この記事はここがポイント
- 専業主婦世帯年金23.7万円に対し、平均生活費29.7万円で月6万円の赤字。
- 厚生年金平均月15万円、月30万円超受給者はわずか0.1%のみ。
- 第3号被保険者減少、女性就業率81.9%上昇、自身の厚生年金確保が重要。
社労士として日々ご相談を伺っていると、ご相談者様と一緒に「ねんきん定期便」の見込額を確認した際、「えっ、これだけ? 老後は年金だけで暮らせるの?」と肩を落とされたり、不安な表情を浮かべたりする専業主婦の方に多く出会います。将来の生活が急にリアルに感じられ、戸惑ってしまうのも無理はありません。
会社員の夫の年金収入によっても状況は異なりますが、実はデータで見ても、年金生活世帯の家計収支は平均して赤字傾向にあるのが実情です。
本記事では、公的データから見える厚生年金のリアルな受給額と、専業主婦(夫)など「第3号被保険者」の減少傾向について分かりやすく解説します。また、現役世代が無理なくできる老後対策のひとつとして、女性がご自身の厚生年金を作っていく選択肢についても一緒に考えていきましょう。
【老後の家計収支】専業主婦世帯の年金額と生活費
最初に、専業主婦世帯(会社員の夫と専業主婦の妻など)の年金額と生活費を公的資料から見ていきましょう。
専業主婦世帯のモデル年金額は月23万7000円
厚生労働省の「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、専業主婦世帯のモデル年金額は23万7000円です。
このモデル年金額とは、平均的な収入(賞与含む月額換算45.5万円)で40年間就業した夫の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を合計した金額です。妻が専業主婦で「第3号被保険者」であった世帯の、ひとつの目安となる年金額といえます。
高齢夫婦世帯の平均生活費は月29万7000円
総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1か月の生活費は約29万7000円(消費支出は26万3979円、税・社会保険料などは3万2850円)です。
モデル年金との差額は月に約6万円となり、平均的な生活を送るだけでも、少しずつ貯蓄を取り崩していく必要があることがわかります。
高齢夫婦世帯(65歳以上の無職世帯)の家計収支
ゆとりある老後生活費は月39万1000円
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2025年度調査)」では、夫婦2人の老後に必要と考える生活費は次の通りです。
- 老後の最低日常生活費:月23万9000円
- ゆとりある老後生活費:月39万1000円
モデル年金額では、最低日常生活費を賄うのがやっとという状況です。専業主婦だった妻が満額の老齢基礎年金(約7万1000円)を受給すると仮定した場合、ゆとりある老後生活を送るために必要な夫の年金額は30万円を超える計算になります。
【厚生年金のリアルな受給額】年金額月30万円超は厚生年金受給権者の0.1%
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、会社員などの厚生年金受給権者の平均年金額は約15万円です。ただし、男性の平均額が約17万円であるのに対し、女性は約11万1000円と男女間で差がみられます。
受給額の分布を見てみると、年金額月30万円超となるのは厚生年金受給権者の0.1%ほどに留まります。男性に限っても0.2%となっており、専業主婦世帯において年金だけでゆとりある老後生活を送れる世帯は、決して多くはないのが実情のようです。
厚生年金受給権者の受給額分布
ここまで、専業主婦世帯の年金額・生活費や厚生年金のリアルな受給額について解説しました。次章では、第3号被保険者数(専業主婦など)と女性の就業率の推移、老後対策としておすすめする女性の働き方を紹介します。
第3号被保険者数は5年連続で減少
会社員に扶養される専業主婦(夫)などの「第3号被保険者」は、減り続けています。前述の厚生労働省資料によると、第3号被保険者数は2020年度末の793万人から2024年度末には641万人へと152万人減少(うち女性は781万人から628万人に減少)しました。
第3号被保険者数の推移
- 2020年度末:793万人(女性は781万人)
- 2021年度末:763万人(女性は751万人)
- 2022年度末:721万人(女性は709万人)
- 2023年度末:686万人(女性は673万人)
- 2024年度末:641万人(女性は628万人)
背景にあるのは、共働き世帯の増加と短時間労働者への厚生年金の適用拡大です。2024年10月には社会保険の適用対象となる企業規模要件が従業員51人以上に広がり、これまで扶養の範囲内で働いていたパートの一部が厚生年金に加入することになりました。
現役世代(25〜44歳)の女性就業率は急上昇
第3号被保険者の減少にともない、女性の就業率が上昇しています。内閣府の「男女共同参画白書 令和7年版」によると、子育て世代にあたる25〜44歳の女性の就業率は、2005年の64.0%から2024年には81.9%まで上昇しました。
出産・育児期に就業率が落ち込む「M字カーブ」は解消に向かっています。
女性の就業率の推移
ただし、女性の正規雇用比率は25〜29歳の60.3%をピークに低下し、男性に比べて低い水準です。出産などによる退職などが原因として考えられます。厚生年金の受給額は現役時代の賃金と加入期間で決まるため、非正規雇用中心の働き方では年金額は少なくなります。
女性の正規雇用比率
老後に向けた選択肢のひとつとして「自分自身の厚生年金」を考える
老後に向けた備えとして、女性がご自身の厚生年金に加入し、可能であれば正社員として長く働くことも、心強い選択肢のひとつです。
もちろん、子育ての状況や介護、ご本人の体調など、ご家庭の環境は本当に様々です。お子さんが小さいうちは一緒にいる時間を優先したいと思うのも当然のことですし、無理をしてすぐにフルタイムで働く必要はありません。
ただ、物価の上昇などもあり、家計のやりくりに悩む場面も増えているのではないでしょうか。もし少しずつでも環境が整ってきたら、「扶養の範囲内」という枠を少し広げてみることで、現在の世帯収入を増やすだけでなく、将来のご自身の年金を増やすことにもつながります。
近年は子育て支援の制度も少しずつ拡充され、柔軟な働き方ができる企業も増えてきました。育児が少し落ち着いたタイミングで、ご自身のペースに合わせて再就職や転職、働き方の見直しを検討してみるのもよいかもしれません。
おわりに
厚生年金の平均受給額は月約15万円で、月30万円以上を受け取れる人は受給権者のわずか0.1%です。夫1人の年金でゆとりある老後生活を送るのは難しいと言えるでしょう。
一方、第3号被保険者は直近5年間で152万人減少し、25〜44歳の女性就業率は81.9%まで上昇しました。女性が扶養の範囲内で働く(または専業主婦でいる)時代は終わりつつあります。現役世代の女性は、厚生年金に加入して働き続けることを検討してみましょう。
監修者コメント
ライフスタイルやご家庭の事情はそれぞれ異なりますので、ご自身のペースで働き方を考えてみてはいかがでしょうか。将来の不安を少しでも和らげるために、まずはご夫婦で「ねんきん定期便」を見ながら話し合ってみるのもよいかもしれません。無理のない範囲で、将来に向けた準備を少しずつ進めていけると安心ですね。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
