この記事はここがポイント
- 8月の権利確定で株主優待を受けられるのはイオンのみ、セブン&アイHDは中間配当
- イオンとセブン&アイHDは株式分割により投資しやすい価格帯へ
- イオンは売上高伸長と黒字転換が特徴、セブン&アイHDは累進配当と高い利益率・財務の安定感が強み
ハイテク・半導体関連株を中心とした価格変動に揺さぶられ、東京株式市場では日々の相場変動の激しさが際立っています。
目まぐるしく変化する展開や高リスクな値動きに対し、精神的なストレスや負担を感じている個人投資家も多いのではないでしょうか。
刻々と変わる株価モニターに張り付いて一喜一憂する手法から距離を置き、「生活の中で配当金や株主優待といった具体的なメリットを実感できる、安定感のある銘柄を選びたい」というニーズが高まっています。
資金が半導体株に傾斜する一方で、株価の上昇が比較的緩やかだった「ディフェンシブ銘柄」が、中長期で資産を育てる選択肢として再びスポットライトを浴びています。
その代表格といえるのが、日々の暮らしに欠かせない国内小売の2大グループ、「イオン<8267>」と「セブン&アイ・ホールディングス<3382>」です。
本稿では、2026年7月時点の最新データや公表資料をもとに、両企業の事業基盤や株主還元策の特性を掘り下げて比較検証します。
どちらも1株→3株の株式分割により「投資しやすい価格帯」へ
はじめに、両企業の株式を取得するために必要な初期投資額(最低購入金額)を確認します。
2024~2025年に、両社とも1株を3株へ分割する株式分割を行っており、個人投資家が参加しやすい環境が整えられている点が共通の強みです。
主要な半導体セクターでは最低売買単位(100株)の購入に数百万円単位のまとまった資金を要するケースも目立ちますが、イオンが10万円台、セブン&アイHDは20万円台という比較的無理のない資金からエントリーできます。
一度に巨額の資金を投じるリスクを回避しつつ、普段の買い物感覚の延長でスタートしやすい投資条件がそろっています。
- イオン:2025年9月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施
- セブン&アイHD:2024年3月1日付で同1株につき3株の株式分割を実施
2026年7月24日時点の株価と最低投資金額
- イオン 株価終値:1,339円(前日比+6円/+0.45%)
- セブン&アイHD 株価終値:2,146円(前日比+66円/+3.17%)
主要な半導体関連株が軒並み大幅下落するなかで、特にセブン&アイHDは3%超の上昇となるなどディフェンシブ株の力強さを見せました
なお、配当や株主優待の権利を取得するための直近のスケジュールは次の通りです。
- 権利付き最終日(この日までに買い付け・保有が必要):2026年8月27日(木)
- 権利落ち日(この日以降に売却しても権利は有効):2026年8月28日(金)
- 権利確定日(株主名簿への登録が確定する日):2026年8月31日(月)
8月の権利確定で優待がもらえるのは「イオン」だけ!セブン&アイHDは「中間配当」のみ
ここで大きな注意点があります。
8月27日の権利付き最終日までに株を購入して、株主優待の権利が得られるのは「イオン」のみです。
セブン&アイHDの株主優待の権利確定月は「2月」のため、注意が必要です。
ただ、いずれも8月の権利確定では「中間配当」がもらえます。
投資を検討するにあたっては①「優待が目的」②「配当が目的」③「優待と配当、両取りが目的」と、①~③のどれがご自身の投資スタンスにマッチしているのか、確認してみてください。
続いて、それぞれの企業の具体的な魅力を順に追っていきましょう。
【イオンの魅力】キャッシュバック+シネマ&ラウンジを100株から満喫する最強の生活防衛
日常の買い物や生活の満足度を堅実に防衛したいと考えるなら、イオンの充実度は圧倒的です。
同社の最大の魅力は株主優待制度の充実ぶりにあり、単元株(100株)保有の段階から実用的なサービスを存分に活用できます。
お買い物時の割引・優待料金&長期特典
株主に進呈される「オーナーズカード」を活用することで、普段のショッピングで特別優待や割引が適用されるほか、所有株式数に応じたキャッシュバック(返金)を得られます。
100株保持している場合、キャッシュバック率は1%です。
加えて、同一の株主番号で3年を超えて継続保有し、なおかつ1,500株以上を所有する株主向けに「長期株主特別優待制度」も用意されており、腰を据えて長期で投資を続ける大きなメリットとなります。
株主の定番!イオンシネマ&イオンラウンジ特典
特に好評を集めているのが、オーナーズカードの提示により受けられる暮らしに密着した以下の優待です。
- イオンシネマ:カード提示により割引鑑賞料金(大人:1,000円)で映画を鑑賞できるだけでなく、ポップコーンまたはソフトドリンクの引換券がもらえます。このカードは株主本人だけでなく、生計を同一にする配偶者、親、18歳以上の子どもといったご家族も利用可能です
- イオンラウンジ:買い物の合間に一息つけるラウンジ機能は、所有株数によって月ごとの利用上限枠(1,500株以上保有の場合で最大月16回まで利用可能)が設定されています。100株保有時は月に4回まで利用できます
「お客さま感謝デー」は5%割引と併用可能!
