国民年金と厚生年金の平均月額はいくら?
生活の中でも個人差が出やすいのが年金です。平均的な年金月額を見てみましょう。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末現在の平均年金月額は以下の通りです。
※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。また、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)部分が含まれています。
国民年金・厚生年金の平均月額と個人差について
国民年金の月額
厚生年金月額
国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
国民年金のみなら男性が6万円台、女性が5万円台、厚生年金では男性が16万円台、女性が11万円台が平均です。厚生年金の男女差が大きいのは、現役時代の働き方や収入の違いが反映されるためです。ただし、これはあくまで平均で、実際の受給額には大きな個人差があります。ご自身の見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できますので、一度目を通しておくと安心です。
65歳以上の無職夫婦世帯が保有する平均貯蓄額はいくらか
生活費の赤字を補うのは貯蓄ですが、どれくらい保有しているのでしょうか。総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」から確認します。世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の直近2025年(令和7年)の平均貯蓄額は、2494万円でした。
世帯主が65歳以上の無職世帯における貯蓄の種類別現在高の推移
65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額
内訳もみておきましょう。
2025年時点の平均貯蓄額2494万円の内訳
- 通貨性預貯金:766万円(30.7%)
- 定期性預貯金:778万円(31.2%)
- 生命保険:426万円(17.1%)
- 有価証券:510万円(20.4%)
- 金融機関外:13万円(0.5%)
※通貨性預貯金:普通預金など入出金が自由な預貯金
※有価証券:株式、債券、株式投資信託、公社債投資信託、貸付信託、金銭信託など(いずれも時価)
※金融機関外:金融機関以外への貯蓄のことで、社内預金、勤め先の共済組合への預金など
預貯金が合わせて6割ほどを占める一方、生命保険や有価証券といった、すぐには現金にしにくい資産も4割近くにのぼります。いざというときにどれだけ動かせるお金があるか、という視点も大切になりそうです。
ゆとりある老後は簡単ではない。現役時代からしっかりと備えを
ゆとりある高齢者は少なく、普通、もしくは苦しく感じている世帯が一般的でした。平均的な老後の月の生活費も赤字となっており、それだけ早くから老後資金に備えていく必要があるでしょう。
いずれにしても、まずは「自分の年金見込み額」と「老後の月の支出」を計算し、その差分を計算することが老後資金の備えの一歩です。
上記の計算が赤字になるのであれば、公的年金を増やしたり、私的年金や貯蓄で補ったりする工夫をすることが大切でしょう。老後の家計収支を計算し、「月いくらの余裕資金があればゆとりがあると思えるのか」も具体的な数字で計算をしておきたいものです。
人生100年時代、老後は長いからこそ、その備えは早くから始める必要があります。また、老後を迎えてからも「貯蓄の取り崩しを減らすく工夫」やできれば「資産を育てるようお金の置き場所を考える工夫」などが大切でしょう。
物価高が続き苦しいからこそ、家計の支出と収入、そして貯蓄を育てるか、じっくりと考える機会にはなります。これを機にまずはご自身の現状についても確認してみましょう。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びAFP。SMBC日興証券出身。証券会社でのリテール営業の経験を活かし、現在はIFAとして老後資金の準備や相続相談などを得意とした個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。

【元記者の視点】「月々赤字が普通」は家計の失敗ではなく、社会保障の「設計通りの仕様」
本記事で示した「65歳以上の無職夫婦世帯では、毎月約4万円の赤字が発生する」というデータを見て、大きな不安を抱いた方もいるかもしれません。しかし、社会保障の歴史や年金の政策決定プロセスを取材してきた記者として、ぜひ皆様に認識していただきたい客観的な事実があります。
それは、「無職夫婦世帯で生活費が月々赤字になることは、家計管理の失敗でも浪費でもなく、日本の年金制度における最初からの『設計通りの標準仕様』である」ということです。
そもそも日本の公的年金制度における標準的なモデル年金(現役時代に平均的な収入で働いた夫と、専業主婦の妻の世帯)の給付水準は、現役時代の現役手取り収入の50%台後半(所得代替率)を維持するように設計されています。
言い換えれば、国は最初から「公的年金だけで現役時代と同じ生活水準の100%をカバーすること」は想定しておらず、「基礎年金+報酬比例部分(公的年金)」に加えて、「自助努力によって積み上げた貯蓄の取り崩し(あるいは退職金・企業年金など)」というストックを組み合わせることで、初めて100%の老後生活が完成する構造にしているのです。
この前提条件を知らないまま、現役時代の感覚で「毎月の家計は黒字でなければならない」「年金の枠内で絶対に収めなければならない」と過剰に思い詰めると、「生活を苦しいと感じる」という精神的な呪縛に陥ります。
貯金は使わずに口座に残すためではなく、まさにこの「毎月の設計上の赤字(不足分)」を安全に埋めるために長い年月をかけて準備してきた資産です。
「月々の赤字は普通のこと」と客観的に受け入れ、罪悪感なく貯蓄を取り崩せるマインドセットへ転換することこそが、老後のゆとりを取り戻すポイントとなります。