この記事はここがポイント
- 年金受給額は現役時代の働き方で大きな差、早期の受給見込み確認と資金計画が肝要。
- 日本のシニア約4割が就労を希望、他国の7割以上が引退を望むのと対照的な高い就労意欲が特徴。
- 日本の65歳以上生活満足度は約8割だが、他国と比較すると最も低い水準、この現状。
ファイナンシャルプランナーとして数多くの資産相談を承る中で、「自分の年金は平均と比べて多いのか、少ないのか」という不安の声をよく耳にします。実際に「ねんきん定期便」を見て、想像以上に少ない受給見込額に慌てて相談に来られるケースも決して少なくありません。
日本の公的年金制度は、1階部分の「国民年金」と2階部分の「厚生年金」で構成される「2階建て構造」となっています。
厚生年金は現役時代の収入(報酬)や加入期間によって将来の年金額が変動します。これまでの働き方が老後の受給額に直結するため、同じような年齢であっても個人差が大きく現れるのです。今回は、最新データを基に厚生年金のリアルな受給状況を紐解き、これからの老後資金計画の立て方について解説します。
厚生年金「月15万円以上」は全体の何パーセント?
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均受給月額は、男女合計で15万289円です。
公的年金は、原則として偶数月に2カ月分がまとめて支給されます。そのため、1回の支給日には約30万円が指定口座に振り込まれることになります。それでは、一つの目安となる「月額15万円以上」、つまり1回の支給で約30万円以上を受け取っている人は、全体のどのくらいの割合を占めるのでしょうか。
※下記の厚生年金の年金月額には国民年金(老齢基礎年金)部分を含みます。
厚生年金の年金月額分布
男女別に平均月額を見ると、男性は16万9967円、女性は11万1413円と差があります。この背景には、現役時代の雇用形態や勤続年数といった、それぞれのライフステージにおける働き方の違いが影響していると考えられます。
実際に、月額15万円以上を受給している人の割合は、男性が68.8%であるのに対し、女性は12.3%と低い水準です。
このように、将来の年金額は現役時代の収入や加入期間に大きく左右されるため、個人差が生まれやすいのが実情です。現実的な老後の生活設計のためにも、まずは「ねんきん定期便」などを活用して自身の受給見込み額を把握し、早期に資金計画を立てることが重要といえるでしょう。
65歳以上の生活満足度「日本は約8割」でも他の国と比べるとどうなる?
内閣府が公表した「令和8年版高齢社会白書」の国際比較調査からは、日本の高齢者における生活の実態や意識の特色がうかがえます。先ほど確認した厚生年金の平均受給月額とあわせて、今後のシニアライフの過ごし方や選択肢を考える上で参考になるデータを見ていきましょう。
生活満足度は約8割と高いものの、4カ国中では最も低い水準に
現在の生活に満足しているか
「現在の生活に満足していますか」という質問に対して、日本の65歳以上のシニア層の約8割(79.2%)が「満足」または「まあ満足」と答えました。
この数値だけを見ると高いように感じられますが、調査対象となった他の国々と比較すると、違った一面が見えてきます。
- 日本: 79.2%
- ドイツ:88.5%
- アメリカ:93.6%
- スウェーデン:96.6%
この結果から、日本の高齢者の生活満足度は、調査対象の4カ国のうちで最も低い水準にあることがわかります。
日本の特徴?シニアの約4割が「仕事を続けたい」と回答し高い就労意欲を示す
収入を伴う仕事をしたい(続けたい)と思うか
一方で、「収入のある仕事をしたい(続けたい)と思いますか」という就労意欲に関する質問では、日本ならではの傾向が見られました。
- 日本:約4割(39.0%)が「仕事をしたい(続けたい)」と回答
- アメリカ、ドイツ、スウェーデン:3カ国ともに7割以上が「収入を伴う仕事をしたくない(辞めたい)」と回答
比較対象のアメリカ、ドイツ、スウェーデンでは、引退後の生活を大切にする考え方が主流であるのに対し、日本では就労に対する意欲が高いことがうかがえます。この調査からは、日本のシニア層は他国に比べて生活満足度が少し低いものの、働くことへの意欲は高いという特徴が浮かび上がりました。
これは、平均的な厚生年金を受け取りつつも、家計の足しにしたり、社会との接点を持ち続けたりするために「働き続けたい」と考える日本の高齢者の姿を反映しているのかもしれません。今後のシニアライフでは、年金を生活の基盤としながら、自分らしい働き方をどのようにライフプランに盛り込んでいくかが、生活の質(QOL)を維持する鍵となりそうです。
まとめ
日本の公的年金制度では、現役時代の働き方によって受給額に大きな差が生じ、平均月額である15万円に満たない人が半数近くを占めるのが実情です。その一方で、近年の調査では、日本のシニア層が他国と比較して高い就労意欲を持っていることも明らかになりました。年金は老後の生活を支える重要な基盤ですが、それだけでは安心できない場合も多いでしょう。
早い時期から「ねんきん定期便」などを通じて自身の将来の受給見込み額を確認し、具体的な資金計画を立てることが大切です。年金を生活の土台としながら、働くことで得られる収入や社会との関わりを、ご自身のライフプランにうまく取り入れてみてはいかがでしょうか。
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日本生命出身で生命保険・損害保険の実務に長年従事。CFP®・FP1級を保有。現在はLIMO編集部にて官公庁の一次情報を基にした信頼性の高い記事を執筆・監修。J-FLEC認定アドバイザーとしても活動。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