毎月20日・30日に開催されるイオンの定番イベント「お客さま感謝デー」。
この日にオーナーズカードを提示して買い物をすると、「お客さま感謝デーの5%割引」を受けられ、さらに「保有株数に応じたキャッシュバック」もダブルで適用されます。
割引と返金の「二重取り」ができるため、まとめ買いのチャンスです。
たとえば同じ小売大手の良品計画(無印良品)の株主優待では「無印良品週間」など、ほかの割引サービスとの併用はできません。
他社では「どちらか有利な方ひとつだけ」となるケースが多いなか、イベント割引と優待特典をしっかり「二重取り」できるイオンの制度は、非常に太っ腹で強力なメリットと言えます。
堅い配当実績と2026年5月発表の新中期経営計画
株主還元施策においては、ブレのない実績と指針を維持しています。
2026年2月期の年間配当金は、株式分割前の計算で41円(中間20円、分割考慮後の期末配当は7円)と、計画通りに実施されました。
なお、今期(2027年2月期)の通期予想では、分割考慮後で年間15円(中間7.5円・期末7.5円、いずれも0.5円の記念配当含む)を計画しています。
直近ではドラッグストア大手のウエルシアに加えてツルハホールディングスを連結子会社化し、ヘルス&ウエルネス分野のグローバルリーダーとしての地位を盤石にしました。
また、ネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」のエリア拡大など、実店舗とデジタルを融合させた「イオン生活圏」の創造をスピーディーに推進しています。
2026年5月11日には、2026年度から2030年度までの5カ年を対象とした「グループ中期経営計画」を策定。
これまでに強化した事業基盤を活かし、環境変化を確実な収益・利益へ結びつける抜本的な構造変革へ舵を切っています。
【セブン&アイHDの魅力】ヨーカ堂を分離し「世界のコンビニ株」へ大脱皮&累進配当
「セブンは身近なスーパーや銀行の会社」というイメージをお持ちなら、その認識は過去のものです。
同社は今、驚くべきスピードで「世界基準の成長株」へと生まれ変わっています。
イトーヨーカ堂などを切り離し、CVS特化型企業へ
セブン&アイHDは大胆な構造改革を断行しました。
2025年6月24日付でセブン銀行とその子会社を、さらに2025年9月1日付でイトーヨーカ堂やヨークベニマルなどを連結範囲から一挙に除外しました。
おなじみのスーパー事業や金融事業をあえて分離し、「コンビニエンスストア(CVS)事業」へ100%注力することで、グローバルでの成長を加速させる強固な体制を整えたのです。
2026年4月23日に開催された「IRDay2026Spring」でも、看板商品である米飯の差別化や「Live-Meal(できたて商品)」「7NOW(デリバリー)」の拡大といった、シャープな変革の道筋を提示しています。
還元スタンスは「累進配当」を明記!さらに力強い増配へ
投資家にとって最も心強いのが、持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」の実施を明確にコミットしている点です。
実際の配当計画も非常に力強く、2026年2月期の年間50.0円(中間25.0円・期末25.0円)に対し、翌2027年2月期(2026年度)は年間60.0円(中間30.0円・期末30.0円)へと増配する会社予想(計画)を公表しています。
株主優待は「共通商品券」
株主優待は、イトーヨーカドーやセブン‐イレブンなどの店舗で使える「共通商品券」です。
持株数に応じて、2,000円分~3,000円分がもらえます。
3年以上の保有では、さらに500円分が上乗せされます。
優待の権利確定は「2月」
株主優待の権利確定について、イオンが2月と8月の年2回であるのに対し、セブン&アイHDは2月の年1回です。
次回は2027年2月となり、具体的なスケジュールは以下の通りです。
- 権利付き最終日(この日までに買い付け・保有が必要):2027年2月24日(水)
- 権利落ち日(この日以降に売却しても権利は有効):2027年2月25日(木)
- 権利確定日(株主名簿への登録が確定する日):2027年2月26日(金)
