この記事はここがポイント
- 厚生年金月15万円以上の受給割合は全体49.8%、男性68.8%、女性12.3%と大きな男女差。
- 高齢者世帯の52.1%が家計に苦しさを感じ、ゆとりある世帯は6.2%のみという現状。
- 2026年10月、年収106万円の壁撤廃、厚生年金加入の企業要件も段階的に拡大。
厚生年金「月15万円超の割合」は全体で約半数も、男性と女性で割合に差。ゆとりある高齢者は少数に
老後、年金を「月15万円くらいはもらいたい」と考える方もいるでしょう。しかし、年金を15万円以上もらうことは簡単ではありません。現役時代の働き方による年金への加入状況が、老後の年金受給額に影響しますから、実は年金制度には現役世代のうちから興味を持ち、しっかりと調べることが大切なのです。
本記事では、厚生年金に視点を当てt受給額の実態や高齢者の生活意識を確認した後、2026年10月に撤廃予定の「年収106万円の壁」について元社会保障担当の記者である筆者が解説していきます。
公的年金の基本。厚生年金は個人差が大きい
日本の公的年金は「2階建て」にたとえられます。
厚生年金と国民年金の仕組み
1階は20歳以上のすべての人が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」、2階は会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。
一律の保険料を払う国民年金と違い、厚生年金は収入に応じて払う保険料で老後の受給額が決まります。そのため、厚生年金にも加入しているか、加入していた期間はどれくらいか、納めていた保険料はどれくらいかなどにより、非常に個人差が大きいのが「厚生年金」です。
厚生年金「月15万円超の割合」は全体で約半数も、男性と女性で割合に差があった
厚生年金の平均月額は、全体で15万289円です(令和6年度、基礎年金を含む。男性16万9967円/女性11万1413円)。では、平均額に近い「月15万円前後」の人はどのくらいいるのでしょうか。
厚生年金月額
受給額ごとの割合をみると、月15万円以上を受け取っている人は49.8%と、ほぼ半数です。そのうち、平均に近い14万円以上16万円未満の層は、あわせておよそ11.8%にあたります。
また男女別にみると、月額15万円以上の年金を受給している割合は、男性で68.8%に上るのに対し、女性ではわずか12.3%にとどまっています。どれくらいの期間厚生年金に加入し、収入はどれくらいであったかが、老後の年金額に響くとわかります。
平均という一点だけでなく、受給額に幅があることも知っておきたいところです。
物価高のなか、ゆとりある高齢者は少数派に
受け取る額だけでなく、当事者の実感もみておきましょう。2026年7月15日に公表された厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の生活意識は次のとおりです。
高齢者の生活意識
- 大変苦しい:21.0%
- やや苦しい:31.1%
- 普通:41.7%
- ややゆとりがある:5.4%
- 大変ゆとりがある:0.8%
「大変苦しい」「やや苦しい」を合わせると52.1%と、半数を超える世帯が家計に厳しさを感じています。一方でゆとりがあるのは6.2%だけ。「ゆとりある老後生活を送れる高齢者」は少ないもの。
物価高が続くなか、年金を中心とした暮らしの余裕はないと感じる人が多いのが実情です。
2026年10月には年収106万円の壁撤廃予定へ、企業要件は段階的に拡大に
厚生年金に加入すること、そして厚生年金に加入している場合には、上限はあるものの年収を増やすことで老後の受給額を増やすことができます。すぐには難しくても人生100年時代においては、少し長い目で見て働き方を検討するのも一つでしょう。
2026年10月から、パートなど短時間で働く人の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入をめぐるルールが変わります。ポイントは大きく2つです。
「年収106万円の壁」の撤廃予定へ
1つ目は、いわゆる「年収106万円の壁」の撤廃です。これまで短時間労働者が社会保険に加入する条件のひとつに、「月額8万8000円(およそ年収106万円)以上」という賃金の要件がありました。この要件が、2026年10月から撤廃される予定です。
加入対象となる事業所は段階的に広がる
2つ目は、加入対象となる事業所が段階的に広がっていくことです。
短時間労働者が社会保険に加入する対象は、現在は従業員51人以上の事業所ですが、2027年10月からは「36〜50人」の事業所が新たに加わります。その後も、2029年10月に「21〜35人」、2032年10月に「11〜20人」、2035年10月に「10人以下」と、企業規模の要件が段階的に引き下げられていく予定です。
これらの変更により、これまで加入対象ではなかった人も、厚生年金に入りやすくなります。厚生年金に加入すると、目先の手取りは保険料の分だけ減りますが、将来受け取る年金は増えますし、いざという時の保障も手厚くはなります。働き方や保障、将来の年金をあわせて考える機会になりそうです。
元厚生労働省担当記者が伝えたい、今すべきこと
厚生労働省を担当する記者として制度を追ってきた経験からお伝えしたいのは、年金は「知って、動く」ことで向き合い方が変わる、ということです。まずはねんきんネットで自分の加入記録と見込み額を確認し、平均や噂ではなく、自分の数字を出発点にしてください。そのうえで、これから広がる社会保険の適用拡大といった制度の変化にも目を向けておくこと。とくに働き方によっては、厚生年金に加入できる範囲が広がり、将来の年金額に効いてきます。制度は複雑ですが、変わり目こそ情報を取りにいく好機です。厚生労働省や日本年金機構の一次情報で確かめながら、ご自身の家計に落とし込んでいくことが、いちばん確かな備えになるのではないでしょうか。
参考資料
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。

社会保障を専門とする新聞記者として、厚生労働省などを長く取材してきました。取材の現場で痛感したのは、公的年金の制度があまりに複雑で、その「わかりにくさ」が生活者の漠然とした不安を大きくしている、ということです。制度は法改正や毎年の金額改定でさらに難しくなり、仕組みを知らないままでいると、受けられるはずの恩恵を逃したり、将来の家計設計で見えない不利益を被ったりしかねません。だからこそ、複雑な数字や制度を、いちど客観的なデータに立ち返って確かめておくことが大切です。