この記事はここがポイント
- 厚生年金の平均月額は約15万円。男女で6万円近い差があり、個人差も非常に大きい
- 50代以降から自分の努力だけで年金額を大幅に増やすのは、制度上の限界がある
- 公的年金を「生活のベース」と割り切り、iDeCo・新NISA・固定費削減・就労継続を組み合わせるのが現実的
定年退職が近づくと、「自分の年金はいくらもらえるのだろう」と気になり始める方が多いのではないでしょうか。
銀行員時代、窓口で多くの方のライフプランを伺ってきましたが、「現役時代の給与」と「将来もらえる年金額」の差に戸惑う方は少なくありませんでした。
会社員として真面目に勤め上げてきても、年金だけで今の生活水準を維持するのは簡単ではないと感じたものです。
日本の公的年金制度は、個人の努力だけで受給額を大幅に引き上げるのが難しい仕組みになっています。
この記事では、厚生年金の平均額の現実や男女差の背景を整理しながら、公的年金に頼り切らずに老後の安心を確保するための現実的なアプローチをお伝えします。
厚生年金の平均額は月額15万289円、男女差・個人差も…
まず、実際の受給額の全体像から確認しておきましょう。
厚生労働省の統計データによると、厚生年金(第1号)受給者の平均月額は全体で15万289円となっています。
一見すると「夫婦ふたりなら暮らしていけるのでは」と思えるかもしれませんが、内訳を細かく見ると大きな偏りがあります。
厚生年金保険 月額階級別受給権者数
- 全体の平均年金月額:15万289円
- 男性の平均年金月額:16万9967円
- 女性の平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
男女別の平均受給額を見ると、男性は月額16万9967円であるのに対し、女性は11万1413円にとどまっています。
厚生年金の額は「加入期間」と「現役時代の報酬」によって計算されます。
現在のシニア世代が働いていた時代は、男性が長年正社員としてフルタイムで働き、女性は結婚・出産を機に離職したり扶養内でパート勤務を続けたりするケースが多く、そうした働き方の違いが受給額の男女差としてそのまま表れているのです。
また、平均額はあくまで全体を慣らした数値であり、個人差は非常に大きくなります。
途中に自営業・フリーランスの期間があった方や、転職・離職が長かった方は、平均額を大幅に下回ることも珍しくありません。
厚生年金に加入して働いた期間があるかどうか、そしてその間の収入はどれくらいか。老後に受けとる年金受給額は、現役時代のこうしたライフスタイルやワークスタイルが反映される仕組みです。
老後、実際に受けとれる正確な年金額は受給開始が近づくまでわかりませんが、目安の金額は「ねんきん定期便」で確認できます。
年に1度、誕生月に届くこの通知を、ご自身の将来や資産形成を考えるきっかけにしてみてください。
なぜ自分の努力だけで厚生年金を大幅に増やすのは難しいのか
「年金額が足りないなら、今から頑張って増やせばいいのでは」
ただ、制度の仕組みを知ると、50代以降から年金額を増やすには現実的な限界があることが見えてきます。
厚生年金を増やす主な方法は「給与を上げる」か「加入期間を延ばす(長く働く)」の2つです。
しかし、50代以降に年収を大幅に引き上げることは、一般的な職場環境では容易ではありません。
また、60歳以降に再雇用制度で働く場合、現役時代より給与水準が下がることが一般的です。
仮に60〜65歳の5年間、月収20万円で厚生年金に加入し続けたとしても、将来の増額は年間約13万円程度(月換算で1万円強)にとどまります。
老後の貴重な収入源にはなりますが、これだけで老後資金の不安を根本的に解消するのは難しいでしょう。
公的年金は過去数十年の積み重ねで金額が決まる仕組みである以上、「公的年金だけで老後をカバーする」という発想自体を見直す必要があるかもしれません。
【筆者からのアドバイス】老後資金をつくる4つの現実的な方法
公的年金を「生活のベース」と割り切り、それ以外の手段で上乗せをつくっていく発想が、より現実的で効果的ではないでしょうか。
銀行員時代の経験も踏まえ、安全面と効率性のバランスが取れた4つの方法をご紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で「節税しながら作るじぶん年金」
iDeCoの最大の強みは、運用益の非課税だけでなく、「掛金が全額所得控除になる」こと。
積立中から毎年の所得税・住民税が軽減されるため、運用の不確実なリターンを待つ前に、確実な節税メリットが得られます。
窓口でこの仕組みをご説明すると、「もっと早く知っておけばよかった」とおっしゃるお客様が多くいらっしゃいました。
新NISAで「資産からのキャッシュフロー」をつくる
老後資金は「〇〇〇万円貯める」という総額よりも、「毎月入ってくるお金(キャッシュフロー)を増やす」という視点で考えると取り組みやすくなります。
インデックスファンドへの長期積立や、高配当株ファンドの活用などで、公的年金に毎月数万円を上乗せする感覚で準備を進めることができます。
固定費の見直しという「逆発想の年金づくり」
資産形成と聞くと「お金を増やすこと」にばかり目がいきがちですが、現役時代のご相談でまず取り組んでいただいていたのが「支出の最適化」でした。
通信費・保険料・不要なサブスクなどを見直し、月2万円の支出削減に成功すれば、それは「年金を毎月2万円増やすこと」と同じ経済効果になります。
しかも税金がかからないため、手取りとしての価値はそれ以上かもしれません。
65歳以降の「無理のない就労」で資産の寿命を延ばす
完全にリタイアするのではなく、週に数日・無理のないペースで働き続けることも立派な収入源になります。
月5万円でも年間60万円、65〜70歳の5年間で300万円になります。
その分だけ貯蓄を取り崩す時期を後ろに倒すことができ、「体力を削って稼ぐ」のではなく、「社会との繋がりを保ちながら資産の寿命を延ばす」という意識が大切です。
まとめ
厚生年金の平均額は約15万円ですが、これは過去の働き方の積み重ねによるもの。
50代以降から急激に増やすことは、制度の仕組み上難しいのが実情です。
だからこそ、公的年金はあくまで「生活の土台」と捉え、不足分は自分でコントロールできる手段で補うという発想の転換が、老後の安心への近道だと感じています。
iDeCoや新NISA、固定費の削減、65歳以降のゆるやかな就労…どれか一つで完結する必要はなく、自分の状況に合った方法を組み合わせることで、選択肢は意外と広がります。
多くの方の老後資金計画に携わってきた経験から言えるのは、「早く行動を起こした人ほど選択肢が増える」ということです。まずはねんきん定期便で自分の年金見込み額を確認するところから、始めてみませんか。
参考資料
関連タグ
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。社内表彰歴多数。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。現在は、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、および専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて、企画・執筆・編集・監修を幅広く担当している。
金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、NISAや投資信託をはじめとするファイナンス領域を主軸に、その土台となる年金制度や社会保障、住宅ローン、相続まで横断的に分かりやすく解説。
