遺産分割前の相続預金の払戻し制度も利用できる
相続手続きに必要な書類を揃えるのに時間がかかる場合などは、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を活用するのもひとつの方法です。
この制度は、遺産分割協議が完了していない段階でも、相続人が単独で一定額まで払い戻しを受けられる制度です。払い戻せる上限額は「相続開始時の預貯金残高 × 1/3 × 払戻しを求める相続人の法定相続分」で計算され、同一金融機関からの払い戻しは150万円が上限となっています。
葬儀代や入院費用など急いで資金を調達したい場合は、こうした制度を活用することも検討してみましょう。
元銀行員が提案してきた当座の費用の準備方法
先述の通り、筆者は銀行員時代、多くの相続手続きを受け付けてきましたが、中でも特に多かったのが「親が亡くなったあとの当座の資金の工面に苦労している」という声です。相続手続きは一定の時間を要することから、葬儀費用や入院費などの当座の費用は生前から準備しておくことが何より大切です。
たとえば、生命保険で必要なお金を遺しておくのもひとつの方法です。生命保険の死亡保険金は、受取人を指定しておくことで相続財産とは別に「受取人固有の財産」として扱われます。
保険会社への請求手続きだけで受け取れるため、預金に比べて当座の費用に充てやすいことも特徴です。
また、生前贈与で先に必要な資金を渡しておく方法もあります。贈与には年間110万円の基礎控除がありますので、その控除を活用しながら生きているうちに当座の資金を準備しておく方法です。
定期贈与と判断されるリスクに注意
ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、税務署から「あらかじめ総額が決まっていた贈与を分割して行った」と判断され、まとめて贈与税が課される「定期贈与」とみなされるリスクがあります。
そうしたリスクを抑えるためには、「毎年同じ時期、同じ金額で贈与しない」「贈与のたびに契約書を作成する」といった対策を講じておくことが大切です。くわしくは、最寄りの税務署や税理士へ相談することをおすすめします。
今年のお盆は家族で相続について話し合ってみよう
今回は、親が亡くなった後の預金の取り扱い方と、当座の資金を準備するための事前の対策方法について解説しました。口座凍結前にATMで出金する行為は思わぬ相続トラブルに発展する可能性があるため控え、遺産分割前の払戻し制度などを正しく活用することが大切です。
相続に関する話し合いは、親が元気なうちだからこそできるもの。体調を崩して入院したり、手術を控えていたりするタイミングでは、なかなかお金の話を切り出すことも難しくなります。
相続手続きには一定の時間がかかるため、生命保険や生前贈与などを活用してあらかじめ葬儀費用などを準備しておくことをおすすめします。
《監修者コメント》
現役FPとして日々お客様とお話しするなかでも、「親に万が一のことがあった時の当面のお金をどうすべきか」といったご相談は意外と多く寄せられます。
親の介護や相続に関するお金の話題はデリケートで切り出しにくいものですが、直前になって慌てないためにも事前の情報共有が欠かせません。夏休みやお盆など、ご家族が顔を合わせるこの機会に、ぜひ一度将来のお金についてお話しされてみてはいかがでしょうか。
参考資料
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大学卒業後、銀行に10年間勤務。個人・法人営業として投資信託や保険等の提案・販売に従事。現在はその経験を活かし、金融専門ライターとして活動中。2級FP技能士など保有。
元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
