この記事はここがポイント
- iDeCoの最大の強みは、掛金所得控除、運用益非課税、受取時控除の3つの税優遇である。
- 30歳から月2万円を30年拠出で、累計133.4万円の節税効果がある。
- 退職所得控除は拠出期間に比例し、60歳台前半の年金受取は65歳以上より控除が不利となる。
iDeCo(イデコ)を運営する国民年金基金連合会は2026年7月、2026年5月時点の加入者数が398万人になったと発表しました。前年同月比8.5%増と増勢が続いており、関心の高さがうかがえます。
筆者は2016年からiDeCoを開始しました。
ブレクジットやコロナショックなどの危機に見舞われたものの、現在では掛金は2.3倍に膨らみ、運用資産は1000万円を突破しています。
著者のiDeCo資産状況
もっとも、iDeCoは商品数やスイッチングなどに制限があり、運用に優れる制度というわけではありません。iDeCoの強みは、「高い節税効果」です。
今回はiDeCoが持つ「3つの税優遇」に焦点を当て、実力に迫りましょう。また、公式サイトを使ったシミュレーションも紹介します。
iDeCoの「トリプル税優遇」とは?拠出・運用・受取で3つのメリット
iDeCoは掛金の拠出、拠出金の運用、老後に受け取りという流れで進みます。iDeCoには、この3つの段階すべてで税制上の優遇を受けられます。
まずは、それぞれの概要を押さえましょう。
【メリット①給与の節税】掛金の全額が所得控除で手取り増加
iDeCoの代表的な節税メリットが所得控除です。税金計算の基礎となる所得金額から一定額を差し引く仕組みで、給与などの手取りを増やす効果があります。
iDeCoの場合、掛金の全額が所得控除の対象です。例えば毎月2万円を拠出すると、所得控除の額は年間24万円となります。所得税と住民税の税率が合わせて20%なら、年4.8万円の節税につながります。
【メリット②運用益の非課税】通常より利益が25%増える
iDeCoは非課税で運用できるメリットもあります。拠出した金額は投資信託などで運用しますが、投資信託は通常、利益から約2割の税金が差し引かれます。例えば運用で10万円の利益を得た場合、約8万円が手取りです。
一方、iDeCoは非課税のため額面がそのまま手取りとなり、通常と比べると利益は実質的に約25%増加します。
【メリット③受取の優遇】「退職所得控除」か「公的年金等控除」の対象
iDeCoは原則として60歳以降に受け取ることができますが、受取時にも税制上の優遇が用意されています。
iDeCoの受け取り方には一時金(一括)と年金(分割)の2つがあります。一時金の場合は「退職所得控除」の、年金の場合は「公的年金等控除」の対象となり、それぞれ一定の控除を受けられるため、税負担が抑えられることがメリットです。
iDeCo「トリプル税優遇」シミュレーション!どれだけお得になる?
iDeCoの税制上のメリットがどの程度となるか、国民年金基金連合会の「かんたん実感!iDeCoシミュレーション」で試算してみましょう。
シミュレーションは次の条件で行います。
- 職業:会社員
- 勤務先の企業年金:企業型DCあり、確定給付企業年金なし
- 年収:500万円
- 掛金:月2万円
- 運用利回り:3.0%
- 受け取り方:60歳で一時金
30歳から加入:累計133万円の拠出時メリット
30歳からiDeCo加入シミュレーション
- 拠出時のメリット:累計133万4000円の節税
- 運用時のメリット:運用益437万4260円、非課税額87万4852円
- 受取時のメリット:退職所得控除額1500万円、税金ゼロ
30歳から60歳まで加入するケースでは、給与などの税金を減らす拠出時のメリットは累計133万4000円となりました。
投資元本720万円に対する利益は437万4260円となり、総額は1157万4260円に達します。なお、運用益は非課税のため、87万4852円の税金が削減される格好です。
また、拠出期間が30年間のため、退職所得控除額は1500万円と、運用資産(1157万4260円)を上回ります。つまり、受取時に税金は発生せず、額面をそのまま受け取れます。
40歳から加入:20年間の拠出メリットは87万円
40歳からiDeCo加入シミュレーション
- 拠出時のメリット:累計87万8000円の節税
- 運用時のメリット:運用益173万7088円、非課税額34万7417円
- 受取時のメリット:退職所得控除額800万円、非課税で満額受け取りOK
40歳から加入する場合、拠出時のメリットは累計87万8000円です。加入期間が20年に短縮する分、30歳からのケースと比べると減少しますが、投資元本480万円に対して約18.3%の節税リターンを得られた計算で、その効果は見逃せません。
資産は運用で173万7088円増えており、運用益の非課税で34万7417円の税制メリットを得られました。総額は653万7088円となりますが、20年間の加入期間で退職所得控除額は800万円に達するため、受取時も非課税です。
50歳から加入:10年間で44万円の節税に
50歳からiDeCo加入シミュレーション
- 拠出時のメリット:累計44万1000円の節税
