赤字からのV字回復と、高いROE
この利益水準は、数年前とはまるで違う。営業利益は2022年3月期の815億円、2023年3月期の820億円と横ばい圏で推移したのち、2024年3月期に701億円の赤字へ転落した。そこから2025年3月期に1,435億円へ転じ、直近はさらに積み上がっている。自己資本利益率(ROE、株主資本に対する利益の効率)は28.4%と、機械の中央値である7%台を大きく上回る。赤字からの反転が、資本効率の数字に鮮明に表れている。
事業の入れ替えも進む。1Qには、持分法適用会社であるジャパンマリンユナイテッドの持分の一部を今治造船へ譲渡することを決め、汎用ボイラなどの事業も譲渡した。中期経営計画に基づき、航空エンジンやロケット、クリーンエネルギーといった分野へ経営資源を移す方針で、稼ぐ領域へ資源を寄せる事業ポートフォリオ改革の途上にある。ただし自己資本比率は26.9%と、機械の中央値である6割台を大きく下回り、重工業らしく負債を厚めに抱えたデットヘビーな財務状態でもある。
会社は2027年3月期について、売上収益1兆8,300億円とプラス11.4%、営業利益2,400億円とプラス45.0%の増収増益を見込む。当期利益は1,650億円とプラス2.5%の計画で、営業段階での伸びを大きく想定している。年間配当も増配を続けており、連続増配は4期に達する。1Qの決算は、この強気の通期計画に対する最初の答え合わせになる。
筆者コメント
直近のIHIは、赤字からの反転局面を迎えている。2024年3月期の営業赤字を底に、翌期から利益が跳ね、ROEは機械のなかでも際立つ水準まで戻った。数年の時系列で見ると、業績のトレンドがはっきり変わっている。
その原動力は、防衛と航空エンジンという、需要の土台が比較的読みやすい分野に寄っている。受注高の伸びは、目先の売上だけでなく、先々の仕事量が積み上がりつつあることを示す。受注が利益に変わるまでには時間がかかるだけに、株価はその時間差を少しずつだが先に織り込みにいっているのかもしれない。
一方で、負債を厚めに抱えた財務は、金利や採算の変動からくるリスクを大きくする。株価が2月の急騰後に調整したのは、回復期待を一度織り込んだ反動という面があるとみられる。回復が本物かどうかは、掲げた大幅増益をどこまで数字で埋められるかにかかっている。まもなく出る1Qの中身が、その最初の試金石になるだろう。
参考資料
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
