この記事はここがポイント
- 東宝株価は、2026年7月24日公開の映画『ちいかわ』好調観測で前日比6%超の急騰
- 2027年2月期第1四半期決算は増収も、TOHO Global分割影響で営業利益が28.3%減益
- 2026年3月1日に1株5株の株式分割を実施、8月末権利確定の映画招待券優待
映画『名探偵コナン』や『ゴジラ』など、強力なエンタメコンテンツを抱える東宝(9602)。
2026年7月24日に公開された話題作『ちいかわ』の映画が好調な出だしを見せているとの観測から、足元の株式市場で株価が跳ね上がり注目を集めています。
一方で、同社が7月15日に発表した2027年2月期 第1四半期決算は「増収減益」での着地となりました。
この記事では、東宝の最新決算の内容やセグメント別の状況、注目の株式分割と株主優待制度、そして今後の見通しについて、元専門誌記者の視点から分かりやすく解説します。
東宝の2027年2月期「第1四半期決算」概要:営業収入は好調も一時的な減益
まずは、東宝が2026年7月15日に発表した2027年2月期 第1四半期(2026年3月1日〜5月31日)の連結業績を見ていきましょう。
- 営業収入:887億4,200万円(前年同期比4.6%増)
- 営業利益:138億6,900万円(同28.3%減)
- 経常利益:137億4,300万円(同27.4%減)
- 四半期純利益:81億9,600万円(同29.1%減)
決算の主なポイント
- 営業収入は堅調に拡大:映画事業や演劇事業の興行収入が全体を牽引し、前年同期比4.6%増の887億4,200万円を記録
- 利益面はTOHO Globalとの会社分割の影響で減少:2026年3月1日付で海外向けライセンス事業を100%子会社「TOHO Global株式会社」へ会社分割で承継させたことに伴い、会計上の連結調整(TOHO Globalとの会社分割の影響)」が発生し利益を押し下げたため営業利益は138億6,900万円(同28.3%減)に
- 通期業績予想は据え置き:2027年2月期の通期業績予想(営業収入3,450億円、営業利益620億円)から変更なし
セグメント別動向:映画・演劇が牽引、アニメは前年絶好調の反動
各事業セグメントの詳しい動向を整理しました。
映画事業:ヒット作相次ぎ増収増益
- 営業収入:433億8,100万円(前年同期比 7.7%増)
- 営業利益:95億9,800万円(同 6.1%増)
主なトピックス
- 「劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』」が大ヒットを記録
- 「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」「SAKAMOTO DAYS」なども順調に推移
- TOHOシネマズ等の映画館入場者数は1,200万5,000人(前年同期比9.4%増)に拡大
- 2026年3月に「TOHOシネマズ 大井町」をオープンし、劇場ネットワークを強化
IP・アニメ事業:減益も商品は販売伸長
- 営業収入:182億5,500万円(前年同期比 3.9%減)
- 営業利益:5億2,000万円(同 91.8%減)
主なトピックス
- 『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦』『葬送のフリーレン』等の配信利用・配分金収入が貢献
- キャラクターグッズや「ゴジラ カードゲーム」などの商品販売収入は53億8,600万円(前年同期比35.6%増)と大幅伸長
- 前年同期のライセンス収益高実績の反動に加え、2026年3月に実施したTOHO Globalへの国外ライセンス事業承継に伴う会社分割・連結調整(会計上の処理)が強まったことが響き、セグメント利益は一時的に大幅減益となりました
演劇事業:外部劇場での好調公演で利益急増
- 営業収入:59億800万円(前年同期比 15.5%増)
- 営業利益:4億7,500万円(同 574.6%増)
主なトピックス
- シアタークリエ公演に加え、外部劇場で上演した『メリー・ポピンズ』や『チャーリーとチョコレート工場』などが大盛況
- 前年同期比で営業利益が約6.7倍に跳ね上がる大幅増益を達成
不動産事業:空室率0.3%と引き続き安定した収益基盤
- 営業収入:204億2,500万円(前年同期比 1.4%増)
- 営業利益:55億5,600万円(同 6.8%減)
主なトピックス
- 賃貸不動産の空室率は0.3%と極めて低い水準を維持し、安定収益に寄与
- 道路事業で前年同期にあった価格スライドによる押し上げ効果が剥落したことなどの影響はあったものの、高い収益性をキープ
2026年3月に「1株→5株」の株式分割、投資しやすくなった株主優待
個人投資家に根強い人気を誇る東宝ですが、2026年3月1日付で普通株式1株につき5株の割合で株式分割を実施しました。
これにより少額からの投資が可能となり、投資家層の広がりが期待されています。
株式分割に伴い、株主優待制度の進呈基準も改定されています。
映画株主招待券(年1回・8月末基準の場合)
全国のTOHOシネマズ直営劇場などで利用できる映画招待券が進呈されます。
【所有株数に応じた枚数一覧】
発行枚数は年1回です。
- 100株 ~ 499株:1枚
- 500株 ~ 2,499株:2枚
- 2,500株 ~ 4,999株:6枚
- 5,000株 ~ 9,999株:10枚
- 10,000株 ~ 24,999株:20枚
- 25,000株以上:30枚
※2026年2月末基準(分割前基準)の優待券は100株で1枚(有効期限:同年7月〜12月)進呈されています。
演劇株主招待状(8月末基準)
- 対象株数:50,000株以上(分割後株数)を保有の株主
- 招待内容:指定の演劇公演ペアご招待状(1公演:S席相当2席分+プログラム2冊贈呈)
公演は自由に選べるわけではなく、同社が指定するものになります。
優待券は家族や友人にも無償譲渡が可能で、エンタメファンには特に魅力的な内容となっています。
【スケジュール】2026年8月末の権利確定までの流れは?
