この記事はここがポイント
- 100万円30年運用試算ではS&P500がオルカンより約9000万円多い約2億7468万円。
- 設定来リターンはS&P500+349.70%、オルカン+283.35%とS&P500の長期優勢。
- オルカンは米国比率63.0%と高く、S&P500との併用で分散効果は限定的。
NISAが新制度に生まれ変わってから、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきか迷う人は一段と増えています。
私が証券会社に勤務していた8年間でも、「選択肢が多すぎて、自分に合うものが分からない」と頭を抱えるお客様を数多くサポートしてきました。
大切なお金の投資先ですから、あれこれと悩んでしまうのは当然のことです。
どちらも低コストのインデックスファンドとして人気が高い一方で、投資先の広がりや値動きの特徴にははっきりした違いがあります。
本記事では、「オルカン」と「S&P500」の基本的な違いを整理したうえで、実際の運用実績や長期保有のシミュレーションを比較しながら、それぞれがどのような人に向いているのかを分かりやすく見ていきます。
「オルカン」と「S&P500」とは?まずは基本を整理
NISAの積立投資でよく候補に挙がるのが、「オルカン」と「S&P500」です。
どちらもインデックスファンドとして高い人気がありますが、投資対象や値動きの特徴は大きく異なります。なかには「名前は聞いたことがあるものの、違いまではよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。
まずは、それぞれがどのような市場に投資する商品なのか、基本的な特徴から整理していきましょう。
オルカン(全世界株式)の特徴
「オルカン(オールカントリーの略)」は、全世界の株式に分散投資するファンドを指します。
日本、米国、欧州に加え、新興国も含めた数千銘柄に分散投資されており、1本で世界経済全体の成長を取り込める点が特徴といえます。
ただし、三菱UFJアセットマネジメントの月次レポートによると、組入上位国・地域はアメリカが63.0%を占めており、2位の日本(5.1%)以下を大きく引き離しています。
また、組入上位10銘柄のうち、6位の台湾企業(台湾セミコンダクター)を除く9銘柄は、NVIDIA、Apple、Microsoftなど米国の巨大IT企業で占められています。
つまり、名目上は世界中に分散されているものの、実質的には米国、なかでも一部の大型IT企業の値動きに大きく左右されやすい構造になっている点は理解しておく必要があります。
それでも、世界経済の構造変化に応じてファンド内の構成比率が調整されるため、「どの国が今後成長するか」を個人で判断する必要がない点は、長期の資産形成において引き続きメリットといえるでしょう。
S&P500の特徴
S&P500は、米国を代表する約500社で構成される株価指数です。アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど、世界的な影響力を持つ企業が多く含まれており、米国経済の成長をダイレクトに反映する点が特徴です。
過去の運用実績を見ると、S&P500は長期的に高いリターンを上げてきました。特にIT企業を中心とした成長が株価を押し上げており、「資産を大きく増やしたい」と考える投資家から高い支持を集めています。
一方で注意したいのは、投資先が米国に集中している点です。米国経済が好調な局面では大きな成果が期待できますが、景気後退や株式市場の調整局面では、資産の変動幅が大きくなる可能性もあります。
成長性の高さと引き換えに、値動きの大きさを受け入れられるかどうかが、選択のポイントになるでしょう。
なお、前述のとおり、オルカンも実質的には米国比率が63.0%と高いため、「オルカンなら米国集中リスクを避けられる」という考え方も、必ずしも正確ではない点には注意が必要です。
【元証券マンが解説】オルカンとS&P500、選び方の視点
元証券マンとして、オルカンとS&P500の選び方について、いくつかの視点をお伝えします。
まず確認しておきたいのが、「オルカンとS&P500を組み合わせれば分散になる」という考え方です。
前章で確認したとおり、オルカンも実質的には米国比率が6割超と高いため、両者の値動きの相関は非常に高くなっています。
そのため、分散を目的として両方を保有しても、期待するほどの効果は得られにくいというのが実感です。
また、「過去のリターンが高いS&P500を選べば間違いない」という判断にも注意が必要です。設定来のリターンではS&P500が優勢な局面が続いてきましたが、近年の米国株、特にハイテク企業の好調さに支えられた結果でもあります。
今後も同じ傾向が続く保証はなく、過去の実績だけで判断することにはリスクが伴います。
こうした視点を踏まえると、オルカンとS&P500のどちらを選ぶか迷う方には、次の3点を意識することをおすすめします。
①「分散」を目的にするなら、値動きの相関も確認する
オルカンとS&P500を組み合わせても、値動きの相関が高いため、期待するほどの分散効果は得られないことがあります。
分散を重視するなら、新興国や債券など、異なる値動きをする資産を組み合わせる選択肢も検討する価値があります。
②過去のリターンではなく、自分がどこまで値動きを受け入れられるかで選ぶ
過去の実績だけで判断すると、好調だった資産に偏りがちです。米国集中のリスクをどこまで許容できるか、という自分自身のリスク許容度を軸に考えることが大切です。
③どちらか一方に絞れないなら、無理に選ばなくてもよい
筆者自身も、実際の資産運用ではオルカンとS&P500の両方を保有しています。どちらか一方に決めきれない場合、両方を保有すること自体が、ひとつの合理的な選択になり得ます。
NISAでの積立先選びに「絶対の正解」はありません。自分がどのような値動きなら安心して長く続けられるか、という視点を大切にしていただければと思います。
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証券会社出身。約8年間にわたり株式や投資信託、生命保険の販売に従事。現在はフリーライター兼個人投資家として活動中。FP2級や一種外務員の知識と自身の投資実務を活かし、マーケット動向を注視した金融記事を精力的に執筆している。
元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
