この記事はここがポイント
- 65歳以上無職世帯、2025年調査で夫婦月4.2万円、単身月2.9万円不足
- 厚生年金15万円、国民年金5.9万円も、加入期間で受給額に大きな差
- 公的年金は2階建て構造、年金収入のみ世帯は43.4%
7月10日に国土交通省が公表した「令和8年版 土地白書」によると、介護・医療と連携して高齢者を支援する「サービス付き高齢者向け住宅」の供給が進み、首都圏での登録状況は令和6年度に2,301棟(84,322戸)にのぼるなど増加傾向にあることが示されました。
充実した老後の生活基盤づくりに注目が集まる中、私自身も給与やボーナスの明細を見たとき、成果が数字で表れてモチベーションが上がる一方、引かれている税金や社会保険料の高さには毎回驚かされており、手取り額からいかに将来へ備えるかを常に考えています。
現役世代が資金作りに奮闘する一方で、「自分の年金はいくらになるのか」「他の人はどのくらい受け取っているのだろう」といった疑問は、多くの方が抱くものです。
また、年金だけで生活を維持できるのかという不安を感じることもあるかもしれません。かつて銀行員として多岐にわたる金融商品を扱い、現在はLIMO編集部の記者として活動する筆者の立場からも、長期的なマネープランの重要性を感じています。
この記事では、日本の公的年金制度の基本構造から、厚生年金と国民年金の平均受給額、さらには年金で暮らす高齢者世帯の実際の家計状況まで、最新の公的データに基づいて詳しく解説します。ご自身の将来を考える上で、ぜひ参考にしてください。
日本の公的年金制度、その「2階建て構造」とは?
公的年金制度が「2階建て構造」と呼ばれていることを、耳にしたことがある方もいるかもしれません。
この構造は、日本の年金制度が1階部分の「国民年金(基礎年金)」と、その上に乗る2階部分の「厚生年金」で構成されていることに由来します。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金(基礎年金)の概要:1階部分を解説
- 加入対象者:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
- 年金保険料:国民年金の保険料は原則として一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度の月額は1万7920円です)
- 受給額:保険料を40年間すべて納付した場合、満額を受け取ることが可能です(2026年度の月額は7万608円です)
国民年金の加入者は第1号から第3号被保険者まで区分され、このうち第2号被保険者が次に説明する厚生年金に加入します。厚生年金の保険料を納めている方は、国民年金保険料を別途支払う必要はありません。
また、第3号被保険者についても、保険料を個別に納付する義務はありません。
厚生年金の概要:2階部分を解説
- 加入対象者:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します
- 年金保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、計算の基になる収入には上限が設けられています(※2)
- 受給額:加入していた期間や納付した保険料の額によって個人差が生じます
※1 特定事業所:1年のうち6カ月以上、適用事業所における厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く、共済組合員を含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて算出されます。
2026年度版!公的年金の支給日カレンダー
公的年金は、基本的に偶数月の15日に支給されるのが原則です。もし15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の平日に前倒しされます。年金は後払いが基本で、直前の2カ月分がまとめて支給される仕組みになっています。
2026年度の年金支給日と、それぞれの支給対象月を確認してみましょう。
2026年度の年金支給日カレンダー
2026年度の年金支給日と支給対象月一覧
- 2026年4月15日:2026年2月・3月分
- 2026年6月15日:2026年4月・5月分
- 2026年8月14日:2026年6月・7月分
- 2026年10月15日:2026年8月・9月分
- 2026年12月15日:2026年10月・11月分
- 2027年2月15日:2026年12月・2027年1月分
例を挙げると、2026年10月15日の支給日には、2026年8月と9月の2カ月分がまとめて支給されることになります。
給与を毎月1回受け取っていた現役時代とは、お金の管理サイクルが変わる点に注意が必要です。
【平均はいくら?】厚生年金・国民年金の受給額と個人差
老後の生活を支える重要な収入源となる公的年金。できるだけ多く受け取りたいと考えるのは自然なことです。実際にどれくらい支給されるのか、気になる方も多いでしょう。
年金の受給額は、これまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差がある点を理解しておくことが大切です。
この点を踏まえ、どの程度の個人差があるのかを具体的に見ていきましょう。
厚生年金の平均受給月額:男女別の差と分布
厚生年金の平均額(全年齢)
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
厚生年金受給額の分布状況(1万円ごと)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
男女別に見ると、男性の平均が16万9967円、女性が11万1413円となっており、約6万円の差が見られます。
上のグラフが示す受給額の分布からもわかるように、「月額1万円未満から30万円以上」まで非常に幅広く分布しているため、個々の状況を確認することが重要といえるでしょう。
国民年金の平均受給月額:男女別の差と分布
