2026年6月30日に株式会社帝国データバンクから公表された「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2026年7月」によると、7月の飲食料品値上げは2566品目に上り、年間で2万品目台に達するハイペースで推移しています。
このように終わりの見えない物価高が日々の生活を圧迫する中、「自分の年金だけで将来は大丈夫だろうか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
筆者は金融メディアの編集記者として、日々厚生労働省などの一次データを分析しています。
自身も50歳代となり、同世代との会話では嫌でも年金が話題に上るようになりました。
しかし若い頃は年金の仕組みを全く分かっておらず、50歳を過ぎてから「ねんきん定期便」を見てリアルな現実を突きつけられました。
年金は長年の積み重ねです。「急に厳しい現実を知らされても、いまからできることには限りがある」と身をもって痛感しています。
だからこそ、将来への備えは、まず「ご自身の『現在地』をクリアにすること」から始まります。
なぜ低年金・無年金に陥ってしまうのか、そして今からでも間に合う対策は何か、ここから一緒に確認していきましょう。
年金の基本、国民年金と厚生年金は「2階建て構造」
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。
老齢年金を受給するには、保険料納付済期間+免除期間が合計10年(120月)以上必要です。
この10年に満たない場合は「無年金」、10年以上あっても納付月数が少ない・報酬が低かった場合は「低年金」となります。
2026年度、老齢基礎年金の満額は月7万608円
令和8年度の年金額の例
- 国民年金(老齢基礎年金)満額:月7万608円
- 厚生年金モデル世帯:月23万7279円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)
この満額はあくまで「40年間まったくブランクなく納付」した場合。
国民年金の実際の平均は男性6万1595円、女性5万7582円と、いずれも満額に届いていません。
それだけ「低年金」寄りの分布になっている、というのが日本の年金の実態です。
低年金・無年金に陥る《よくある5つのケース》
ケース①:国民年金保険料の未納期間が長い
免除・猶予申請をせずに保険料を払わなかった期間は、そのまま老齢基礎年金の減額につながります。
20歳〜60歳の間に10年間未納で放置していれば、その10年分は年金にまったく反映されません。
ケース②:厚生年金への加入が短かった
自営業やフリーランス期間が長い、非正規雇用が続いた、といった方は、厚生年金の加入期間が短くなりがちです。
老齢厚生年金の報酬比例部分は加入期間で決まるため、短い分だけ受給額も少なくなります。
ケース③:現役時代の収入が低かった
厚生年金は「平均標準報酬額×加入月数×一定の乗率」で計算されます。
現役時代の給与や賞与が低かった場合、加入期間が同じでも老齢厚生年金は少額に。パートタイムでの加入だけだった方も同様です。
ケース④:受給資格期間(10年)を満たしていない
受給資格期間
納付済期間+免除期間が合計10年未満だと、老齢年金の受給資格そのものがなく「無年金」となります。
海外居住や闘病で長期間加入が途切れた方に多いパターンです。
※なお、日本国籍の方が20歳以上60歳未満の間に海外に居住していた期間は「合算対象期間(カラ期間)」として受給資格期間の10年にはカウントされますが、年金額には反映されないため低年金につながります。
ケース⑤:手続きの見落とし・情報不足
実は年金を受け取れる資格があるのに、請求手続きを行っていない・年金分割や離婚時の対応を知らなかったといった手続き上の見落としで、受け取り損ねているケースもあります。
低年金・無年金に備える「キホンの対策」
「ねんきん定期便」で自分の加入状況と見込み額を確認
50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、ウェブ上の「ねんきんネット」を活用し、将来受け取れる年金の「見込額」を把握することがすべての第一歩です。
50歳以上の方には、より実際の受給額に近い見込額が記載されています。
免除・猶予期間があれば10年以内に追納する
過去に保険料の免除や猶予(学生納付特例など)を受けていた期間がある場合、10年以内であればさかのぼって納付(追納)することができます。追納することで、減額されていた老齢基礎年金を本来の額に近づけることができます。
60〜65歳の任意加入を活用する
過去に未納期間があるなどで国民年金の加入期間が40年(480カ月)に満たない場合、60歳から65歳までの間に「任意加入」して保険料を納めることができます。
加入期間を増やすことで、年金をより満額に近づけられます。
厚生年金加入で長く働き続ける(繰下げ受給の活用も)
60歳以降も会社員やパートとして厚生年金に加入して働くことで、受給額のベースとなる加入期間を延ばすことができます。
また、原則65歳からの受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選べば、1カ月遅らせるごとに0.7%(75歳まで遅らせると最大84%)年金額を一生涯増やすことも可能です。
iDeCo・NISA・つみたて投資で自助努力
公的年金だけで物価上昇などに立ち向かうのが難しい時代です。
税制優遇が受けられる「新NISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などを活用し、ご自身の無理のない範囲でコツコツと老後資金を育てていく視点も欠かせません。
所得要件を満たせば「年金生活者支援給付金」の請求も
【2026年度】年金生活者支援給付金の金額
65歳以上で年金などの収入が一定基準額を下回る場合、年金に上乗せして「老齢年金生活者支援給付金」を受け取ることができます。
対象者には案内が届きますので、該当する場合は見落とさずに請求手続きを行いましょう。
まとめにかえて
ここまで「低年金・無年金」に陥る要因と対策を見てきました。終わりの見えない物価高が続き、日々の生活費が圧迫される中、公的年金だけで将来のインフレに立ち向かうのは容易ではありません。
私自身、50代で「ねんきん定期便」を見て現実を突きつけられ、年金が長年の積み重ねであることを痛感しました。年金の現実には早く気づけば気づくほど、老後に向けて打てる対策の選択肢が広がります。
だからこそ、まずはご自身の「現在地(見込額)」を早めに、そして正確に把握することが何より重要です。
状況に応じて、追納や60歳以降の就労延長、NISA等を活用した資産形成など、今から打てる手はいくつもあります。
一人で不安を抱え込まず、年金事務所などの専門窓口も頼りながら、未来の暮らしを守るための第一歩を踏み出してみましょう。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
