この記事はここがポイント
- 2025年度上場企業80社が商号変更、過去最多水準
- 改称の主な理由:事業乖離解消、節目、グループ再編、ブランド統一
- 商号変更後の企業は売上高伸長率4.7ポイント高く、業績向上への期待
ここ1~2年で上場企業の社名変更・改称予定が相次いでいます。
直近では、ゲオホールディングス<2681>が10月1日付で「株式会社セカンドリテイリング」への変更を予定しています。
マルハニチロは3月1日、社名を「Umios(ウミオス)株式会社<1333>」に変更しました。
串カツ田中ホールディングスも3月1日付で「ユニシアホールディングス<3547>」に、日本ガイシは同年4月1日付で「NGK株式会社<5333>」に、ユアサ商事も同日付で「株式会社YUASA<8074>」にそれぞれ商号を変更しました。
2027年4月1日には、日立建機<6305>が「ランドクロス株式会社」への商号変更を予定しています。
なぜ今、これほど多くの企業が社名を変えているのでしょうか。
各社の適時開示・公式プレスリリースを読み込むと、単なる横並びのブームではなく、いくつかの共通パターンが見えてきます。
直近相次ぐ社名変更、何が起きているのか
まず、直近の主な事例を発表日・変更日とともに整理します(本稿は2026年9月8日時点の情報に基づきます)。
旧社名(証券コード)→新社名 :発表日:変更日
- マルハニチロ→Umios株式会社<1333>:2025年3月24日:2026年3月1日(実施済み)
- 串カツ田中ホールディングス→株式会社ユニシアホールディングス<3547>:2026年1月23日:2026年3月1日(実施済み)
- 日本ガイシ→NGK株式会社<5333>:2025年1月31日(方針公表):2026年4月1日(実施済み)
- ユアサ商事→株式会社YUASA<8074>:2025年5月9日:2026年4月1日(実施済み)
- ゲオホールディングス<2681>→株式会社セカンドリテイリング:2025年7月25日:2026年10月1日(予定)
- 日立建機<6305>→ランドクロス株式会社:2025年10月28日(取締役会決定):2027年4月1日(予定)
主な社名変更企業一覧
このほか、アイフルは3月30日付で上場廃止となり、新設された純粋持株会社「ムニノバホールディングス株式会社<547A>」が同年4月1日付で東証プライムに新規上場しました。
アイフルはムニノバホールディングス傘下の事業会社として存続しています。
これは既存の上場会社が社名だけを変えるケースとは性質が異なり、持株会社化に伴って新しい社名の会社が誕生し、上場銘柄そのものが入れ替わった事例です。
理由①:事業の実態と社名の乖離を解消する動き
最も多いのが、事業内容の変化によって社名と実態がずれてしまった状態を解消するパターンです。
日立建機は2025年10月28日、2027年4月1日付での「ランドクロス株式会社」への商号変更を決定したと発表しました。
同社は特設サイトで、ビジョン「豊かな大地、豊かな街を未来へ」を表す「LAND」と、「Customer」「Reliable」「Open」「Solutions」の頭文字を組み合わせた新ブランド「LANDCROS」について、ハードウェア中心の事業構造から、機械のライフサイクルを通じたサービスやデジタルソリューションまで含めて顧客課題を解決する「ソリューションプロバイダー」への進化を体現するものと説明しています。
ゲオホールディングスも同様の動きです。2025年7月25日の発表によると、新社名「セカンドリテイリング(2nd RETAILING)」は英語で中古を意味する「second-hand」に由来し、リユース事業をビジネスの中核に据える方向へ舵を切ったことを踏まえ、創業40周年の節目にあたる2026年に商号変更を決定したとしています。
ユアサ商事も、4月1日付で「株式会社YUASA」に商号を変更しました。
「商事」を外したのは、従来の商社機能にとどまらない「新たな価値を創造し続ける複合専門商社」への進化を示すためだとしています。
理由②:創業の節目を「第二創業」「第三創業」の合図に
創業から数十年~数百年の節目を、経営姿勢の転換を打ち出すタイミングとして利用する例も目立ちます。
マルハニチロは2025年3月24日の発表で、1880年創業を「第一創業」、2007年の経営統合を「第二創業」と位置づけたうえで、今回の社名変更を「第三創業」と定義しました。
「経済価値だけでなく、環境価値、社会価値を最大化することで企業価値を高めていく」という経営姿勢の転換が理由とされています。
新社名「Umios」は「umi(海)」「one(一体)」「solutions(解決)」を組み合わせた造語で、「海を起点に食を通じてグローカルに価値を提供するソリューションカンパニー」を志向するとしています。
串カツ田中ホールディングスも3月1日付で「株式会社ユニシアホールディングス」に商号を変更しました。
同社は串カツ田中の飲食事業に加えて、イタリアン業態を展開する「ピソラ」、店舗の企画・設計・施工を手がける「ジーティーデザイン」、WEBデザインを担う「UKYE」、海外事業を担う「TANAKA INTERNATIONAL INC.」など複数のブランド・事業を傘下に持つ多角的なグループです。新社名「UNISIA」は「UNI(ひとつの)」と「SEA(海)」を組み合わせたもので、こうした多様なブランドや人材が「ひとつ」のチームとなり、世界をつなぐ四つの海(マーケット)へ進み出す決意を表現したとしています。