国民年金の平均額(全年齢)
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金受給額の分布状況(1万円ごと)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は、男女全体および男女別でも5万円台となっています。上のグラフが示すように、受給額は「月額1万円未満から7万円以上」の範囲で分布していることがわかります。
国民年金は満額が定められているため、厚生年金ほど大きなばらつきは見られません。
最も多いボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」であり、多くの人が満額に近い金額を受け取れていることも読み取れます。
65歳以上・無職夫婦世帯のリアルな家計収支
この章では、65歳以上で仕事をしていない夫婦世帯と単身世帯の1カ月あたりの家計収支について見ていきます。
ここでは、総務省が公表している「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」を参考にします。
65歳以上の生活費(夫婦世帯)
収入の内訳:65歳以上の無職夫婦世帯
- 実収入:25万4395円
- うち社会保障給付:22万8614円(主に年金)
支出の内訳:65歳以上の無職夫婦世帯
- 実支出:29万6829円
- うち消費支出:26万3979円
消費支出とは、一般的にいわれる生活費のことです。その内訳は以下の通りです。
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
また、税金や社会保険料などの非消費支出は3万2850円で、その内訳は次のようになっています。
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
このモデルケースの夫婦世帯では、1カ月の実収入25万4395円に対して支出の合計が29万6829円となり、結果として毎月4万2434円が不足している状況です。
65歳以上・無職単身世帯のリアルな家計収支
次に、単身世帯の家計収支についても同様に確認していきましょう。
65歳以上の生活費(単身世帯)
収入の内訳:65歳以上の無職単身世帯
- 実収入:13万1456円
- うち社会保障給付:12万212円(主に年金)
支出の内訳:65歳以上の無職単身世帯
- 支出:16万1435円
- うち消費支出:14万8445円
消費支出の具体的な内訳は以下の通りです。
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教育:0円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
非消費支出の平均額は1万2990円でした。
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
単身世帯の場合、1カ月の実収入13万1456円に対して支出の合計は16万1435円となり、毎月の家計収支は2万9980円の赤字という結果になっています。
年金だけで生活する高齢者世帯の割合はどのくらい?
現在の高齢者世帯のうち、実際に「年金収入のみ」で生活している世帯はどの程度あるのでしょうか。
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、高齢者世帯(※)の平均所得構成を見ると、「公的年金・恩給」が63.5%を占めて最も大きな割合です。続いて、就労による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%という順になっています。
さらに、「公的年金・恩給」を受け取っている世帯に限定して分析すると、その収入のすべてが年金・恩給で占められている世帯は43.4%にのぼることがわかりました。
※高齢者世帯:65歳以上の人のみで構成されるか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯を指します。
総所得に占める公的年金・恩給の割合と世帯構成
高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
半数を超える世帯では、公的年金以外の何らかの収入によって家計を補っている実態がうかがえます。
年金に頼りすぎない、「ハイブリッド型」の老後設計を進めよう
今回は、日本の公的年金制度の基本的な仕組みや、一人あたりの平均受給額、高齢者世帯の家計の状況について紹介しました。
最新のデータを見ると、年金の平均額だけでなく、実際の生活では収入と支出がどのようなバランスになっているのかも見えてきます。
年金は老後の暮らしを支える大切な収入源ですが、現役時代の働き方や加入期間、家族構成などによって受け取れる金額は人それぞれです。そのため、平均額だけで判断するのではなく、自分の場合はどうなのかを確認することが大切です。
まずは「ねんきん定期便」などで加入記録や将来の受給見込み額を確認し、老後の生活設計を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
現在、年金だけで生活している高齢者世帯は43.4%と半数以下にとどまっています。つまり、多くの世帯では、仕事による収入や貯蓄・資産運用などを活用しながら家計を支えているのが実情です。
この結果からも、これからの老後は公的年金だけに頼るのではなく、「年金+α」の収入源を準備しておくことが大切だといえます。
そのためには、現役のうちからNISAやiDeCoなどを活用して資産を育てることや、定年後も無理のない範囲で働き続けることが有効な選択肢になるでしょう。
公的年金を生活の土台としながら、資産運用による収入や働いて得る収入を組み合わせることが、家計にゆとりを生み、将来への安心にもつながります。
参考資料
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
