7月に入り、多くの企業で夏のボーナスが振り込まれた頃。手取りの明細を眺めながら、給与や賞与から差し引かれる厚生年金保険料の大きさに、あらためて驚いた方も多いのではないでしょうか。
老後の柱となる厚生年金ですが、「同世代でも人によって月額はけっこう違うらしい」「高額受給者は月20万円を超えるらしい」と耳にする一方、そもそも自分は毎月いくらの保険料を払っていて、将来いくら受け取れるのかを正確に把握している人は多くありません。
日々メディアの編集部で年金制度や経済の動向を見つめる筆者の立場からも、「保険料に対する不満」を持つ人ほど、年金制度の知識を深めることが大切だと感じています。
今の負担がどれほど未来につながるのか(あるいは自助努力が必要なのかなど)を知るためにも、今のシニアの年金受給実態を把握しておくことは、非常に有益だと感じています。
今回は、厚生年金の高額受給者の実態と、現役時代に払う保険料はいくらなのかを、最新データをもとに解説します。
国民年金保険料と厚生年金保険料の違い
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。両方に加入する人もあれば、国民年金のみに加入する人もいます。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金保険料は全員一律で、2026年度は月額1万7920円です。ただし納付するのは第1号被保険者のみで、第2号被保険者は後述する厚生年金保険料を納めます。第3号被保険者は、保険料を納める必要がありません。
第2号被保険者が加入する厚生年金では、加入者は毎月の給与や賞与に応じた年金保険料を納めます。給与水準が高く、加入期間が長い人ほど、老後に受け取る厚生年金額も大きくなる仕組みです。
国民年金は誰もが一律。厚生年金は、高年収ほど保険料が高くなると整理できますね。※標準報酬月額は上限65万円、標準賞与額は上限150万円
では、保険料を納めた結果、高い年金をもらえる人はどれほどいるのでしょうか。
厚生年金の高額受給者「月20万円超」は何人いるのか
ここからは、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金の月額階級別の受給権者数を確認しましょう。
※ここには国民年金も含まれます。
厚生年金:年金月額階級別の受給権者数
厚生年金(国民年金部分を含む)の受給権者数は総数1608万5696人。月額20万円を超える"高額受給者"は約302万7673人で、全体の18.8%にあたります。
おおよそ5人に1人が「月20万円超」の水準を受け取っている計算です。
ざっくり見ると、次のような分布になっています。
- 月10万円未満:305万3974人(19.0%)
- 月10万〜15万円未満:399万7526人(24.9%)
- 月15万〜20万円未満:600万6523人(37.3%)
- 月20万〜25万円未満:246万8623人(15.3%)
- 月25万〜30万円未満:52万9218人(3.3%)
- 月30万円以上:2万9832人(0.2%)
ボリュームゾーンは月15万〜20万円未満で、全体の4割弱を占めています。一方、月30万円以上の"超高額受給者”はわずか0.2%と、極めて限られた存在です。
厚生年金の保険料はいくら?高額受給者はいくら払っているのか
それでは、こうした年金をもらえる人は、現役時代にいくら保険料を払っているのでしょうか。
保険料率18.3%を労使で折半
厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に対して保険料率18.3%をかけて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します。したがって、本人負担分は9.15%です。
- 月の給与30万円の会社員:月2万7450円が本人負担(会社も同額を負担)
- 月の給与50万円の会社員:月4万5750円が本人負担
- 月の給与65万円(上限)の会社員:月5万9475円が本人負担
標準報酬月額には上限が設定されており、月収がいくら高くても月65万円(年収換算約780万円)で保険料は頭打ちになります。標準賞与額も1回あたり150万円が上限です。
高額受給者が現役時代に払った保険料の目安
老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額は、次の式でおおよそ計算されます。
- 年額 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
たとえば、平均標準報酬額45万円で40年(480ヵ月)加入した会社員の場合、報酬比例部分は年額約118万3896円。ここに老齢基礎年金の満額(年84万7296円)を加えると、年約203万円、月額換算で約16万9000円となります。
これは男性の平均年金月額(16万9967円)にほぼ重なる水準です。
この人が現役時代に払っていた保険料は、月45万円 × 9.15% = 月4万1175円(本人分)。40年間で累計約1976万円を負担してきた計算になります(賞与分は別途)。
一方、月20万円超の高額受給者ゾーンに入るには、平均標準報酬額が55万〜65万円クラスで長期間加入している必要があり、本人負担の保険料は月5万〜6万円弱、40年累計では2400万〜2800万円規模になります。
年金平均額はいくら?男女別・厚生年金と国民年金の平均月額
参考までに、厚生年金・国民年金の男女別平均月額もあわせて確認しておきましょう。
厚生年金の男女別平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
男性は約17万円、女性は約11万円と、男女で約5万8000円の差があります。女性は結婚・出産・介護などによる勤続年数の中断や、平均給与水準の差が保険料負担額に反映され、その分受給額にも表れています。
国民年金の男女別平均年金月額
国民年金の平均額(全年齢)
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
自営業やフリーランスなど国民年金のみで老後を迎える人は、男女ともに月6万円前後。年金だけで暮らすのは相当厳しく、自助努力での上乗せがほぼ前提となる水準です。
【筆者からのアドバイス】厚生年金の高額受給者を目指すなら
厚生年金の高額受給者を目指すならどうしていけばいいのでしょうか。
ねんきんネットで「今の見込み額」を早めに確認する
厚生年金は、給与・賞与に応じて保険料と将来の受給額が決まる仕組みです。「自分がいまのペースで加入を続けたら、老後いくらもらえるのか」は「ねんきんネット」で毎月試算できます。
早いうちに一度確認しておくと、その後のキャリア設計がぐっと具体的になります。
65歳より後まで働くことも選択肢に
厚生年金の加入年齢上限は70歳です。65歳以降も厚生年金に加入して働き続けると、加入月数が積み上がり、老齢厚生年金の額はさらに増えていきます。
定年後の再雇用や短時間勤務でも、社会保険適用の職場で働けば「+α」の年金を上乗せできます。
iDeCo等で"3階部分"の年金を自分でつくる
公的年金には保険料の上限(標準報酬月額65万円)があるため、給与が一定水準を超えると保険料も受給額も頭打ちになります。
ミドル世代になってから年収1000万円を突破する可能性はあっても、若いときから高所得者層に属する人はほんの一部です。
このことから、公的年金だけで高額受給者を目指すのはかなり難しいことがわかります。不足する分はiDeCoで運用益非課税のメリットを活かしながら、自分で"3階部分"を積み上げる工夫が有効です。
年金形式にこだわらないのであれば、NISAや投資などを組み合わせるのもひとつでしょう。
まとめにかえて
厚生年金の高額受給者、いわゆる月20万円超の受給者は、全受給者の約18.8%を占めます。
決してごく一部の特別な人だけではありませんが、そこに到達するには、現役時代を通じて高めの給与水準で長期間加入し続けることが前提になります。
払っている保険料の重さと、将来の受給額の重さは表裏一体です。ボーナス明細をきっかけに、「自分は毎月いくら払っていて、老後はいくら受け取れるのか」を、ねんきん定期便やねんきんネットで一度点検してみてはいかがでしょうか。
不足しそうな部分は、iDeCoや新NISAといった制度を使いながら、少しずつ埋めていく時間はまだ十分に残されています。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
