年金から天引きされる主なお金とは?
前述したように、年金は支給額がそのまま振り込まれるわけではありません。
一定の要件を満たす場合は、現役時代の給与と同様に、税金や社会保険料があらかじめ差し引かれたうえで支給されます。
この仕組みは「特別徴収」と呼ばれています。
主に年金から天引きされる項目は、以下のとおりです。
【年金から天引きされる社会保険料】
- 介護保険料
- 健康保険料(国民健康保険料または後期高齢者医療保険料)
【年金から天引きされる税金】
- 所得税
- 住民税
どの項目が天引きされるかは、年齢や加入している医療保険、所得、居住する自治体などによって異なります。
それぞれの内容を見ていきましょう。
年金から天引きされる「社会保険料」
年金から差し引かれる主な社会保険料には、介護保険料と健康保険料があります。
介護保険料は、40歳から64歳までは健康保険料とあわせて納付しますが、65歳以降は原則として年金から天引きされる仕組みです。
また、介護サービスを利用していても、保険料の納付義務は原則として継続します。
健康保険料については、加入している医療保険制度によって異なります。
75歳になると、原則として後期高齢者医療制度へ移行し、後期高齢者医療保険料が年金から天引きされるケースがあります。
年金から天引きされる「税金」
一定額以上の公的年金を受給している場合は、所得税や住民税も年金から差し引かれます。
所得税には、東日本大震災の復興財源として課されている復興特別所得税も含まれます。
また、住民税についても一定の所得がある場合は、年金から特別徴収されます。
ただし、年金収入や所得が一定額以下の場合は、住民税が非課税となるケースもあります。
税額は年金額や各種控除、自治体ごとの基準などによって異なるため、人によって実際の天引き額には差があります。
6月に届いた「年金振込通知書」で天引き額を確認しよう
年金受給者には、毎年6月頃に日本年金機構から「年金振込通知書」が送付されます。
年金振込通知書
通知書には、年金額や実際の振込額に加え、所得税や介護保険料、健康保険料などの控除額も記載されています。
額面の年金額だけでなく、どの項目でどれだけ天引きされているのかを確認することで、自分の実際の手取り額を把握しやすくなります。
年金を受給している方は、毎年届く通知書を一度確認しておくとよいでしょう。
額面だけでなく「手取り額」を確認して老後の家計を考えよう
本記事では、2026年度の年金額をもとに、標準的な夫婦の手取り額の目安を紹介しました。
2026年度の標準的な夫婦のモデル年金は月23万7279円ですが、この金額はあくまで額面であり、実際には所得税や住民税、介護保険料、健康保険料などが天引きされます。
そのため、実際に自由に使えるお金は額面より少なくなる点を理解しておくことが重要です。
老後の家計を正しく把握するためには、額面の年金額だけを見るのではなく、実際の手取り額や天引きの内訳を確認し、自分の生活設計に役立てていきましょう。
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三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。

元銀行員の筆者からのコメント:「振込通知書、見たことありますか?」と伺うと
筆者は元銀行員ですが、年金生活を送っているシニア世帯のお客様とお話する機会も多かったです。「年金振込通知書、目を通されていますか」とお伺いすると、「届いているのは知っているけれど、詳しく見たことはない」とおっしゃるお客様が実は多くいらっしゃいました。額面と手取りの差に気づくきっかけは、まさにこの通知書なのですが、封筒を開けずにしまい込んでしまう方が少なくない印象です。
とくにお伝えしたいのは、記事にある5つの天引き項目のうち、ご自身がどれに該当しているかは年齢や医療保険の加入状況によって変わってくるという点です。たとえば64歳までと65歳以降とでは介護保険料の徴収方法が変わり、75歳になると後期高齢者医療制度への移行で天引きの内訳がさらに変化します。銀行の窓口でも、「去年と天引き額が違う」というご相談を受けた際、よくよく確認すると、ちょうど後期高齢者医療制度への移行や、住民税の課税区分が変わったタイミングだったというケースが多くありました。
ご自身の天引き額が年によって変動した場合、それが単なる保険料率の見直しなのか、それとも非課税・課税の境目をまたいだ結果なのかを、通知書の内訳と照らし合わせて確認してみることをおすすめします。
まずは今年届いた通知書を実際に開封し、額面・天引き額・手取り額の3つの数字を確認するところから始めてみてください。この一手間が、老後の家計管理の解像度を大きく上げてくれるはずです。