なぜこの反応に? FRBの金利政策との関係
前回の記事でお伝えしたように、中央銀行は物価と景気のバランスを取るために政策金利を上げ下げします。物価が上がりすぎれば金利を上げて物価上昇にブレーキをかけ、景気が心配なら金利を下げて景気のアクセルを踏みます。
いまの局面でカギになるのは、直前まで物価高が再加速していたことです。イラン問題もあり、CPIの前年同月比は3月~4月はプラス幅が拡大傾向にありました。また、新しくFRB議長に就任したウォーシュ氏が物価高抑制に積極的に働きかけると発言していたこともあり、市場はFRBが再び利上げに動くのではないかと身構えていました。
そのような市場警戒のもと予想より弱いCPIが発表されたため、FRBによる短期的な利上げ観測は後退し、金利が下がり、株が買われ、ドルが売られたという典型的な反応となりました。
インフレ継続と長期的視点
ここで一つ、冷静に押さえておきたい点があります。前月比はマイナスでも、前年同月比は依然プラス3.5%であり、1年前より物価が高いというインフレの状態は続いているということです。短期的には市場の予測より弱い結果が出たことで、市場は短期的な利上げ回避を織り込んで発表直後は金利高、株高、ドル安に動きましたが、その後の継続は弱い状況でした。6月の結果だけでは、インフレが収まり長期的な利上げの必要がなくなったとは判断できなかったからです。
短期的には、市場は今回のように「実際の数字と事前予想とのズレ」に反応しますが、長期の目線では、上昇率が鈍っても物価が上がり続けること自体が、家計や景気にどう効いてくるかを考える必要があります。また、物価安定に対してFRBの強いコミットメントがある限り、市場の予測とのずれよりも長期的に物価が上昇し続けているという状態に対して将来の利上げの懸念は払拭しきれません。このように、短期的な反応だけでなく、長期的なマクロの状況を判断していくことが今後はより重要になりそうです。
今後の注目点
まず7月31日のFOMCでFRBの政策金利がどのようになるか、そして8月12日に発表される7月のCPIの動向が注目されます。物価の鈍化が一時的なエネルギー安によるものなのか、それとも基調として続くのか、原油や地政学リスクの動向もあわせて、引き続き世界が注目します。
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京都大学院修了後、シティグループやフィデリティで証券アナリスト、Googleで営業統括部長を歴任。現在は株式会社モニクル執行役員およびカッパ・クリエイト社外取締役。金融・IT・マーケティングの専門家。
PROFILE
京都大学文学部を卒業後、京都大学大学院文学研究科修士課程修了を経て、シティグループ証券、フィデリティ投信にて証券アナリストとして勤務。証券アナリスト時代はヘルスケア、小売、金融、半導体製造装置、テクノロジーなど様々な業界の産業分析、企業分析を担当。その後、Googleの広告営業部にてインダストリーアナリストとして営業チームの営業戦略立案やEコマース業界や旅行業界の顧客へのデジタルマーケティング提案に従事し、金融業界や消費財、化粧品、ラグジュアリー業界担当の営業チームの統括部長を歴任。2024年4月に、株式会社モニクルに参画し、同社執行役員 経営企画室長に就任。 モニクル総研では、金融業界でアナリストとして様々な産業分析、財務分析をしてきた経験、テクノロジー業界での実務経験、経営企画領域の担当経験や社外取締役の経験を元に、金融、投資、テクノロジー、コーポレート領域を中心にレポートを執筆。 カッパ・クリエイト株式会社 社外取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。
