【元証券マンが解説】NISAで迷う「オルカン」vs「S&P500」違いや運用実績を徹底比較「100万円投資、30年間放置」したらどうなる?
mapo_japan/shutterstock.com
執筆者加藤 聖人2級ファイナンシャル・プランニング技能士
監修者村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者
18:30
【元証券マンが解説】NISAで迷う「オルカン」vs「S&P500」違いや運用実績を徹底比較「100万円投資、30年間放置」したらどうなる?
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この記事はここがポイント

  • 100万円30年運用試算ではS&P500がオルカンより約9000万円多い約2億7468万円。
  • 設定来リターンはS&P500+349.70%、オルカン+283.35%とS&P500の長期優勢。
  • オルカンは米国比率63.0%と高く、S&P500との併用で分散効果は限定的。

NISAが新制度に生まれ変わってから、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきか迷う人は一段と増えています。

私が証券会社に勤務していた8年間でも、「選択肢が多すぎて、自分に合うものが分からない」と頭を抱えるお客様を数多くサポートしてきました。

大切なお金の投資先ですから、あれこれと悩んでしまうのは当然のことです。

どちらも低コストのインデックスファンドとして人気が高い一方で、投資先の広がりや値動きの特徴にははっきりした違いがあります。

本記事では、「オルカン」と「S&P500」の基本的な違いを整理したうえで、実際の運用実績や長期保有のシミュレーションを比較しながら、それぞれがどのような人に向いているのかを分かりやすく見ていきます。

「オルカン」と「S&P500」とは?まずは基本を整理

NISAの積立投資でよく候補に挙がるのが、「オルカン」と「S&P500」です。

どちらもインデックスファンドとして高い人気がありますが、投資対象や値動きの特徴は大きく異なります。なかには「名前は聞いたことがあるものの、違いまではよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。

まずは、それぞれがどのような市場に投資する商品なのか、基本的な特徴から整理していきましょう。

オルカン(全世界株式)の特徴

「オルカン(オールカントリーの略)」は、全世界の株式に分散投資するファンドを指します。

日本、米国、欧州に加え、新興国も含めた数千銘柄に分散投資されており、1本で世界経済全体の成長を取り込める点が特徴といえます。

ただし、三菱UFJアセットマネジメントの月次レポートによると、組入上位国・地域はアメリカが63.0%を占めており、2位の日本(5.1%)以下を大きく引き離しています。

また、組入上位10銘柄のうち、6位の台湾企業(台湾セミコンダクター)を除く9銘柄は、NVIDIA、Apple、Microsoftなど米国の巨大IT企業で占められています。

つまり、名目上は世界中に分散されているものの、実質的には米国、なかでも一部の大型IT企業の値動きに大きく左右されやすい構造になっている点は理解しておく必要があります。

それでも、世界経済の構造変化に応じてファンド内の構成比率が調整されるため、「どの国が今後成長するか」を個人で判断する必要がない点は、長期の資産形成において引き続きメリットといえるでしょう。

S&P500の特徴

S&P500は、米国を代表する約500社で構成される株価指数です。アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど、世界的な影響力を持つ企業が多く含まれており、米国経済の成長をダイレクトに反映する点が特徴です。

過去の運用実績を見ると、S&P500は長期的に高いリターンを上げてきました。特にIT企業を中心とした成長が株価を押し上げており、「資産を大きく増やしたい」と考える投資家から高い支持を集めています。

一方で注意したいのは、投資先が米国に集中している点です。米国経済が好調な局面では大きな成果が期待できますが、景気後退や株式市場の調整局面では、資産の変動幅が大きくなる可能性もあります。

成長性の高さと引き換えに、値動きの大きさを受け入れられるかどうかが、選択のポイントになるでしょう。

なお、前述のとおり、オルカンも実質的には米国比率が63.0%と高いため、「オルカンなら米国集中リスクを避けられる」という考え方も、必ずしも正確ではない点には注意が必要です。

