2026年度の年金は国民年金が+1.9%、厚生年金が+2.0%と引き上げられ、すでに6月支給分から新しい金額での振り込みが始まっています。
しかし物価高が続くなか、「少し増えても老後の生活は大丈夫?」と不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
金融メディアの編集記者として日々厚労省や内閣府の一次データを追う筆者も、その切実な声に深く共感する一人です。
特に女性のキャリアは、出産・育児や家族の介護など、時期によってライフワークバランスを大きく見直し、働き方の選択に迫られることが少なくありません。
筆者自身も、そうしたライフイベントと仕事の両立に向き合い、「会社員→フリーランス→会社員」と働き方を模索してきた過去があります。その過程で、社会人になってからの「学び直し」が、キャリアの再構築や経済的な安心感にいかに大きな意味を持つかを身をもって痛感してきました。
現在の年金平均受給額は厚生年金が約15万円、国民年金が約5.9万円と、歩んできたライフスタイルによって将来の受給額に大きな差が生じます。
本記事では、ご自身の状況に近い年金額の目安がわかるよう「5つの働き方パターン」からリアルな受給額をシミュレーション。
さらに「令和8年版 男女共同参画白書」の最新データから、将来の年金不安を和らげる確実なカギとなる女性の「学び直し」の現状と、老後の備え方のヒントを紐解きます。
2026年度の年金額改定!国民年金・厚生年金はいくら増えた?
公的年金の受給額は、毎年の物価や賃金の変動に応じて改定されます。2026年度もこの見直しが行われ、4年連続での増額が決定しました。
厚生労働省が2026年1月23日に公表した改定率は以下の通りです。
- 厚生年金(報酬比例部分): +2.0% の増額
- 国民年金(老齢基礎年金): +1.9% の増額
この新しい年金額は2026年4月分から適用となり、実際に支給額に反映されるのは6月15日の支給分からとなっています。
モデルケースで見る年金受給額の月額は?
令和8年(2026年)度の年金額例
- 国民年金(満額): 月額 7万608円(前年度比 +1300円)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方は月額7万408円です。
- 厚生年金(夫婦2人の標準モデル): 月額 23万7279円(前年度比 +4495円)
※2 夫が平均的な収入(賞与込みで月額換算45万5000円)で40年間就業し、妻がその期間専業主婦だったケースを想定しています。
月額23万円以上と聞くと、老後の生活に安心感を覚えるかもしれません。しかし、この金額はあくまで標準的な世帯を想定したモデルケースに過ぎません。
現代では共働き世帯や単身世帯、自営業者など働き方が多様化しており、実際の受給額は一人ひとり大きく異なります。モデルケースの金額だけで自身の老後資金を判断するのは、少し早いといえるでしょう。
次の章では、より現実に近い働き方別の受給額を見ていきます。
【働き方別】年金受給額の目安は?5つのライフコースで比較
働き方が多様化する現代において、「自分が将来受け取れる年金は一体いくらなのだろう」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省は、今回の年金改定に合わせて「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」を公表しました。これは、さまざまな働き方を想定した現実的な試算であり、ご自身の状況を考える上で参考になるデータです。
ここでは、2026年度に65歳になる方をモデルに、加入歴や働き方の違いが受給額にどの程度影響を与えるのかを確認していきます。
ご自身のキャリアに近いモデルがあるか、ぜひチェックしてみてください。
多様なライフコースに応じた年金額
試算例1:厚生年金が中心の会社員男性
- 想定:平均年収 約610万円(月額換算50万9000円)で40年就業
- 年金月額の目安: 17万6793円
この金額は、基礎年金約7万円と厚生年金約10万7000円の合計です。長期間にわたって厚生年金に加入していた場合、比較的安定した受給額を期待できます。
試算例2:国民年金が中心の自営業・フリーランス男性
- 想定:厚生年金加入が短く(約7年)、国民年金期間が長い
- 年金月額の目安: 6万3513円
国民年金が中心の場合、受給額は大幅に少なくなります。この金額だけで生活を維持することは難しく、預貯金や私的年金といった自助努力が一層重要になります。
試算例3:厚生年金が中心のキャリア女性
- 想定:平均年収 約427万円(月額換算35万6000円)で33年就業
- 年金月額の目安: 13万4640円
女性の場合、就業期間や賃金水準によって受給額が変動しやすく、男性よりも低くなる傾向にあります。
試算例4:国民年金が中心の自営業などの女性
- 想定:厚生年金期間が短い(約6年)
- 年金月額の目安: 6万1771円
