40歳代・50歳代は、キャリア面での責任が重くなるとともに、収入面でも一つのピークを迎える人が多い時期です。
国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、55〜59歳の平均給与は572万円(男性は735万円超)と、全世代で最も高い水準にあります。
しかし、その一方で家計を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります。
2026年6月19日に総務省統計局が公表した5月分の「消費者物価指数(全国)」によると、総合指数は前年同月比+1.5となり、物価上昇の傾向は続いています。
さらに、帝国データバンクが6月30日に発表した調査によれば、2026年7月の飲食料品値上げは2566品目に上りました。
2026年通年の値上げ品目数はすでに1万4902品目(1〜11月判明分)に達し、年間1万品目を超えるのはこれで5年連続となります。
50歳代会社員である筆者自身も「手取りは増えても生活の実感が追いつかない」と悩む一人です。
老後不安から「いつまで働くべきか」と迷う日々ですが、働き続けるスキルや体力は貯蓄と同様、一朝一夕には身につきません。
今回は、働き盛り世代の貯蓄事情に迫るとともに、筆者の気づきやシニア就労の最新データなどを交えながら「これからの老後の備え」について考えていきましょう。
【2025年】二人以上世帯で資産増加の理由は「運用益」が上位にランクイン
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産の平均は1940万円、中央値は720万円となり、前年に比べて大幅に増加しました。
資産増加の要因を見ると、「定例的な収入の増加」や「収入からの貯蓄割合の引き上げ」を抑え、上位には「株式・債券の評価額の上昇(38.7%)」や「配当・利息収入(35.0%)」といった運用益が挙がっており、この点が大きな特徴となっています。
二人以上世帯「金融資産保有額の推移」
働き盛りの40〜50歳代に着目しても、資産運用による成果を実感している世帯が多いことがうかがえます。
- 定例的な収入が増加したから:40歳代37.5%、50歳代26.6%
- 株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから:40歳代38.4% 50歳代34.1%
- 配当や金利収入があったから:40歳代33.0% 50歳代29.5%
次に、40歳代・50歳代の貯蓄状況に絞って見ていきましょう。
【40歳~50歳代】現役世代の貯蓄額(平均・中央値)はいくらか
引き続き同調査をもとに、40歳代・50歳代の貯蓄状況に絞って確認してみましょう。
「40歳代・二人以上世帯」の金融資産保有額をチェック
【円グラフ】40歳代・二人以上世帯の金融資産保有額
- 金融資産非保有:18.8%
- 100万円未満:10.0%
- 100~200万円未満:6.2%
- 200~300万円未満:5.1%
- 300~400万円未満:4.4%
- 400~500万円未満:2.6%
- 500~700万円未満:7.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:9.7%
- 1500~2000万円未満:6.5%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:13.1%
- 無回答:2.1%
- 平均:1486万円
- 中央値:500万円
「50歳代・二人以上世帯」の金融資産保有額をチェック
【円グラフ】50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額
- 金融資産非保有:18.2%
- 100万円未満:6.5%
- 100~200万円未満:6.4%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.5%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.7%
- 700~1000万円未満:7.7%
- 1000~1500万円未満:9.3%
- 1500~2000万円未満:6.1%
- 2000~3000万円未満:8.1%
- 3000万円以上:18.8%
- 無回答:2.2%
- 平均:1908万円
- 中央値:700万円
いずれの世代でも、貯蓄の平均額は中央値を大きく上回っています。
40歳代では平均1486万円に対し中央値は500万円、50歳代では平均1908万円に対して中央値が700万円となっています。
この差は、一部の資産が多い世帯が平均値を押し上げていることを示しており、実際の多くの世帯の状況を把握するには中央値のほうが参考になります。
とくに50歳代では、「金融資産をまったく持たない」世帯が18.2%を占め、さらに貯蓄額が500万円未満の世帯も40.9%に上り、全体の4割強を占めています。
教育費や住宅ローンなどの負担が重く、収入に余裕が生まれにくいため、計画的な貯蓄が難しい世帯が多いことが背景にあります。
一方で、金融資産を3000万円以上保有する世帯も18.8%存在し、同じ世代内でも資産の二極化が進んでいることがわかります。
こうした状況を踏まえると、老後を見据えた計画的な資産形成の重要性は、以前にも増して高まっているといえるでしょう。
【65歳以上・リタイア夫婦】毎月の生活費はどのくらい?
