投資信託を保有しているお客さまへ運用状況をご連絡するのも、銀行員の仕事のひとつでした。
運用会社から届く月次レポートをもとに、運用実績や組入銘柄、今後の見通しをお伝えするのですが、順調な時は「プロに任せているから安心」という反応が多かったです。
ところが、株高・株安や円高・円安で相場が大きく動くと、「自分が持っている銘柄、どれくらい影響が出ますか?」と心配の声が増えます。下がり始めるとハラハラしてしまいますよね。
特にオルカンは「自動で中身を調整(リバランス)してくれるから、ほったらかしで大丈夫」とよく聞きますし、確かにその通りかもしれません。
ただ、相場が大きく動いたときに「中身を全く知らない」ままだと、どうしても不安が膨らんでしまうもの。
だからこそ、運用の仕組みをあらかじめ知っておくことが、長期投資の「お守り」になります。
今回は、投資信託の代名詞とも言えるオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))について、2026年6月30日基準の最新月次レポートをもとに、平均利回り・投資先・基準価額の変動要因・コストを整理します。
オルカンの平均利回りは何%?最新データで確認
オルカンは2018年10月31日に設定されたファンドです。2026年6月30日時点の基準価額は3万8017円、純資産総額は12兆7440億円に達しています。
月次レポートの騰落率をもとに算出した年平均利回りは以下の通りです。
- 過去1年:騰落率38.2% → 年平均利回り38.2%
- 過去3年:騰落率93.2% → 年平均利回り約24.6%
- 設定来(約7年8ヵ月):騰落率280.2% → 年平均利回り約19.0%
過去1年の38.2%という数字は異例ともいえる高水準です。この背景には主に2つの要因があります。
- 米国ハイテク株の上昇:NVIDIAをはじめとする情報技術セクターが引き続き世界市場をけん引しました
- 円安による評価額の押し上げ:外貨建て資産を円換算するため、円安が進むほど円ベースの評価額が上がります
ただし、「平均利回り」はあくまでも過去の実績をならした数字です。
実際には大きく下落する年もあり、設定来の期間でも3月には基準価額が2000円以上下落する月がありました。
「常に右肩上がり」という前提は禁物です。
オルカンの投資先:6割超が米国、上位銘柄はNVIDIA・APPLE
「1本で世界中に分散投資できる」のがオルカンの魅力ですが、その内訳を見ると特徴がはっきりしています。
組入上位10ヵ国・地域(2026年6月末時点)
- 1位:アメリカ 63.0%
- 2位:日本 5.1%
- 3位:台湾 3.1%
- 4位:イギリス 3.0%
- 5位:カナダ 2.9%
- 6位:韓国 2.8%
- 7位:フランス 2.1%
- 8位:スイス 2.0%
- 9位:ドイツ 1.8%
- 10位:オーストラリア 1.4%
組入上位10銘柄(2026年6月末時点)
オルカン組入上位10銘柄(2026年6月30日基準)
- 1位:NVIDIA CORP(アメリカ 情報技術)4.4%
- 2位:APPLE INC(アメリカ 情報技術)4.0%
- 3位:MICROSOFT CORP(アメリカ 情報技術)2.5%
- 4位:AMAZON.COM INC(アメリカ 一般消費財・サービス)2.3%
- 5位:ALPHABET INC-CL A(アメリカ コミュニケーション・サービス)2.0%
- 6位:TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾 情報技術)1.8%
- 7位:BROADCOM INC(アメリカ 情報技術)1.6%
- 8位:ALPHABET INC-CL C(アメリカ コミュニケーション・サービス)1.6%
- 9位:MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ 情報技術)1.3%
- 10位:META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ コミュニケーション・サービス)1.2%
全世界への分散投資といいながら、国別では63%が米国、業種別では情報技術セクターだけで31%を占めます。
すでにS&P500など米国株ファンドを持っている場合は、オルカンを追加すると米国株への集中度がさらに高まる点に注意が必要です。
一方、オルカンの大きなメリットは「自動リバランス」です。
将来、米国以外の国が台頭してきた場合でも、世界の時価総額比率に応じて投資先が自動的に調整されます。自分でポートフォリオを管理しなくてよいメンテナンスフリーな仕組みが、長期投資に向いている理由のひとつです。
オルカンはベンチマークを上回っている
オルカンはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)を目標指数(ベンチマーク)としています。
インデックスファンドである以上、その指数に近い値動きを目指す設計ですが、2026年6月末時点では設定来でファンド(280.2%)がベンチマーク(278.5%)を1.7ポイント上回っています。
オルカン騰落率
過去1年・3年・設定来のいずれもベンチマークと同水準かそれ以上の成績を出しています。インデックスファンドにおいてベンチマークに対してプラスの乖離が続いていることは、安定した運用が実現できている証左といえます。
