が一生涯もらえる」というこれまでの前提が変わる世代が出てくるのです。
※ただし、以下に該当する方は今回の改正の対象外となり、2028年4月以降も現行の仕組みが維持されます。
- 60歳以上で死別された方
- こども(18歳になった年度末まで、または障害の状態にある場合は20歳未満)がいる方
- 改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方
- 2028年度に40歳以上になる女性
まとめ:ライフプランの変化に合わせた老後資金の準備を
2026年度の公的年金はプラス改定となったものの、昨年の物価上昇には及ばず、実質的な目減りも懸念されています。
公的年金だけでゆとりある生活レベルを維持するのは簡単ではありません。
さらに、上述した遺族年金の有期給付化など、制度は時代に合わせて変化しています。
これからの時代は「配偶者の年金」に頼るだけでなく、ご自身の年金をいかに手厚くしていくかがより大切になります。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、現在の加入記録やご自身の将来の受給見込額を正確に把握することから始めましょう。
その上で、長く働き続けられる働き方を模索したり、預貯金や投資を活用した計画的な資産形成を今から進めていくことで、将来の安心につなげていけると良いですね。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