【元証券マンが解説】オルカンとS&P500、選び方の視点

元証券マンとして、オルカンとS&P500の選び方について、いくつかの視点をお伝えします。

まず確認しておきたいのが、「オルカンとS&P500を組み合わせれば分散になる」という考え方です。

前章で確認したとおり、オルカンも実質的には米国比率が6割超と高いため、両者の値動きの相関は非常に高くなっています。

そのため、分散を目的として両方を保有しても、期待するほどの効果は得られにくいというのが実感です。

また、「過去のリターンが高いS&P500を選べば間違いない」という判断にも注意が必要です。設定来のリターンではS&P500が優勢な局面が続いてきましたが、近年の米国株、特にハイテク企業の好調さに支えられた結果でもあります。

今後も同じ傾向が続く保証はなく、過去の実績だけで判断することにはリスクが伴います。

こうした視点を踏まえると、オルカンとS&P500のどちらを選ぶか迷う方には、次の3点を意識することをおすすめします。

①「分散」を目的にするなら、値動きの相関も確認する

オルカンとS&P500を組み合わせても、値動きの相関が高いため、期待するほどの分散効果は得られないことがあります。

分散を重視するなら、新興国や債券など、異なる値動きをする資産を組み合わせる選択肢も検討する価値があります。

②過去のリターンではなく、自分がどこまで値動きを受け入れられるかで選ぶ

過去の実績だけで判断すると、好調だった資産に偏りがちです。米国集中のリスクをどこまで許容できるか、という自分自身のリスク許容度を軸に考えることが大切です。

③どちらか一方に絞れないなら、無理に選ばなくてもよい

筆者自身も、実際の資産運用ではオルカンとS&P500の両方を保有しています。どちらか一方に決めきれない場合、両方を保有すること自体が、ひとつの合理的な選択になり得ます。

NISAでの積立先選びに「絶対の正解」はありません。自分がどのような値動きなら安心して長く続けられるか、という視点を大切にしていただければと思います。

過去の運用成果を比較すると何が違う?

「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとするファンドは複数ありますが、今回は三菱UFJアセットマネジメントが設定している以下2本の運用実績を比較してみましょう。

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、米国を中心としつつも、欧州・日本・新興国など世界中の株式市場に分散投資しています。

三菱UFJアセットマネジメントが公表している騰落率(分配金再投資)を見ると、以下のようになっています。

【2026年7月15日基準】

  • 1ヵ月:+1.99%
  • 3ヵ月:+9.05%
  • 6ヵ月:+11.62%
  • 1年:+35.36%
  • 3年:+96.86%
  • 5年:+147.83%
  • 設定来:+283.35%

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に集中投資するファンドです。

米国企業は成長力が高く、特にIT・ハイテク分野の拡大を背景に、長期的に高いリターンを上げてきました。

同じく三菱UFJアセットマネジメントが公表している騰落率(分配金再投資)を見ると、以下のようになっています。

【2026年7月15日基準】

  • 1ヵ月:+2.84%
  • 3ヵ月:+10.75%
  • 6ヵ月:+11.91%
  • 1年:+33.45%
  • 3年:+101.25%
  • 5年:+169.78%
  • 設定来:+349.70%

どちらが優勢か?期間によって順位が入れ替わる点に注意

3年・5年・設定来といった長期の期間で見ると、米国市場に集中投資するS&P500が、オルカンに比べてリターンの大きさで上回る傾向にあります。

設定来のリターンでは、S&P500が+349.70%であるのに対し、オルカンは+283.35%と、60ポイント以上の差がついています。

一方で、直近1年間の騰落率を見ると、オルカン(+35.36%)がS&P500(+33.45%)をわずかに上回っています。

このように、常にS&P500に軍配が上がるわけではなく、期間の切り取り方によって順位が入れ替わることもある点には注意が必要です。とはいえ、米国市場の動向によっては大きく値下がりするリスクもあるため、どちらが良いとは一概には言えません。

村岸 理美
監修者村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者株式会社モニクルリサーチ

騰落率とは、スタート時点の価格が異なる商品同士の実力を公平に比べるための「共通のモノサシ」であり、一定期間でお金が何%増減したかを示すリアルな成績表です。

ちなみに、国内に数千本ある投資信託と比較しても、オルカンやS&P500が近年叩き出している数字は極めて優秀な部類に入ります。これほど低コストで高い実績を出し続けているからこそ、NISAのツートップとして多くの投資家に選ばれているわけですね。

「オルカン」vs「S&P500」100万円投資、30年間放置したらどうなる?