財務指標の比較:最新決算データ
次に両社の業績と財務の健全性を比較してみましょう。
イオンとセブン&アイHDの最新決算
イオン vs セブン&アイHD
【売上高】
- イオン:2兆9,419億8,100万円(前年同期比+14.6%)
- セブン&アイHD:2兆3,788億1,900万円(同 ▲14.3%)
売上高の伸長率においては、この四半期はイオンが大きく引き離しています。
【営業利益(本業の儲け)】
- イオン:752億300万円(同+33.6%)
- セブン&アイHD:1,050億3,900万円(同+61.4%)
本業で稼ぐ力の伸び率は、この四半期もセブン&アイが優勢です。
【経常利益】
イオン:635億8,200万円(同+32.3%)
セブン&アイHD:1,007億3,500万円(同+89.1%)
【純利益】
イオン:138億900万円(前年同期は▲65億7,000万円の赤字だったため、黒字転換)
セブン&アイHD:606億円(同+23.6%)
【1株当たり四半期純利益(EPS)】
イオン:4.99円
セブン&アイHD:26.21円
1株あたりの利益水準でも、セブン&アイが引き続き大きく上回っています。
【自己資本比率(財務の安全性)】
イオン:7.8%(金融を除くと13.8%)
セブン&アイHD:38.6%
財務の健全性・安定感は、この四半期もセブン&アイHDに軍配が上がります。
【BPS(1株当たり純資産)】
イオン:436.64円
セブン&アイHD:1,595.65円
結論
- 規模のイオン:この四半期の売上高はイオンが上回り、前年同期の赤字から黒字転換した点も評価できる材料です
- 利益率・財務のセブン&アイHD:営業利益・経常利益の伸び率、EPS、自己資本比率のいずれもセブン&アイHDが上回っており、効率よく稼ぐ力と財務の安定感は引き続き際立っています
どちらを選ぶかのポイントは「生活スタイル」次第
ここまで日本を代表する小売りの二大巨頭を比較してみました。
イオンが向いているタイプ
日々の生活費をダイレクトに浮かせたい実利派の方や、過去最高業績を叩き出す安定感を重視したい方に適しています。
また、なんと言っても普段の生活圏(イオン、マックスバリュ、ウエルシアやツルハなどのドラッグストア)で頻繁にお買い物をする方はイオンが選択肢の候補に挙がるでしょう。
セブン&アイ・ホールディングスが向いているタイプ
「優待」よりも、持続的な増配を目指す「累進配当」の方針を魅力に感じる「配当派」に向いています。
加えて世界展開するコンビニ事業の成長性に期待したいという向きや、とにかく財務の健全性・安定感が第一という方はセブン&アイに目を向けてみるのも一案です。
どちらの銘柄も株式分割によってグッと身近になりました。
ただし、株式投資には株価下落などのリスクも伴います。
優待の魅力だけでなく自己責任の原則をしっかり頭に置いたうえで、ご自身のライフスタイルに合った銘柄選別を行ってください。
参考
- イオン株式会社 2027年2月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
- イオン株式会社「その他株主優待制度等の決定に関するお知らせ」(2026年2月16日発表)
- イオン株式会社「グループ中期経営計画(2026年~2030年度)の策定について」(2026年5月11日発表)
- イオン株式会社 株主優待制度
- イオンエンターテイメント株式会社「オーナーズカードご優待特典改定に関するご案内」
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 2027年2月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス「IR Day 2026 Spring」プレゼンテーション資料(2026年4月23日開催)
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス セブン&アイ・ホールディングスの株主になりませんか
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
