【70歳代・夫婦世帯の“いま”】元社会保障担当記者が「年金や貯蓄、生活費の“いま”」を解説。変わりゆく「家族のかたち」にどう備えるか
miya227/shutterstock.com
執筆者齊藤 慧編集者
監修者宮野 茉莉子LIMO&ファイナンス編集部 副編集長
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【70歳代・夫婦世帯の“いま”】元社会保障担当記者が「年金や貯蓄、生活費の“いま”」を解説。変わりゆく「家族のかたち」にどう備えるか
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【70歳代の暮らし】元社会保障担当記者が「年金や貯蓄、生活費の“いま”」について平均的な金額を解説

老後の「家族のかたち」は昔に比べて大きく変化しています。

かつては、子や孫と同居し、大家族で支え合う老後が当たり前でした。いまは、夫婦二人だけ、あるいはひとりで暮らす高齢者がめずらしくありません。

頼れる家族が身近にいない分、自分の年金と貯蓄で暮らしをどう支えるかが、これまで以上に重みを持つようになっています。だからこそ、世間の「平均」にただ振り回されるのではなく、自分の家計を等身大の数字でつかんでおくことが欠かせません。

ここでは、70歳代・夫婦世帯に視点をあててその家計や貯蓄について、元社会保障担当の記者が“いま”の状況をみていきます。

本記事は、編集部が厚生労働省や総務省など、官公庁が公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。元社会保障担当の筆者が70歳代の暮らしの実態を解説します。

高齢者世帯の半数超が「単独世帯」―変わりゆく家族のかたち

老後の不安は多々あるものの、昔より増えた不安としては「ひとりになったらどう生きていくか?」ではないでしょうか。昔は子どもや孫と暮らすことは珍しくなかったですが、今ではむしろ珍しいともいえます。

「家族のかたち」が変わってきたことは、統計にもはっきりと表れています。厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯(65歳以上の人などで構成される世帯)の世帯構造は、「単独世帯(ひとり暮らし)」が933万5000世帯で、高齢者世帯全体の53.2%を占めました。

次いで「夫婦のみの世帯」が755万9000世帯で、43.1%です。両者を合わせると、実に9割を超える高齢者世帯が、ひとり、または夫婦二人だけで暮らしていることになります。

前年(2024年)調査と比べても、単独世帯は52.5%から53.2%へと増え、ひとり暮らしの高齢者が少しずつ広がっています。かつて多かった、子や孫と同居する三世代の世帯は、いまや少数派になりました。

この変化は、老後のお金の考え方にも関わってきます。同居する家族がいれば、家計や介護を分担し合える場面もありますが、単独世帯や夫婦のみの世帯では、生活費も、いざというときの支えも、基本的に自分たちで用意しておく必要があります。頼れる人が身近にいない前提で、年金と貯蓄でどう暮らしを組み立てるかを、早めに考えておくことがいっそう大切です。

まずは、自分の世帯がどれくらいの収入と支出で回っているのかを、具体的な数字でつかんでおきたいところです。

「平均」に振り回されない―元社会保障担当記者が伝えたい、まず知っておきたいデータの見方

老後のお金を考えるとき、テレビや記事で報じられる「シニアの平均額」を、そのまま自分の家計と見比べても、正しい現状把握にはつながりません。ごく一部の高額資産層が、平均の数値を大きく引き上げているからです。表面的な平均だけに振り回されると、必要のない焦りに陥りかねません。大切なのは、平均だけでなく「中央値」や「金額別の受給者層(ボリュームゾーン)」といった、世間の等身大の姿を映すデータをあわせてみることです。

70歳代・二人以上世帯の貯蓄額の平均と中央値を探る

では、実際に“リアルないま”をみていきましょう。

まず金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯・2025年)」から老後の貯蓄を確認します。

※ここで言う金融資産には、預貯金のほかに株式や投資信託、生命保険などが含まれます。ただし、日常的な支払いや引き落としに使う普通預金の残高は含まれていません。

70歳代の貯蓄円グラフ。金額ごとの割合がわかる!

70歳代の貯蓄円グラフ。金額ごとの割合がわかる!
出所 : J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成

70歳代・二人以上世帯のうち、金融資産をまったく保有していない世帯は10.9%を占めています。その一方で、3000万円以上を持つ世帯も25.2%あり、資産状況には大きなばらつきがあります。1000万円未満の世帯が合計で32.1%いる一方、中央値は1178万円でした。

貯蓄額は、退職金の有無や現役時代の収入、相続、健康状態などによって大きく変わります。平均や中央値はあくまで目安であり、「自分がどのあたりにいるか」を落ち着いて確かめることが出発点になります。

厚生年金の受給額はいくら?平均月額と受給者層の実態

次に、厚生労働省が発表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、厚生年金の平均受給月額を見ていきます。