厚生年金への加入期間が短いと、老後の年金は国民年金が主体となり、生活設計への影響も大きくなります。
試算例5:第3号被保険者期間が長い女性
- 想定:扶養内期間が長い
- 年金月額の目安: 7万8249円
第3号被保険者期間は基礎年金のみの反映となるため、会社員として働いた期間が短いと厚生年金の上乗せが少なく、受給額は限定的になります。
働き方で変わる受給額の差
同じ期間働いたとしても、厚生年金への加入期間の長さによって、受給額に月10万円以上の差が生じることがわかります。
特に、国民年金が中心となる自営業者や、専業主婦だった期間が長いケース(試算例2・4・5)では、公的年金だけで生活費をまかなうのは厳しい状況も想定されます。老後に向けて、預貯金や資産形成など、年金以外の備えをどのように準備するかが大きな課題となります。
年金の平均受給額はいくら?統計データで見る現実
モデルケースだけでなく、実際に年金を受給している方々全体の平均額を確認することで、よりリアルな状況が見えてきます。
厚生年金の平均受給額に見る男女差と分布
厚生年金《平均月額の男女差・個人差に着目》
- 男性平均: 約17万円
- 女性平均: 約11万円
女性の平均額が男性よりも低い背景には、過去の賃金格差や、結婚・出産を機に離職したり、非正規雇用で働く期間が長かったりしたことなどが影響していると考えられます。
受給額の分布データを見ると、女性は「月8万~10万円」の層が最も多く、年金収入だけで生活を支えることの難しさがうかがえます。
国民年金の平均受給額はなぜ満額より少ないのか?
国民年金《平均月額の男女差・個人差に着目》
2024年度(令和6年度)における国民年金の満額は約6万8000円ですが、実際の平均受給額は約5万9000円となっています。
この差が生じる主な原因は、保険料の未納や免除の期間があり、満額を受け取るための加入条件を満たしていない方が少なくないためです。
女性のキャリア形成と学び直しが将来の年金を底上げする
このように、女性の年金受給額は男性と比べて低くなりやすい傾向にあります。この格差を是正し、将来の不安を和らげる鍵として注目されているのが「学び直し」によるキャリアの再構築です。
2026年7月に内閣府が公表した「令和8年版 男女共同参画白書」では、「仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し」について特集されています。
仕事や職業キャリアに関する学び直しへの意欲と経験のギャップ
同白書によると、仕事や職業キャリアに関する学び直しについて、学ぶ意欲を有する女性は33.7%に上るものの、そのうち「過去1年以内に学んでいない」人が71.5%を占めており、意欲と実際の行動に大きなギャップがあることがわかります。
仕事や職業キャリアに関する学び直しへの障壁
また、女性が学び直しに取り組む際の障壁として、
- 金銭的余裕がない:32.7%
- 学んでも収入アップにつながらない:19.3%
- 何を学んでいいか分からない:19.1%
といった理由が上位に挙げられています。男女で比較すると、「金銭的余裕がない」「何を学んでいいか分からない」ことに加え、「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」といった時間的制約が女性に重くのしかかっている現状が浮き彫りになっています。
しかし、社会の変化に対応し、長く働き続けるために、多様な学び直しに取り組むことはとても大切です。
学び直しによって専門的なスキルを身につけ、キャリアアップや収入増を実現できれば、それが経済的自立へとつながります。
結果として、厚生年金の加入期間が延びたり、報酬比例部分が増加したりして、将来の年金受給額の確実な底上げに直結するのです。
まとめにかえて
2026年度の年金額は4年連続のプラス改定となりましたが、物価高を考慮すると、公的年金だけでゆとりある生活を送るのは決して容易ではありません。
とくに女性は、ライフイベントによる離職や働き方の変化によって、厚生年金の受給額が平均11万円台、ボリュームゾーンは月10万〜11万円にとどまるなど、厳しい現実がデータから浮き彫りになっています。
老後の不安を少しでも軽減するためには、現役時代から「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自身の受給見込額を正確に把握することが第一歩です。
その上で、新NISAやiDeCoなどを活用した計画的な資産形成を進めることが求められます。
同時に、「令和8年版 男女共同参画白書」が示すように、仕事や職業キャリアに関する「学び直し」を通じて長く働き続けることも、年金額自体を増やす強力な手段です。
現在では、教育訓練給付金やオンラインでの学習プログラムなど、国や企業による支援も拡充しています。
家事や育児と両立しながら少しずつでもスキルを磨き、多様なライフスタイルに合わせた「自分らしい老後の備え」を、今から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