- 運用時のメリット:運用益38万8959円、非課税額7万9017円
- 受取時のメリット:退職所得控除額400万円、課税なし
50歳から10年間加入する場合でも、節税効果は小さくありません。拠出時のメリットは累計44万1000円で、元本240万円に対して18%超の節税リターンを得ています。
60歳時点の総額は278万8959円で、運用益は38万8959円、運用益に対する非課税額は7万9017円となりました。退職所得控除額は10年間の加入で400万円となるため、このケースでも受取時に税金は発生しません。
※本シミュレーションは一定の条件を前提にした試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。市場環境により資産が大きく減少するリスクもあり、常に右肩上がりで推移しない点に注意が必要です。 ※他に退職一時金や公的年金等がある場合、併せて受取る・受取る時期が異なる等により、税額や受取金額が異なるケースがあります。個別の税務上の取扱いや制度の適用可否については、所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。
【まとめ】iDeCoの税優遇を最大化する2つのポイント
先述のシミュレーションは、あくまで一定の前提で試算されたものです。iDeCoにおける実際の税制上のメリットは状況に応じて変動します。
iDeCoの税優遇を最大限に受けるため、最後に2つのポイントを押さえておきましょう。
拠出を止めると「退職所得控除」が増えない
iDeCoを一時金で受け取る場合に適用される退職所得控除は、拠出期間に比例して増加する仕組みです。拠出年数が20年までは1年ごとに40万円ずつ増え、20年超の部分は70万円ずつ増加します。
一方、iDeCoは加入後に拠出を止めることもできますが、止めている期間は退職所得控除が増えません。iDeCoに20年間加入していても、うち拠出期間が15年の場合、退職所得控除額は15年分で算出されるため注意しましょう。
【退職所得控除額の例】
- 加入者期間20年:800万円
- 加入者期間15年+運用指図者期間5年:600万円
※加入者…掛金を拠出する人、運用指図者…掛金を拠出せず運用のみ行う人
60~64歳の年金受取は手取りが少なくなりやすい
年金で受け取る場合の注意点は年齢です。iDeCoからの年金は公的年金等控除の対象ですが、控除額は65歳以上の方が大きくなりやすくなっています。
公的年金等控除額は、iDeCoのほか、国民年金や厚生年金といった公的年金等の収入を合算して判定されます。65歳以上の場合、収入330万円までは一律で110万円です。したがって、110万円を超えるまでは税金がかかりません。
一方、65歳未満は収入130万円までが一律60万円で、60万円を超えると徐々に減少していき、収入330万円超で65歳以上と同額になります。つまり、収入60万円超~330万円以下の部分は、65歳以上と比べ不利になりやすい仕組みです。
【収入別、65歳未満の公的年金等の所得額】
- 100万円:40万円(65歳以上:0円)
- 200万円:122.5万円(同90万円)
- 300万円:197.5万円(同190万円)
※公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得金額が1000万円以下の場合
公的年金等控除額の例
このほかにも税金に関するポイントはいくつもあります。せっかくのiDeCoで損してしまわないよう、日々の情報収集を心がけておきたいところです。
iDeCoは「拠出・運用・受取」の3段階で税制優遇を受けられる、節税効果に非常に優れた資産形成手段です。
一方で、受取時の税負担は退職金や公的年金の受給額によって変わるため、加入時だけでなく早い段階から受取方法や時期(出口戦略)まで見据えて計画的に活用しましょう。
参考資料
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証券会社を経てIFAとして10年以上活動。個人へ投資提案を行う傍ら、金融ライターとしてNISA等の資産運用から社会保障まで幅広く執筆。現在は大型株を中心に年100本ペースで連載。AFP等保有。
PROFILE
金融商品仲介業(IFA)/証券外務員資格(証券外務員一種)/資産形成コンサルタント(日本証券アナリスト協会)/AFP(日本FP協会)保有。証券会社からIFAに転じ、IFAとして10年以上活動。個人向けに個別株式、投資信託の提案を行う。
コロナ禍を機に金融ライターとしても活動を開始。NISAやiDeCoを含む資産運用のほか、公的保険などの社会保障や税制、クレジットカードなど、幅広い金融ジャンルで執筆。現在は主に大型株を中心に上場企業の記事を年100本ペースで連載。
日本生命出身で生命保険・損害保険の実務に長年従事。CFP®・FP1級を保有。現在はLIMO編集部にて官公庁の一次情報を基にした信頼性の高い記事を執筆・監修。J-FLEC認定アドバイザーとしても活動。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
