老後の暮らしを支える柱となるのが、公的年金です。では実際に、平均でいくら受け取れているのでしょうか。
厚生労働省のデータでは、厚生年金の平均月額は15万289円、国民年金は5万9310円とされています。ただし、平均はあくまで目安です。加入期間や現役時代の収入によって受給額は大きく変わり、平均を下回る世帯も少なくありません。
まずはご自身の見込み額を知ることが、備えの第一歩です。本記事では年金の実態を、元銀行員がわかりやすく解説します。また、働きながら年金を受け取る在職老齢年金についてもみていきましょう。
公的年金は「2階建て」2026年度(令和8年度)の年金額は?
日本の公的年金は、2階建てにたとえられます。1階は20歳以上のすべての人が対象の「国民年金(基礎年金)」、2階は会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。どのような働き方をしてきたかで、受け取る年金の姿は変わってきます。
厚生年金と国民年金の仕組み
公的年金の額は、物価や賃金の動向をふまえて毎年度見直されます。2026年度は、国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げとなりました。おもな金額は次のとおりです。
- 老齢基礎年金(満額):月7万608円
- 厚生年金の夫婦2人のモデル世帯:月23万7279円
2026年度の年金額の例
年金は増えましたが、今回は物価の伸び(3.2%)より賃金の伸び(2.1%)が小さく、低いほうにあわせて改定されました。さらにマクロ経済スライドの調整も入っています。裏を返せば、増えても物価上昇に追いついているとは言い切れないことを意味します。
60歳から90歳代のリアルな「厚生年金・国民年金」受給額一覧!男女・年代別に見る、リアルな平均受給額
では、実際の平均額はどのくらいでしょうか。厚生労働省の令和6年度のデータ(受給権者・基礎年金を含む)でみると、男女差がはっきり表れています。
- 厚生年金:男性 約17万円/女性 約11万円
- 国民年金:男性 約6万2000円/女性 約5万8000円
厚生年金の平均額(全年齢)
厚生年金で6万円ほどの差があるのは、働き方や賃金、加入期間の違いが年金額に反映されるためと考えられます。年代別(受給権者)にみると、厚生年金は次のような水準です。
- 65〜69歳:約15万2000円
- 70〜74歳:約14万8000円
- 75〜79歳:約15万1000円
- 80〜84歳:約15万8000円
- 85〜89歳:約16万5000円
- 90歳以上:約16万4000円
国民年金の平均額(全年齢)
一方で、国民年金はおおむね月5万6000円〜6万1000円で推移しています。
とはいえ、これらは平均であり、加入歴によって一人ひとり大きく異なる点はおさえておきたいところです。
働きながら年金を受け取る在職老齢年金とは?
最近では60歳代以降も働き続ける方は増えています。厚生労働省の集計では、働きながら老齢年金を受け取っている人(在職の受給権者)は、令和6年度末で424万人にのぼりました。そこで気になるのが「働くと年金は減るのか」という点ではないでしょうか。
厚生年金に加入して働き、給与(賞与込みの月収)と老齢厚生年金の月額の合計が一定の基準額を超えると、超えた分に応じて年金の一部の支給が止まります。これが「在職老齢年金」の仕組みです。この基準額が、2026年度(令和8年度)から月51万円から65万円へと引き上げられました。裏を返せば、以前より多くの人が、年金を減らされずに働きやすくなったといえます。
もっとも、支給停止の対象になるのは厚生年金の部分で、国民年金(老齢基礎年金)は含まれません。収入や働き方によって扱いは変わり、制度も今後見直される可能性があります。働くことと年金の受け取りをどう組み合わせるかは、ご自身の状況にあわせ、公式情報で確認しながら考えておきたいところです。
まとめにかえて
金融機関出身の筆者からお伝えしたいのは「まず自分の数字を知る」ことの大切さです。平均や他人の額に一喜一憂するより、ねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込み額を確認し、足りない分をどう補うかを考える。そのうえで、働きながら受け取る、繰下げで増やす、先取りで貯めるなどといった選択肢を、ご自身の状況にあわせて組み合わせていく。そんな順番で考えてみてはいかがでしょうか。大切なのは、他人の平均ではなく、あなた自身の数字で将来を描くことでしょう。
参考資料
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
