2026年7月3日、公的年金の積立金を管理・運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が「2025年度 業務概況書」をリリースしました。
少子高齢化が進む中、将来世代のために大きく減らすことが許されない「年金積立金」。
大切なこの資金を、GPIFはどのように運用しているのか確認していきましょう。
また、2025年度(2025年4月〜2026年3月期)の運用成績は、国内株式と外国株式が大きく牽引し、期間収益率+16.47%という非常に好調な結果となりました(背景には世界的な株高や為替の円安傾向があります)。
GPIF「資産ごとの収益額と収益率(2025年度)」
「そんなに高い収益率を出せるなんて、どんな銘柄に投資しているだろう…」と思うかもしれません。
今回の好決算を大きく牽引した「国内株式」と「海外株式」の保有時価総額トップ20についても見てみましょう。
GPIF「年金積立金」の運用状況、2025年度の収益率は+16.47%
GPIF「市場運用開始後の累積収益額(2001 年度~2025年度)」
公的年金の積立金を管理・運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2001年度の市場運用開始以来、年率換算で+4.67%という安定した収益率を達成しています。
2025年度における期間収益率は+16.47%と、好調な結果を示しました。
GPIF「年金積立金」の基本ポートフォリオは?
GPIFは5年に1度、基本ポートフォリオを設定します。
GPIF「年金積立金の基本ポートフォリオ」
2026年3月末時点の基本ポートフォリオは、国内外の債券と株式に25%ずつ。
しかし、株価や為替は毎日動くため、常にぴったり25%をキープするのは不可能です。そこで設けられているのが「乖離許容幅」です。
◆基本ポートフォリオ(乖離許容幅)◆
- 国内債券:25%(±6%)
- 国内株式:25%(±6%)
- 外国債券:25%(±5%)
- 外国株式:25%(±6%)
たとえば、日本株の運用が好調すぎて全体の比率が大きく膨らみ、乖離許容幅を超えそうになった場合には、一部を利益確定させて別の資産に回すといった調整(リバランス)を行い、常に理想的なバランスを維持するよう努めています。
基本ポートフォリオは「5年に1度」見直される
この「4資産に25%ずつ」という資産配分は、一度決めたらずっとそのままというわけではありません。原則として5年に1度、見直されています。
なぜ5年に1度なのかというと、国が5年に1度、日本の年金制度の健康診断にあたる「財政検証」を行うからです。
「これからの日本は物価がこれくらい上がりそう」「賃金はこのくらいになりそう」という最新の将来予測データに合わせて、GPIFも運用の計画書(中期目標)を5年ごとに作り直しています。
このように、時代の変化に合わせて計画をアップデートしているからこそ、長期にわたる安定的な運用が可能になっているのです。
GPIF「年金積立金」どんな銘柄を保有している?
では、具体的にどんな銘柄を保有しているのでしょうか。
今回の好決算を大きく牽引した「国内株式」と「外国株式」の保有銘柄について、時価総額が大きい上位20銘柄ずつ見ていきましょう。
国内株式・保有時価総額上位20銘柄
国内株式は全部で1749銘柄保有。
自動車、金融、半導体など、日本経済を支えるメガ企業が並んでいます。
国内株式・保有時価総額上位20銘柄
- トヨタ自動車
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ
- 日立製作所
- ソニーグループ
- 三井住友フィナンシャルグループ
- 三菱商事
- 三井物産
- みずほフィナンシャルグループ
- 東京エレクトロン
- 三菱重工業
- 東京海上ホールディングス
- 伊藤忠商事
- ソフトバンクグループ
- アドバンテスト
- 信越化学工業
- 三菱電機
- 任天堂
- キーエンス
- リクルートホールディングス
- 武田薬品工業
外国株式・保有時価総額上位20銘柄
外国株式は全部で4007銘柄を保有。人気のインデックスファンド、オルカンやS&P500の組入銘柄で上位を占める銘柄も入っています。
外国株式・保有時価総額上位20銘柄
- NVIDIA CORP
- APPLE INC
- MICROSOFT CORP
- AMAZON.COM INC
- ALPHABET INC-CL A
- ALPHABET INC-CL C
- BROADCOM INC
- TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC
- META PLATFORMS INC-CLASS A
- TESLA INC
- JPMORGAN CHASE & CO
- EXXON MOBIL CORP
- ELI LILLY & CO
- BERKSHIRE HATHAWAY INC-CL B
- JOHNSON & JOHNSON
- WALMART INC
- ASML HOLDING NV
- VISA INC-CLASS A SHARES
- SAMSUNG ELECTRONICS CO LTD
- COSTCO WHOLESALE CORP
「分散・長期・リバランス」がポイント
GPIF「運用状況(2025年度)」
世界最大級の機関投資家であるGPIFは、「特定の資産に偏らず、国内外の株と債券に25%ずつ分散する」「値上がりした資産は利益確定し、自動的にリバランスする」という、王道でシンプルな運用をしています。
実は、筆者が銀行員時代にも「分散投資」と「リバランス」の重要性は、毎日のように窓口でお客様にお伝えしていました。
しかし、実際に個人で運用を始めると、「分散投資は最初に設定すればできるけれど、リバランスはちょっと難しい…」と感じる方が多いようでした。
特に長期の資産運用で投資信託を使うとなると、基本的には「ほったらかし」になりがちですよね。
もし、自分で管理するのが手間に感じるなら、最初から複数の資産に分散投資されている「バランスファンド」を選ぶのも一つの手です。これなら、運用のプロが自動でリバランスまで行ってくれます。ただし、そのぶん保有コスト(信託報酬)がやや高めに設定されているのがデメリットです。
一方で、「なるべく低コストで運用したい」「株なら株、債券なら債券と、中身がシンプルな方が分かりやすくていい」という方は、バランスファンドではなく、シンプルな単体ファンドを組み合わせて持つのがおすすめです。
その代わり、時々で構いませんので、全体の資産状況をご自身でチェックして、崩れたバランスを直す「手動リバランス」を行ってみてください。
定期的に自分の資産と向き合い、値上がりしたものを一部売却して値下がりしたものを買い増す。このリバランスを意識するだけで、その時の経済状況により適した、効率的な運用ができるようになります。
世界一の投資家であるGPIFですら、毎日動く市場に合わせて厳格にリバランスを行っています。
「分散・長期・リバランス」の3原則を守ることを意識してみると良いでしょう。
【免責事項】
- 投資にはリスクが伴います。
- 本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
