総務省が2026年6月30日に公表した「労働力調査(基本集計)2026年5月分結果」によると、日本の就業者数は6890万人に達し、前年同月に比べて52万人増加しました。
シニア世代を含め長く働き続ける方が増えるなか、老後生活の柱である「公的年金」への関心はこれまで以上に高まっています。
「将来いくらもらえるのか」「他の人と比べて自分は多いのか少ないのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
私自身、証券会社の元富裕層担当社員として、数多くの富裕層やシニア世代の資産形成・ライフプランに関わってきた経験から、「まずは年金制度の基本と現状を把握すること」が、将来に向けた資金計画を立てる際に必要だと考えています。
この記事では、公的年金の2大柱である「国民年金」と「厚生年金」の仕組みや、2026年度の最新受給額を詳しく解説します。
さらに、性別や働き方(会社員・自営業)による年金受給額のリアルな格差まで、最新データをもとに紐解きます。
豊かなセカンドライフを築くための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
高齢世帯「年金のみで暮らしている割合」は何パーセント?
公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の 総所得に占める割合別世帯数の構成割合
内閣府が2026年6月に公表した最新の「高齢社会白書」によると、公的年金や恩給を受給している高齢者世帯のうち、受給額が家計収入のすべて(100%)を占めている世帯の割合は43.4%にのぼることが分かりました。
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
このデータは、公的年金が多くのシニア世代の生活を支える「収入の柱」となっている実態を色濃く反映しています。
調査元: 内閣府「高齢社会白書(2026年6月公表)」
調査結果: 年金・恩給が家計収入の100%を占める世帯 = 43.4%
日本の公的年金は「2階建て」の仕組み
日本の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」という2つの制度から成り立っており、その仕組みは「2階建て」とよくいわれます。
日本の公的年金制度のしくみ
1階部分にあたる「国民年金(基礎年金)」
はじめに、制度の基礎となる1階部分が「国民年金」です。
国民年金は、原則として日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。
保険料は全国一律で、毎年見直しが実施されます。
参考として、2026年度の保険料は月額1万7920円となっています。
40年間すべての保険料を納めると、65歳から満額の老齢基礎年金(2026年度は月額7万608円)を受け取れます。
保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて支給額が減る仕組みです。
2階部分は「厚生年金」
続いて、2階部分に相当するのが厚生年金です。
会社員や公務員、また一定の要件を満たすパートタイマーなどがこの制度に加入します。
厚生年金は国民年金に上乗せして加入する形式のため、「2階建て」といわれています。
厚生年金の保険料は国民年金と違い、給与額に応じて変動します。
そのため、収入が多いほど保険料も高くなるのが特徴です。
ただし、保険料には上限が設けられているので、一定以上の収入がある方の保険料は同額になります。
将来支給される年金額は、厚生年金への加入期間や納付した保険料の総額にもとづいて計算されるため、受給額は人によって大きく異なります。
【2026年度】公的年金の支給額はいくら?
公的年金の支給額は、物価や賃金の動きに合わせて、毎年改定されます。
2026年度の年金額の例
2025年度と比べると、国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の増額となります。
2026年度の国民年金・厚生年金の支給額モデル
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):月額7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(前年度比+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額)は、月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※厚生年金の金額は、平均的な収入(賞与を含む平均標準報酬月額45万5000円)の男性が40年間勤務した場合に受け取る年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準を想定したものです。
厚生年金と国民年金、受給額の個人差と平均月額はどのくらい?
老齢年金の受給額は、現役時代の加入状況により人それぞれです。
ここでは、厚生年金と国民年金の平均月額や受給額ごとの人数分布から、どのくらいの個人差があるのかを確認します。
厚生年金の平均月額と受給額分布
厚生年金の平均額(全年齢)
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均年金月額は次のようになっています。
- 全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金の平均月額と受給額分布
国民年金の平均額(全年齢)
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均月額は次の通りです。
- 全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金の平均月額は、全体で5万9310円です。
男性は6万1595円、女性は5万7582円となっており、わずかに男女差が見受けられます。
最も人数が多いのは「6万円以上~7万円未満」の層で、多くの方が満額に近い年金を受給していると推測できます。
厚生年金ほどの大きな差ではありませんが、国民年金においても月額1万円未満から7万円以上まで、受給額に個人差があることが見て取れます。
働き方で変わる?ライフコース別の年金支給額モデル
年金の受給額には個人差が大きいため、平均額だけでは実態をつかむのが難しい面があります。
「自分は将来どのくらい年金を受け取れるのだろう」と考える際の参考として、ライフコース別の目安額を紹介します。
厚生労働省が2026年1月23日に公表した「多様なライフコースに応じた年金額の例」という資料をもとに確認していきます。
この資料では、年金の加入履歴を5つのパターン(男性2例、女性3例)に分類し、それぞれの年金額の概算が示されています。
ライフコース別のモデル年金額
出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
【ケース1】男性・主に厚生年金に加入した場合
年金月額の目安:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円(賞与を含む月額換算。他のケースも同様)
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
【ケース2】男性・主に国民年金(第1号被保険者)に加入した場合
年金月額の目安:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
【ケース3】女性・主に厚生年金に加入した場合
年金月額の目安:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
【ケース4】女性・主に国民年金(第1号被保険者)に加入した場合
年金月額の目安:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
【ケース5】女性・主に国民年金(第3号被保険者)に加入した場合
年金月額の目安:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
これらのモデルケースを見ると、厚生年金の加入期間の長さや現役時代の平均収入が、将来受け取る年金額に大きく影響することがわかります。
特に、現役時代に主に国民年金と厚生年金のどちらに加入していたかで、老後の受給額に大きな差が生じることがわかります。
まとめにかえて
本記事では、日本の公的年金制度の基礎知識から、2026年度の最新情報、そしてライフコース別の受給額モデルについて解説してきました。
データが示す通り、将来受給できる年金額は、現役時代の働き方や加入履歴によって異なります。
また、高齢者世帯の約半数が年金以外の収入を得て生活している現状もあり、公的年金だけに依存せず、早い段階からライフプランを立てておくことが重要です。
私は元証券会社のファイナンシャルアドバイザーとして多くのお客様の資産形成をサポートしてきました。
これまでの実務経験を通じて、セカンドライフに向けた準備の第一歩は、まず「ご自身の現状(受給見込額)」を把握することだと考えています。
まずは、日本年金機構の「ねんきんネット」などを活用し、ご自身の年金記録を確認してみてはいかがでしょうか。
現状を把握することが、将来の具体的な生活設計や、今必要な資産形成を考えるきっかけになるでしょう。
参考資料
SMBC日興証券(旧日興コーディアル証券)出身。証券外務員一種保有。富裕層や法人に向けた資産運用コンサルティングに従事。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして記事の企画・執筆・監修をしている。