東宝の株主優待をもらうには、以下の具体的なスケジュールに沿って株式を購入・保有しておく必要があります。
権利付き最終日(最終売買日):2026年8月27日(木)
優待の権利を得るために、この日の大引け(株取引の終了時間15:30)までに株を購入、または保有している必要があります。
権利落ち日:2026年8月28日(金)
この日以降に株を売却しても、8月末時点の優待の権利は消失しません。反対に、この日に新しく購入しても8月末の優待は受けられません。
権利確定日:2026年8月31日(月)
株主名簿に名前が記載され、正式に株主としての権利が確定する日です。
招待券の発行時期、映画は「12月下旬」
映画・演劇ともに、有効期間は翌年1月~12月までとなります。
映画の招待券は、8月末権利確定分は12月下旬までに発行されます。
株価急騰の起爆剤?映画『ちいかわ』大ヒット期待と今後の展望
第1四半期決算自体は減益着地となった東宝ですが 、直近の株式市場で株価が跳ね上がった大きな要因は、2026年7月24日に公開された映画『ちいかわ』の好スタート観測です。
寄り付きこそ微下げで始まったものの、一日を通して右肩上がりで推移しました。
SNSで『ちいかわ』映画の好意的な感想が増えるにつれ、株価も上昇し、前日比6%超に急騰して取引を終えました。
- 株価(終値):1,446.5円
- 前日比:+6.48%
- 始値:1,357円
- 高値:1,449円
- 安値:1,348円
- 出来高:6,841,800株
- 時価総額:1,229,525百万円
- 売買代金:9,769百万円
- PER(会社予想):29.48倍
- PBR(実績ベース):2.4倍
- 配当利回り:1.52%
年間チャート
ここ1年の株価の動きも押さえておきましょう。
株価は1対5の分割を考慮し、遡及して修正しています。
2025年8月19日に2,059円の上場来高値をつけて以降は調整が続きました。
5月27日に年初来安値1,191円まで売り込まれたのを底に、足元は上昇に転じています。
東宝の12カ月チャート
まとめ
7月24日、東宝株が前日比6%超の急騰を見せました。
買い材料となったのは、同日封切りされた『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』のヒット観測です。
公開初日からSNS上にはさっそく鑑賞したファンの投稿が相次ぎました。
原作の世界観を丁寧になぞったストーリー展開への支持に加え、「最後まで飽きずに楽しめた」「音楽や効果音が素晴らしい」「グッズのラインナップが刺さりすぎて、あれもこれも欲しくなる」といった熱量の高い声が広がっています。
こうしたポジティブな反応の広がりが、公開初日の興行成績への期待を後押しし、株価の急騰につながったとみられます。
『ちいかわ』IPが持つ根強いファン層とグッズ展開を含めた収益力の高さが、市場からあらためて評価された格好です。
①好スタート観測で買い集中
公開直後から劇場への動員数が非常に好調であるとの観測が広がり、SNSや市場での注目が一気に高まりました
②業績上振れへの期待
株式市場では「第2四半期以降の興行収入・IP関連収益を力強く押し上げる」との期待感から買い注文が殺到し、株価の上昇につながっています
③強固なビジネスモデル
東宝の強みは、映画の配給・興行にとどまらず、自社IPやアニメのマルチユース展開、高収益な不動産事業を組み合わせた堅牢な経営基盤にあります
足元の利益は一時的な減益となりましたが 、夏の目玉作品のヒット次第では、今後の業績上振れも十分狙える展開です。
株式分割により一層身近になった東宝。
夏のヒット作の推移とともに、株価の動きから目が離せません。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
