この記事はここがポイント
- 国民民主党が2026年7月10日「国債NISA法案」を提出、NISA非課税化を巡る議論。
- 2026年6月募集の個人向け国債発行額は10年前比約3.1倍の6572億円に急増。
- 2026年7月募集の個人向け国債は固定5年1.95%、変動10年1.80%で5年が10年を上回る金利逆転。
筆者は元銀行員として、マイナス金利政策が導入された2016年以降、窓口で個人向け国債の相談がほとんど途絶えていった様子を肌で感じてきました。それから10年、現在の個人向け国債の需要はどのように変化しているのでしょうか。
長期にわたる低金利の時代を経て、足元では金利環境の大きな転換期を迎えています。それに伴い、改めて個人向け国債を投資先のひとつとして検討する人が増えています。
ここでは、2026年7月募集分の最新情報や今後の動向についてくわしく解説します。
元銀行員が見た個人向け国債の変遷
筆者が銀行員として金融商品の営業を行っていた頃、個人向け国債はシニア層を中心に一定の人気がある商品でした。ところが、日本銀行がマイナス金利政策を導入した2016年以降は状況が一変しました。
金利は最低保証の水準まで低下し、固定3年・固定5年・変動10年のいずれも金利が0.05%という募集月も珍しくありませんでした。
こうした状況から、これまで国債の購入を続けてきたお客さまでさえも「ほとんど金利がつかないなら預金でいい」とおっしゃられるようになったのです。
たしかに個人向け国債は「安全性を重視しながら利回りを得たい」という方に需要のある金融商品ですので、「金利がつかないなら魅力がない」と感じるのは当然といえます。
では、長らく続いた低金利政策から転換期を迎えている現在、個人向け国債はどのように変化しているのでしょうか。次の章で紹介していきましょう。
2026年7月募集分の個人向け国債
2026年7月募集分の個人向け国債の利率(税引前)は次のとおりです。
- 固定3年:1.56%
- 固定5年:1.95%
- 変動10年:1.80%
2026年7月募集分の個人向け国債
今月募集分では固定5年の金利が最も高くなっており、2%近い水準となっています。
通常、債券では満期までの期間が長いほど金利が高くなる傾向にありますが、直近の個人向け国債では固定5年と変動10年の金利の逆転現象が起きています。これは、適用金利を決定する仕組みが関係しています。
変動10年は「10年固定利付国債」、固定5年は「期間5年の固定利付国債」をもとに基準金利を算出し、それにより個人向け国債の利率を決定します。
足元では5年国債利回りが10年国債利回りを上回る局面となっていることから、個人向け国債でも固定5年が変動10年の金利を上回る状況が続いています。
なお、個人向け国債は毎月募集されており、7月分は7月6日~7月31日の間に取扱金融機関で購入することができます。
前回で最も発行額が多かったのは固定5年
財務省のデータによると、2026年6月募集分の発行額は次のとおりです。
- 固定3年:914億円
- 固定5年:2962億円
- 変動10年:2687億円
- 合計:6572億円
前回も固定5年の金利が最も高かったことから、発行額も固定5年が一番多い結果となりました。
ちなみに、マイナス金利政策がスタートして間もない2016年6月の発行額と比較してみると、状況の変化の大きさがよく分かります。
2016年6月募集分の個人向け国債の発行額は次のとおりです。
- 固定3年:314億円
- 固定5年:555億円
- 変動10年:1235億円
- 合計:2104億円
2026年6月募集分の発行額は合計6572億円ですので、10年前の約3.1倍にのぼる計算です。このことからも、マイナス金利政策解除による金利上昇に伴い、個人向け国債の注目度が高まっていることが分かるでしょう。
個人向け国債はNISAで買える?
個人向け国債を検討する方の中には、「NISA制度を活用したい」と考えている方もいるかもしれません。しかし、個人向け国債はNISAの対象外となっています。
購入にあたっては、取扱金融機関で専用の口座を開設して手続きを行う必要があります。
ただし、日本国債を対象とする投資信託やETFに投資する方法であれば、NISAを活用することができます。
とはいえ、投資信託やETFは個人向け国債のような元本保証がなく、価格変動によって元本を下回ることもあります。また、利率があらかじめ定まっていないため、受取額が変動する点には注意が必要です。
個人向け国債をNISAの対象にする議論も行われている
こうした状況を受けて、与野党内では個人向け国債の購入を促進する動きが出てきています。国民民主党は、「国債NISA法案」を2026年7月10日に提出しました。
この法案では、個人向け国債をNISA制度の非課税対象に追加することが挙げられています。また、相続税の非課税化についても盛り込まれているようです。
国債NISA法案
現時点では議論の段階ではありますが、これが実現したら税制優遇を受けながら個人向け国債に投資できるメリットがあります。
今後、どのように議論が展開されていくか、そのゆくえを注視しておきましょう。
個人向け国債の最新金利をチェックして、資産の置き場を見直してみよう
かつてマイナス金利の時代に存在感を失っていた個人向け国債が、金利政策の転換とともに再び選択肢のひとつとして注目されています。個人向け国債は元本保証があり、1万円から購入できるという特徴から安全性を重視する層を中心に支持されてきた商品です。
今後、NISAの議論が進み税制優遇が加わるようなことになれば、これまでシニア層に偏っていた購入層が若い世代にも広がっていく可能性は十分にあります。まずは、自分の運用目的や資金の性格に合わせて検討してみるとよいでしょう。
元マネースクール講師の監修者コメント
金利が上昇傾向にある現在の環境下において、元本割れリスクのない個人向け国債は、資産の安全な「守りの要」として非常に魅力的な選択肢となっています。今後もし「国債NISA」が実現すれば、投資初心者からシニア層までより幅広い世代にとって身近な資産運用ツールとなるため、法案の行方や金利動向にはぜひ注目しておきたいですね。
参考資料
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大学卒業後、銀行に10年間勤務。個人・法人営業として投資信託や保険等の提案・販売に従事。現在はその経験を活かし、金融専門ライターとして活動中。2級FP技能士など保有。
PROFILE
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、1種外務員資格、内部管理責任者保有。立命館アジア太平洋大学卒業後、入行した銀行で10年間勤務。個人・法人営業として投資信託、保険、仕組債、外貨預金等の提案・販売を務める。現在は銀行での経験を活かし、金融専門ライターとして活動中。兵庫県出身。
元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO&ファイナンス編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