厚生年金の平均受給月額

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は15万289円です(基礎年金を含む)。ただし、受給額には幅があり、現役時代の加入状況によって一人ひとり異なります。

国民年金の受給額はいくら?ボリュームゾーンを詳しく解説

続いて国民年金です。

国民年金の平均受給月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

自営業者や専業主婦(主夫)などが受け取る国民年金(老齢基礎年金)は、ボリュームゾーンが「6万円以上7万円未満」で、受給権者全体の約半数を占めます。一方で、月額5万円未満の層も合計で約21%と、全体の2割ほどを占めます。満額に近い7万円以上を受け取っている方は約300万人で、全体の約9%にとどまります。

老後の生活費は赤字がふつう。家族のかたちは多様化するからこその備えを元社会保障担当記者が解説

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上・夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計をみていきましょう。

65歳以上の生活費

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 収入:月額25万4395円
  • 支出:月額29万6829円
  • 家計収支毎月の不足額:▲4万2434円

収入の大半を公的年金などの社会保障給付が占める一方、支出がそれを上回り、毎月4万2434円が不足します。この赤字は貯蓄などから補う必要があり、年間ではおよそ51万円を取り崩す計算です。

現役時代より収入が限られるシニア世代にとって、こうした慢性的な赤字は、長い目でみると貯蓄を大きく減らす要因になりかねません。現在の貯蓄額を把握したうえで、家計を見直したり、健康に応じて短時間でも働いたりと、できる範囲で手を打っておきたいところです。

特に固定費を見直すことが、節約や貯蓄を増やす鍵の一つにもなります。

元社会保障担当記者が伝えたい「“いま”からできる備え」

齊藤 慧
執筆者齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ

【元記者の視点】支出の「硬直化」と、自由に動かせない非消費支出の罠

本記事で紹介した「65歳以上・無職夫婦世帯における毎月約4万2000円の赤字」という家計調査のデータを詳細に分析したとき、社会保障や家計構造を継続的に取材してきた記者として、ぜひ注目していただきたい側面があります。

それは、シニア家計の不足分が生まれる根本原因は「贅沢や浪費による消費支出の増加」ではなく、「年齢を重ねることに伴う、支出構造の硬直化(自由に削れない固定コストの増大)」にあるという点です。

多くの方は「退職すれば交際費や洋服代が減り、生活費は小さくできる」と想定します。実際、家計調査の詳細を追うと、70代、80代と加齢が進むにつれて、外食やレジャー、被服といった自由裁量の強い「アクティブな消費支出」は自然と低下していくでしょう。

しかし、それに反比例するように家計の中で重みを増していくのが、住民税や国民健康保険料、介護保険料といった「非消費支出(天引きされるコスト)」と、住居の維持管理費や医療・保健医療費といった「生きていく上で削減が困難な固定支出」です。

つまり、現在のシニア層が実感している生活の厳しさは、「自分たちでお金を使いすぎているから」だけではありません。「生活水準を慎ましく抑え、楽しむためのお金を削っているにもかかわらず、社会保険料の負担や医療費・インフレに起因する『コントロール不能な固定費』が家計の底を踏み抜かないように支えるだけで、月に約29万円が消えてしまう」という、家計の硬直化現象も要因の一つとなりえます。

「赤字=自分たちの節約努力が足りない」と誤認して過度な食費削減などに走ると、かえって健康を損なう要因になりかねません。

削減できないコストと削ってもよいコストの境界線を明確に見極めることこそが、老後資産を守り抜くための鍵となるでしょう。

その習慣は家族のかたちが変わっても続いていくことでしょう。

ひとりの老後にも備えよう

現代ではひとり暮らしの高齢者は増え、夫婦二人だけの世帯も多数を占めます。子や孫と同居し、大家族で支え合う老後は、もはや当たり前ではなくなりました。そして忘れてはならないのは、いま夫婦二人で暮らしている方も、いずれはどちらかが先立ち、「ひとりの老後」を迎える可能性があるということです。つまり、ひとりで暮らす備えは、独身の方だけの問題ではありません。

だからこそ、誰もが「ひとりになっても成り立つ家計」を、早めに考えておきたいところです。第一に、世間の平均ではなく、自分の年金見込みと毎月の収支を、手取りベースで具体的につかむこと。「ねんきんネット」や年金振込通知書が役立ちます。第二に、使える制度は申請して受け取ること。年金生活者支援給付金や繰下げ受給など、条件に当てはまれば受け取れる仕組みの多くは、自動では始まりません。第三に、ひとりになった後の住まいや、貯蓄を取り崩すペース、頼れる相談先を、元気なうちに整理しておくこと。

家族のかたちが多様化する時代だからこそ、公的な情報で確かめながら、「ひとりの老後」にも備えておく。それが、遠回りに見えて、いちばん確かな安心につながるのではないでしょうか。

参考資料

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齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ
宮野 茉莉子LIMO&ファイナンス編集部 副編集長

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