この記事はここがポイント
- INPEX株価は3か月で-7.7%下落、2026年12月期第1四半期も減収減益
- 営業キャッシュフローは5期連続6,000億円超を維持するキャッシュ創出力
- 営業CFマージン34.5%、自己資本比率61.4%と、資源サイクルに耐性を持つ財務構造
株価は3か月で下落、直近四半期も減収減益——このエネルギー相場と業績・株価の連動を、INPEX(1605)の通期業績予想、直近5期分のキャッシュフロー構造、そして直近3か月の株価推移の3つの角度から読み解きます。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
それでは早速見ていきましょう。
四半期減収減益と通期予想に横たわる資源相場感応度
INPEXが2026年5月13日に開示した2026年12月期第1四半期累計決算(IFRS・連結)は、売上収益5,018億円(前年同期比-6.5%)、営業利益2,782億円(同-14.1%)、当期利益1,094億円(同-13.4%)となりました。1株当たり当期利益(EPS)は94.08円です。
通期業績予想(2026年12月期)は、売上収益2兆40億円(前期比-0.4%)、営業利益1兆860億円(同-4.4%)、当期利益3,500億円(同-11.1%)、1株当たり配当金は108.0円と公表されています。
大型投資フェーズ下で問われるキャッシュ創出力
※本段落の情報は2025年12月期通期の有価証券報告書を参照しています
INPEXの直近2025年12月期のキャッシュフロー内訳
INPEXの2025年12月期の3種類のキャッシュフローとフリーキャッシュフローは以下の通りです。
- 営業キャッシュフロー:6,938億円
- 投資キャッシュフロー:-6,687億円
- 財務キャッシュフロー:-1,107億円
- 設備投資(CAPEX):3,900億円
- フリーキャッシュフロー(営業CF−CAPEX):3,038億円
INPEXの5年フリーキャッシュフロー推移
- 2021年12月期:2,479億円
- 2022年12月期:4,046億円
- 2023年12月期:4,530億円
- 2024年12月期:2,441億円
- 2025年12月期:3,038億円
資源相場が高騰した2022〜2023年12月期にFCFが厚くなり、その後の相場調整局面でも一定水準を維持している構造がうかがえます。
INPEXのキャッシュポジション
- 現預金:1,684億円
- 短期有価証券(参考):4,719億円
- 主要有利子負債(ibdCurrent+ibdNoncurrent):1兆2,447億円
- 営業CFマージン(対売上):34.5%
- CAPEX対売上比:19.4%
- 自己資本比率:61.4%
上流事業の資本集約性を反映して有利子負債は大きく積み上がる一方、営業CFマージン30%超・自己資本比率60%超と、資源サイクルの下振れ局面でも耐性を持たせる財務構造が維持されています。
INPEXの5年営業キャッシュフロー推移
- 2021年12月期:4,454億円
- 2022年12月期:7,822億円
- 2023年12月期:7,881億円
- 2024年12月期:6,547億円
- 2025年12月期:6,938億円
営業CFはピークとなった2023年12月期からやや落ち着いたものの、5期を通して6,000〜7,000億円超のレンジで推移しており、CAPEXを一定規模で回しながらもFCFを黒字圏で維持できるキャッシュエンジンとしての厚みが確認できます。
資源サイクルとCF構造の呼応
INPEXの過去5期のCF推移を眺めますと、営業CFは資源相場が力強かった2022〜2023年12月期にピークを形成し、その後も6,000〜7,000億円台のレンジで踏みとどまるという「振れ幅は大きいが底も深くない」動きになっています。
上流事業の特性上、CAPEXは3,000〜4,000億円規模で持続的に投下されており、これは石油・ガスの生産量を維持し次世代のCFを取りに行くための先行支出の色彩が濃く、フリーキャッシュフローが単年度で沈むとしても、それだけでキャッシュ創出力の毀損とは捉えにくい構造です。
資本集約型で長期の投資回収サイクルを持つ資源系企業は、単年度FCFではなく複数年度で均したキャッシュ創出力と投資リターンの関係で捉えるのが自然です。
単年度のFCFの水準や増減率だけを切り出して評価しないよう注意しましょう。
関連タグ
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。

四半期の減収減益と通期予想の含意
INPEXの2026年12月期第1四半期は、売上収益・営業利益・当期利益ともに前年同期比マイナスで着地しました。
同社は上流事業(石油・天然ガス開発)を主軸とする資源系企業であるため、業績数値は原油・ガスの市況、為替、生産量という3つの主要変数の合成として動く構造を持ちます。
四半期単位の増減率をそのまま「事業実力の変化」と読み解くのではなく、期間内の資源価格レンジがどこにあったのか、為替感応度がどう作用したのかを分けて捉える必要があります。
通期予想の売上・利益がいずれも前期比マイナスで置かれていることも重要な手がかりで、経営陣自身が資源相場の見通しをどう置いているかのシグナルとして機能します。
数値の絶対値そのものではなく、その裏側にある3変数の想定と実勢のギャップに着眼していく視点が大切です。