総務省統計局が公表した家計調査報告をもとに、「65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯(2025年)」の収支状況を見ていきます。
65歳以上・無職の夫婦世帯における家計収支の内訳
【65歳以上・無職夫婦世帯】毎月の収入額とその内訳をチェック
- 実収入合計:25万4395円
- うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
【65歳以上・無職夫婦世帯】毎月の支出額とその内訳をチェック
- 支出合計:29万6829円(※消費支出+非消費支出)
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
上記資料によると、このモデル世帯の月間実収入は25万4395円で、そのうち公的年金などの社会保障給付が22万8614円となり、全体の約9割を占めています。
一方、毎月の支出総額は29万6829円です。
内訳は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が3万2850円、食費や光熱費などの「消費支出」が26万3979円となっています。
実収入と支出を比べると、月あたり約4万2000円(4万2434円)の赤字が生じる計算です。
この赤字を埋めるには、これまでに築いた貯蓄を切り崩して対応することになるため、働いているうちから将来を見据えた資産づくりに取り組むことの大切さがうかがい知れます。
アラフィフ会社員の本音「みんな何歳まで働く?」長く働くための準備とは
筆者自身、現在50歳代の会社員として働いていますが、同世代の同僚や友人との会話で頻繁に話題に上るのが「みんな、何歳まで働く?」ということ。
労働力人口比率
実際、内閣府が公表した「令和6年版高齢社会白書」のデータによると、令和5年(2023年)時点での労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)は、65~69歳で53.5%、70~74歳でも34.5%に達しています。
男女別の就業者割合を見ても、65~69歳の男性で61.6%、女性で43.1%となっており、60代後半でも多くの人が働き続けているという現実を見ると、「定年=完全リタイア」という価値観はすでに過去のものになりつつあると実感させられます。
さらに、長く働き続ける人を後押しするような年金制度の機能強化も図られています。
この春、在職老齢年金の「年金カット基準額」が大幅緩和
働きながら厚生年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が一定基準を超えると年金が減額されてしまう「在職老齢年金」という制度があります。
在職老齢年金のイメージ
最新の制度見直しでは、この支給停止の基準となる調整額(月額)が51万円(2025年度)から65万円(2026年度)に引き上げられています。
これにより、「働き損」を過度に気にすることなく、より働きやすい環境が整いつつあると言えるでしょう。
こうした制度の後押しもあり、できるだけ長く働くことが老後不安の解消につながる有効な手段であることは確かです。
しかし、働き続けるための「スキル」や「体力」は、貯金とまったく同じで一朝一夕に出来上がるものではありません。
いざ60歳代・70歳代になってから「働きたい」と思っても、健康が追いつかなかったり、時代に合ったスキルが伴っていなければ、働き口の選択肢はどうしても狭まってしまうものです。
まとめにかえて
40歳代・50歳代は教育費や住宅ローンなどの支出に加え、親の介護や自分自身の健康不安といったライフステージ特有の負担も重なりやすいお年頃。
「貯め時」「使い時」は世帯ごとに異なりますので、他の世帯を過剰に気にせず「わが家のペース」を作っていくことをおすすめします。
まずは、丁寧な家計管理をおこない、お金の出入りを見える化していくことが大切です。
そのうえで、先取り貯金の徹底や、NISAやiDeCoといった税制優遇制度の活用など、使えるしくみを組み合わせてお金を「守り・育てる」こと。
そして同時に、50歳代の今のうちから「長く働き続けるための土台(スキルと体力)」を作っておくことが求められます。
焦らず無理のない範囲で、時間を味方につけながら長期的な視点で準備を続けること。
こうした現役時代からの日々の小さな積み重ねこそが、将来の大きな安心を支える強固な土台となるはずです。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