同社は第二創業期を迎え「グローバルライフスタイル企業」を目指す方針を打ち出しています。
ユアサ商事の商号変更も、創業360周年という節目のタイミングで実施された点で、この理由②の要素も併せ持っています。
理由③:グループ再編・持株会社化で誕生する新しい社名
アイフルの事例は、他社とはやや性質が異なります。
同社は2025年6月24日、2026年4月1日に設立する新持株会社の社名を「ムニノバホールディングス株式会社」とすると発表し、予定通りムニノバホールディングスが設立され、東証プライムに新規上場しました(アイフル自体はその2日前の3月30日付で上場廃止済みです)。
「ムニノバ」は「ムニ(Muni)=唯一無二」と「ノバ(Nova)=新星」を組み合わせた社名で、カードローン事業はアイフルのブランドとして継続しつつ、持株会社には新たな社名を与えることで、ローン事業にとどまらない多角化を推進する狙いがあるとしています。
この事例は、既存の上場会社がそのまま社名を変えるのではなく、持株会社化に伴って新しい法人が誕生し、上場銘柄自体が入れ替わった点が他の事例と異なります。
理由④:グループブランドへの統一
日本ガイシは4月1日付で「NGK株式会社」に商号を変更しました。
「NGK」はNIPPON GAISHI KAISHAの頭文字に由来する商標で、すでにほとんどの連結子会社の商号に使われ、国内外で親しまれてきたグループブランドです。
公式サイトでは、「NGKグループビジョン Road to 2050」に掲げるありたい姿の実現に向けて事業構成の転換を加速させるべく、中核会社の商号もこのグループブランドに統一し、グループ全体のブランド力・認知度向上を図ると説明しています。
東京商工リサーチ調べで見る「過去最多」の実態
こうした動きは、統計にも表れています。
東京商工リサーチが企業データベース(約440万社)をもとに集計したところ、2025年度(2025年4月〜2026年3月)に商号を変更した企業は1万9,656社(前年度比7.5%増)で、調査を開始した2022年度以降で最多を更新しました。
このうち上場企業では、Umios(旧マルハニチロ)など80社が商号を変更したとしています。
同社の分析では、大企業ほど商号変更に伴う事務手続きの時間やコスト負担は重い一方、組織再編や持株会社への移行、イメージ刷新やグローバル戦略の浮揚といった効果も大きいとされています。
また、2022年度に商号変更した企業のその後の業績を追跡した調査では、売上高の伸長率が10%以上100%未満の企業の割合は、商号変更した企業が29.4%、企業全体が24.7%となり、4.7ポイントの差がついたことも示されています。
商号変更そのものが直接業績を押し上げるわけではないものの、イメージ転換が売上拡大のきっかけになり得ることをうかがわせるデータです。
記者コメント
今回取り上げた事例を並べてみると、社名変更の理由は一様ではなく、①ハードウェア依存や旧来の事業イメージからの脱却など事業実態と社名のずれを解消する動き、②創業何十年という節目を「第二創業」「第三創業」の宣言に使う動き、③持株会社化に伴って新しい社名の会社が生まれる動き、④グループ内で使われてきたブランド名に中核会社の商号を合わせる動き、という4つの型に大きく分かれます。
いずれのケースにも共通しているのは、社名変更そのものを目的化するのではなく、あくまで既存事業の延長線上にない新しい成長領域への転換を対外的に宣言する手段として位置づけている点です。
個別銘柄を追う際は、社名だけでなく、変更の背景にある事業ポートフォリオの転換がどこまで実態を伴っているか、今後の決算や中期経営計画で確認していく視点が欠かせません。
参考
- Umios(旧マルハニチロ株式会社)「マルハニチロは、2026年3月1日付で社名を「Umios株式会社」に変更することを決定」(2025年3月24日発表)
- 日立建機株式会社「LANDCROS|特設サイト」
- 日立建機株式会社 商号変更に関するお知らせ(2025年10月28日発表)
- 株式会社ユニシアホールディングス(旧串カツ田中ホールディングス)「串カツ田中ホールディングス、3月1日より『株式会社ユニシアホールディングス』へ社名変更」(2026年2月27日発表)
- 株式会社ゲオホールディングス「商号変更に関するお知らせ」(2025年7月25日発表)
- NGK株式会社(旧日本ガイシ株式会社)「商号変更について」
- 株式会社YUASA(旧ユアサ商事株式会社)「商号の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ」(2025年5月9日発表)
- ムニノバホールディングス株式会社「新持株会社の社名および企業ロゴ制定に関するお知らせ」(2025年6月24日発表)
- 東京商工リサーチ「2025年度の商号変更、過去最多の1万9,656社」(2026年6月14日掲載)
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