基準価額の変動要因:2026年6月は為替がプラスに寄与
月次レポートには、基準価額がどの要因でどれだけ動いたかを示す「変動要因」のデータが掲載されています。
「なぜ上がったのか、なぜ下がったのか」を把握する上で、最もわかりやすい指標のひとつです。
基準価額の変動要因(概算)
2026年6月(+280円)の内訳
- 国内株式:+33円
- 先進国株式(除く日本):▲201円
- 新興国株式:+21円
- 為替要因:+429円
- その他(信託報酬等):▲2円
6月は先進国株式がマイナスに転じたものの、円安の進行による為替要因(+429円)がそれを補い、全体では+280円となりました。
オルカンは外貨建て資産を円換算するファンドのため、円安局面では為替要因がプラスに働きやすい構造になっています。
直近の振れ幅:3月の急落と4月の急回復
直近7ヵ月のデータを見ると、月ごとの変動幅の大きさがよくわかります。
- 2026年3月:▲2366円(先進国株式▲2282円が主因)
- 2026年4月:+3721円(先進国株式+2792円が主因)
3月には米国を中心とした先進国株式が急落し、1ヵ月で基準価額が2000円以上下がりました。
しかし翌4月には同じ先進国株式が約2800円分の押し上げに転じ、2ヵ月で約1400円の上昇となっています。
この振れ幅は、リターンの大きさと裏返しの関係にあります。高いリターンを期待できる一方で、短期間に大きく値下がりする可能性も同じくらいあるということです。
「3月のような下落が来たとき、自分は保有し続けられるか」それを事前にシミュレーションしておくことが、長期投資を続けるうえで大切な準備といえるでしょう。
設定来(約7年8ヵ月)で基準価額を押し上げた要因は?
設定来の変動要因の合計(+2万8017円)の内訳を見ると、どの要因が長期リターンに大きく貢献しているかがわかります。
- 先進国株式(除く日本):+1万6938円(全体の約60%)
- 為替要因:+7438円(全体の約27%)
- 新興国株式:+2390円(全体の約9%)
- 国内株式:+1358円(全体の約5%)
- その他(信託報酬等):▲106円
設定来のリターンの約6割を先進国株式(主に米国株)が稼ぎ出し、約3割を円安による為替効果が担っている計算になります。
裏を返せば、今後米国株が長期的に低迷する局面や、円高に転じる局面では、これまでのような高いリターンが続かない可能性もあります。
「オルカンは安心」という感覚の背景には、米国株高と円安という特定の条件が重なっていた事実があることは、頭の片隅に置いておきたいところです。
信託報酬は年率0.05775%以内:コストの安さも長期投資の強み
オルカンが支持される理由として、成績の良さと並んで挙げられるのがコストの低さです。
信託報酬(年率):0.05775%以内(税込)
100万円を1年間保有した場合の信託報酬は577円程度。一般的なアクティブファンドの信託報酬が年率1〜2%程度であることと比べると、その差は歴然です。
長期投資においてコストは「確定したマイナス」として毎年積み重なります。
利回りが高くてもコストが高ければ、手元に残る利益は削られます。
オルカンはこの「見えにくいコスト」を極限まで抑えることで、市場の成長をそのまま享受できる設計になっているのです。
まとめ:「理解して続ける」ことが長期投資の基本
2026年6月末時点のオルカンは、純資産12兆7440億円、設定来の年平均利回り約19%という実績を持つファンドです。
過去1年の騰落率は38.2%と高水準にありますが、これは米国株高と円安というふたつの追い風が重なった結果でもあります。
「良いときだけを見て投資を始めると、相場が下がったときに慌てて売ってしまう」
これは、現役時代に多くのお客さまを見てきて実感したことです。だからこそ、今一度確認しておきたいオルカンの「真実」を4つのポイントにまとめました。
- 高利回りはあくまで過去実績:今後も年19%のような高い水準が続く保証はありません。投資の世界に「右肩上がり一本道」はなく、元本を下回る局面(マイナスになる時期)は必ず訪れると構えておくことが大切です
- 実質は米国株集中:「全世界に均等に分散されている」と思われがちですが、中身を見ると国別構成の約63%が米国、業種別では情報技術(IT関連)が約31%を占めています。「全世界」という言葉のイメージだけで安心せず、「アメリカの動向に大きく左右されるファンドなのだ」と理解しておきましょう。
- 自動リバランスとコストの低さは本物の強み:時代の変化に合わせて中身の国や銘柄の比率を自動で調整してくれる(リバランス)の手間と、保有し続けるための「維持コスト(信託報酬)」の低さは一級品です。「ほったらかしで手間をかけずに長期保有できる」という点において、他のファンドと比べても圧倒的な優位性があります。
- 「売らずに続けること」が成果の鍵:オルカンで資産を増やす鍵は、一喜一憂せずに淡々と持ち続けることです。「もし20%〜30%下がったら不安で眠れなくなるかも…」と感じる方は、まずは生活に影響のない少額(毎月数千円〜など)から始めて、値動きの波に慣れていくことをおすすめします。
【投資に関するご注意】
- 本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
