この記事はここがポイント
- キャッシュレス決済を悪用した銀行口座からの不正出金、未利用でも被害に遭う危険性。
- 令和8年度年金額改定に便乗した日本年金機構を装う偽メール・SMSによる口座情報詐取の手口。
- 令和8年度の年金額は国民年金・厚生年金が約2%、年金生活者支援給付金が3.2%の増額。
来月8月は今年4回目となる年金支給日を迎えます。6月の支給額より改定された年金ですが、増額は嬉しい反面、この時期に必ずと言っていいほど増える、このタイミングを狙った詐欺の増加です。日本年金機構を装い、皆様の大切な口座情報を盗み取ろうとする手口が横行しており、機構の公式サイトでも緊急の注意喚起が行われています。
本記事では、令和8年度における年金額の目安をお伝えするとともに、老後資金を狙う悪質な犯罪から身を守るための具体的な対策について、FP目線で分かりやすく解説いたします。
【65歳からの年金】夫婦2人分「23万7279円」←対前年度プラス「4000円以上」増額
法令に基づき、令和8年(2026年)4月分(6月15日支払い分)より年金額がアップします。令和7年度と比較すると、国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなる見通しです。
以下は、昭和31年4月2日以降に生まれた方(新規裁定者)をモデルとした、令和8年度の年金額(月額)の目安です。
年金種類ごと《令和8年度》額面(月額)
令和8年度の年金額の例(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)
- 国民年金(老齢基礎年金 満額):7万608円
- 厚生年金(標準的な夫婦2人分※):23万7279円
※夫が平均的収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間就業し、妻がその期間専業主婦であった世帯。 ※昭和31年4月1日以前生まれの方(既裁定者)は、スライド率が異なる場合があります。
年金生活者支援給付金も「3.2%」の増額改定へ
年金生活者支援給付金の給付基準額
年金額の引き上げに伴い、年金生活者支援給付金の基準額も物価変動を反映して改定が行われます。令和8年度は、前年度比で3.2%の増額となる予定です。実際の支給額はこれまでの保険料納付期間などによって個人差がありますが、日々の生活を支える心強いサポートになるはずです。
【65歳以上がターゲットに】日本年金機構を装う偽メール・SMSの巧妙な手口
年金額改定といった「公的な制度変更のニュース」は、詐欺グループにとって絶好の口実となります。現在、次のような悪質な手口が報告されています。
「年金の残金がある」と口座番号を聞き出す
架空の部署名を騙り、年金の残金を振り込む名目で「払い戻し手続き」を装って銀行情報を入力させようとします。
「年金保険料の未納」を理由に送金を迫る
不審なメールの一例
「差し押さえ」などの強い言葉で不安を煽り、キャッシュレス決済での送金を誘導します。
ここで覚えておきたいのは、日本年金機構がメールやSMSを利用して口座番号を聞き出したり、支払いを要求したりすることは「絶対にあり得ない」という事実です。身に覚えのないメッセージや、URLリンクが貼られた不審な通知には、アクセスしないよう気を付けてください。
キャッシュレス決済を悪用した「銀行口座からの不正出金」に警戒を
今、警察庁等が最も警鐘を鳴らしているのが「キャッシュレス決済サービスを通じた不正な出金」です。
金融庁と関係機関が連携した注意喚起について
これは、犯人が不正に入手した口座情報をもとに、本人になりすまして決済アカウントを開設し、銀行口座から預金を勝手に引き出す手口です。「自分はスマホ決済なんて使っていないから関係ない」と思っている方でも、口座さえ持っていれば被害に遭う可能性があるため、非常に危険です。
まとめにかえて
2026年度(令和8年度)の年金や支援給付金の引き上げは、物価高に悩む家計にとって明るい材料です。しかし、制度が変わりお金が動くタイミングには、必ずと言っていいほど詐欺などの犯罪リスクが高まります。
前述の通り、「自分はキャッシュレス決済を使っていない」というシニア世代の方でも、銀行預金が不正に引き出される被害が実際に起きています。ご自身の大切な老後資金を守り抜くためには、不審なメールやSMSはキッパリと無視すること。そして、定期的に通帳を記帳し、「身に覚えのない引き落としがないか」をチェックすることが、最も確実で効果的な防犯対策となります。
もし不正な引き出しに気づいた場合は、速やかに金融機関へ相談することで全額補償を受けられる仕組みも整っています。日頃からお金の動きに関心を持ち、自衛の意識を高めることで、安心で豊かなセカンドライフを歩んでいきましょう。
参考資料
関連タグ
日本生命出身で生命保険・損害保険の実務に長年従事。CFP®・FP1級を保有。現在はLIMO編集部にて官公庁の一次情報を基にした信頼性の高い記事を執筆・監修。J-FLEC認定アドバイザーとしても活動。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