では、「オルカン」と「S&P500」に100万円を投資し、30年間放置したらどうなるのかをシミュレーションしてみます。

なお、投資では必ず価格変動のリスクが伴うため、あくまでも過去の運用実績であることを理解しておきましょう。

※設定来の騰落率を年平均成長率(CAGR)に換算してシミュレーション
※CAGR(パーセント)=[(X年目の数値÷1年目の数値)^ {1 ÷(X-1)}-1]×100

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に100万円投資し、30年間放置した場合

オルカンの設定来の騰落率(+283.35%)を年平均成長率(CAGR)に換算すると、約19.0%となります(2018年10月31日〜2026年7月15日、約7.7年間と仮定)。

仮に、100万円を年率19.0%で運用できた場合、30年後の資産額は「約1億8685万円」となります。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に100万円投資し、30年間放置した場合

こちらも同様に、設定来の騰落率(+349.70%)を年平均成長率(CAGR)に換算すると、約20.6%となります(2018年7月3日〜2026年7月15日、約8.0年間と仮定)。

仮に、100万円を年率20.6%で運用できた場合、30年後の資産額は「約2億7468万円」となります。

【注意】設定来のCAGR(年平均成長率)を将来にそのまま当てはめない

今回のシミュレーションに使用した年平均成長率(CAGR)は、あくまでも近年の好調な相場を反映した数値になっています。

年率19〜21%という数字は、歴史的にも極めて高い水準であり、今後も同様のパフォーマンスが続くとは限りません。

より現実的な視点として、運用利回りを年1〜10%と仮定した場合に、30年後の資産額がどの程度になるのかをシミュレーションしたので、参考にしてください。

  • 利回り1%の場合:約135万円
  • 利回り2%の場合:約181万円
  • 利回り3%の場合:約243万円
  • 利回り4%の場合:約324万円
  • 利回り5%の場合:約432万円
  • 利回り6%の場合:約574万円
  • 利回り7%の場合:約761万円
  • 利回り8%の場合:約1006万円
  • 利回り9%の場合:約1327万円
  • 利回り10%の場合:約1745万円

※初期投資額100万円、複利計算にて算出
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません

まとめにかえて

オルカンとS&P500は、どちらもNISAで人気の高い投資先ですが、その性格には違いがあります。

過去の運用実績では、設定来・3年・5年といった長期の期間でS&P500がオルカンを上回る傾向にありますが、直近1年ではオルカンが上回る局面もあり、常に一方が優勢とは限りません。

また、シミュレーションで見たとおり、わずか1〜2ポイントの年率リターンの差でも、長期の複利運用では最終的な資産額に数千万円単位の差が生まれます。

ただし、高い実績利回りをそのまま将来に当てはめるのは現実的ではなく、年1〜10%という現実的な利回りでの試算もあわせて確認しておくことが大切です。

筆者自身も、証券会社時代の経験と現在の投資家としての実感から、オルカンとS&P500のどちらか一方に絞りきれない場合は、両方を組み合わせて保有するのも十分に合理的な選択だと考えています。

米国市場の力強い成長を取りこぼさず、世界にも幅広く分散しているという精神的な安心感を得ることができますよ。

大切なのは、過去の数字に期待しすぎず、自分が続けやすい商品を選び、長期で積み立てていくことです。

村岸 理美
監修者村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者株式会社モニクルリサーチ

どちらも低コストのインデックスファンドとして人気が高い銘柄ですが、最終的には「相場の下落時でも自分が信じて持ち続けられるか」が最大のポイントになります。

どちらを選んだとしても、長期的な資産形成のベースとしては非常に優秀で素晴らしい選択です。一時的な値下がりに一喜一憂せず、まずはご自身の無理のない範囲で、淡々と積み立てを継続していきましょう。

参考資料

Google で優先するソースとして追加
加藤 聖人2級ファイナンシャル・プランニング技能士
村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者株式会社モニクルリサーチ

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