この記事はここがポイント
- 2026年度年金は、国民年金月額7万608円、厚生年金(夫婦標準)23万7279円に増額。
- 令和8年度税制改正で、所得税天引き基準が65歳以上214万円未満に引き上げられ、12月に精算還付。
- 扶養親族等申告書提出対象拡大、扶養控除所得要件62万円緩和が年金手取り額に影響。
7月も中旬にさしかかり、夏の暑さが本格的になってきました。この時期、暮らしやお金のことを見直す方も多いのではないでしょうか。
ファイナンシャルアドバイザーとして多くの方の相談に乗る中で、年金制度の変更、特に手取り額への影響について不安を感じている方が少なくないと感じます。
2026年度は国民年金・厚生年金ともに増額改定となり、6月から新しい金額での支給が始まっています。しかし、同時に税制改正も行われたため、最終的な手取り額の計算は少し複雑になりました。
この記事では、公的機関の資料を基に、2026年度の年金改定のポイントと、税金のルール変更について分かりやすく解説します。
【2026年度の年金】夫婦2人分の標準モデルは月額23.7万円に増額
2026年度の公的年金額は、前年度と比較して国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%それぞれ増額されました。この新しい金額は、2026年6月に支給された4月・5月分から適用されています。
- 国民年金(老齢基礎年金の満額1人分):月額7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分の標準モデル):月額23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額)は月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※厚生年金は、平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)の給付水準を指します。
実際に老後に受け取れる年金額は、現役時代の加入状況によって一人ひとり異なります。ここからは、60歳から90歳以上までの受給権者を対象とした、厚生年金と国民年金の受給額分布を確認していきましょう。
厚生年金の受給額はいくら?男女別の平均月額と分布をチェック
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
男女別の平均額を見ると、男性が16万9967円、女性が11万1413円となっており、約6万円の差があることが分かります。
国民年金の平均受給額は?男女別の月額と受給者層の傾向
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の平均月額は全体で5万円台となっています。男性は6万円台、女性は5万円台で、4000円程度の男女差が見られます。受給額の分布を見ると「6万円以上~7万円未満」の層が最も多く、多くの方が満額に近い金額を受給しているようです。
【年金にかかる税金はどう変わる?】令和8年度税制改正のポイントと年末調整の仕組み
令和8年度の税制改正によって、公的年金から天引きされる税金の計算ルールが見直されました。基礎控除額が引き上げられた結果、税負担が軽くなる年金受給者が増えることが予想されます。ここでは、特に重要な3つの変更点を確認します。
ポイント1:税金が天引きされない年金基準額の引き上げ
令和8年分の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎的控除額の表
所得税が源泉徴収(天引き)されない年金額の基準が変更され、65歳以上の方は「214万円未満」、65歳未満の方は「164万円未満」にそれぞれ引き上げられました。
ポイント2:払いすぎた税金が12月に戻る?年金での年末調整の仕組み
令和8年度分の所得税の源泉徴収と還付イメージ
令和8年分の年金については、11月支給分までは改正前のルールで税金が天引きされます。そして12月の支給時に、新しいルールに基づいて1年間の税額が再計算されます。もし税金を払いすぎていた場合は、原則として12月支給の年金額に上乗せする形で還付されます。ただし、この還付は実際に税金を納めすぎた方のみが対象です。
ポイント3:「扶養親族等申告書」の提出対象者が拡大、住民税への影響は
扶養親族等申告書の提出対象の範囲拡大イメージ(65歳以上の方の場合)
所得税の天引き対象ではなくても、個人住民税が課税される可能性のある年金を受給している方へ、新たに「扶養親族等申告書」が送付されるようになります。例えば、65歳以上で年金額が148万円以上の方が該当します。
また、扶養控除の対象となる家族の所得要件が62万円以下に緩和されました。これにより新たに控除の対象となる場合は、日本年金機構から届く「扶養親族等申告書」に必要事項を記入し、期限内に提出することが大切です。この手続きを済ませれば、確定申告をしなくても年金から天引きされる税額を適正に抑えることができます(ただし、他に一定の所得がある場合などは除きます)。
これらの変更内容を把握し、ご自身の状況に応じて必要な手続きや還付の有無を確認することをおすすめします。
【年金制度】変更点を理解し、将来の生活設計に活かそう
この記事では、2026年度の最新の年金額データと、税制改正に伴う変更点について解説しました。公的年金の額面は増額されましたが、手取り額を正確に知るためには、12月に行われる精算と還付の仕組みを理解しておくことが重要です。また、扶養親族に関する所得要件が緩和されたことで、新たに控除を受けられる方が増える可能性があります。
法改正のタイミングだからこそ、意識していただきたいポイントを3つお伝えします。
- 「額面」ではなく「手取り(振込額)」をベースに生活設計をする
- 自宅に届く「扶養親族等申告書」は必ず開封して提出する
- 繰下げ受給などの選択肢も含め、現役時代から「受給イメージ」を持っておく
これからの生活設計を考える上で、まずはご自身の年金加入記録や将来の受給見込額を確認してみてはいかがでしょうか。早めに現状を把握し、必要な手続きを進めることが、安心して暮らすための備えにつながります。
2026年度の年金改定は額面の増額だけでなく、税制改正による天引きルールの見直しが手取り額に複雑に影響する点が重要なポイントです。ご自身の手取りがどう変わるのか、12月の精算時期や届く申告書の種類を正しく把握し、受給漏れや手続き漏れのないよう準備を進めましょう。
参考資料
ほけんの窓口グループ出身。FP2級、生命・損害保険募集人資格。多数のライフプランニングや保険EC事業立ち上げを経験。現在は最適な保険の選び方を伝えるべく、コンテンツ制作や専門記事の執筆業務を行う。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
