7月を迎え、1年の折り返し地点を過ぎました。夏のボーナス支給や上半期の家計の締めくくりが重なるこの時期は、ご自身の現在の資産状況を客観的に見直す適期といえます。
将来の住まいから老後の生活資金までをすべて自身の資産で準備する必要がある「おひとりさま(単身世帯)」にとって、同世代の貯蓄額はライフプランを検討するうえでの重要な指標となります。
私は過去に社会保障専門紙の記者として各省庁の難解な一次データと日々向き合ってきました。その経験から強く感じるのは、国が発表する「平均値」という数字が、必ずしも生活者のリアルな実態を表しているわけではないということです。
一部の富裕層によって数字が大きく上振れする平均額を見て、ご自身の状況に焦りを感じる必要はありません。本記事では、官公庁の統計データを読み解き、調査対象の真ん中に位置するより実態に近い「中央値」を年代別に一覧化します。
さらに、「貯蓄がある人」と「ない人」を分ける家計管理の違いについて、客観的な視点から解説します。
単身世帯の貯蓄事情は?年代別の平均額・中央値をチェック
金融経済教育推進機構の「2025年家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、単身世帯の貯蓄状況を年代別に見ていきましょう。
平均貯蓄額
30歳代・単身世帯の貯蓄状況(平均・中央値)
- 金融資産非保有:32.3%
- 100万円未満:14.2%
- 100~200万円未満:14.2%
- 200~300万円未満:4.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.8%
- 500~700万円未満:5.5%
- 700~1000万円未満:3.1%
- 1000~1500万円未満:5.5%
- 1500~2000万円未満:4.3%
- 2000~3000万円未満:2.5%
- 3000万円以上:3.4%
- 無回答:3.1%
- 平均:501万円
- 中央値:100万円
30歳代のおひとりさま世帯では、平均貯蓄額は501万円、中央値は100万円でした。
内訳を見ると、金融資産を保有していない人は32.3%にのぼり、100万円未満が14.2%、100万円以上200万円未満も14.2%となっています。
一方で、3000万円以上の金融資産を保有する人も3.4%存在しており、資産状況には大きな開きが見られます。
40歳代・単身世帯の貯蓄状況(平均・中央値)
- 金融資産非保有:32.1%
- 100万円未満:15.1%
- 100~200万円未満:7.1%
- 200~300万円未満:5.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.2%
- 1500~2000万円未満:1.2%
- 2000~3000万円未満:2.8%
- 3000万円以上:9.9%
- 無回答:2.5%
- 平均:859万円
- 中央値:100万円
40歳代の平均貯蓄額は859万円、中央値は100万円です。
中央値は30歳代と同水準ですが、平均額は大きく上昇しています。
金融資産非保有は32.1%となる一方で、3000万円以上保有している人は9.9%と約1割を占めています。
50歳代・単身世帯の貯蓄状況(平均・中央値)
- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代になると、平均貯蓄額は999万円、中央値は120万円となります。
平均額は1000万円近くまで増加していますが、金融資産を保有していない人は35.2%と、全年代の中でも高い割合です。
また、100万円未満の人も10.1%おり、貯蓄状況の二極化がうかがえます。
60歳代・単身世帯の貯蓄状況(平均・中央値)
- 金融資産非保有:30.4%
- 100万円未満:9.1%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:2.4%
- 300~400万円未満:4.5%
- 400~500万円未満:3.1%
- 500~700万円未満:6.0%
- 700~1000万円未満:4.8%
- 1000~1500万円未満:8.1%
- 1500~2000万円未満:4.1%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:15.6%
- 無回答:2.2%
- 平均:1364万円
- 中央値:300万円
60歳代の平均貯蓄額は1364万円、中央値は300万円でした。
退職金や相続などの影響も考えられ、平均・中央値ともに他の年代より高くなっています。
ただし、金融資産非保有(30.4%)と100万円未満(9.1%)を合わせると、全体の約4割が「貯蓄100万円未満」という厳しい状況にあることもわかります。
貯蓄額に「差がつく」のはなぜ?貯蓄を持っている人の特徴とは
年代別のデータを見ると、同じ年代でも資産額には大きな差があります。
本章では、その背景として考えられるポイントを見ていきましょう。
家計や資産状況を具体的に把握している
貯蓄を着実に増やしている人は、お金の流れを数字で把握しているケースが少なくありません。
毎月の収入や支出を確認することで、無駄な出費や改善点が見つけやすくなります。
また、現在の貯蓄額や毎月の積立額、将来の資産見込みなどを具体的に把握しておくことで、目標に向けた行動を取りやすくなるでしょう。
さらに、将来受け取れる年金額も事前に確認しておくことが大切です。
老後の生活設計を考えるうえで、自身の見込み額を把握しておくことは重要なポイントといえます。
先取りでお金を積み立てる仕組みを活用している
貯蓄を継続するためには、自動的にお金が貯まる仕組みづくりも有効です。
給与が振り込まれたタイミングで一定額を積み立てるサービスを利用すれば、使う前に貯蓄へ回すことができます。
日々の忙しさから貯蓄を後回しにしがちな人でも、仕組み化することで無理なく資産形成を続けやすくなるでしょう。
お金に関する情報を積極的に集めている
資産運用や家計管理に関する知識を持つことで、選択肢は広がります。
一方で、「難しそう」「リスクが怖い」と感じて情報収集を避けてしまう人も少なくありません。
まずは制度や仕組みを知ることが大切です。
そのうえで内容を十分に理解し、自分に合った方法を選択することが重要でしょう。
資産運用にはリスクがありますが、効率的に資産を増やせる可能性もあります。
メリットとデメリットの両方を理解しながら、お金に関する知識を身につけていくことが将来の資産形成につながります。
まとめ:世間の平均値から離れ、「先取り貯蓄」の設定を一つ完了させる
統計データにおける平均値と中央値の大きな乖離は、知らず知らずのうちに「お金が貯まる仕組み」を作れている人と、そうでない人の差を明確に表しています。「生活費が余ったら貯金しよう」というやり方では、人間の心理構造上、資産を築くことはきわめて困難です。
もし今、同世代の高い平均貯蓄額を見て不安を感じているのであれば、今日から「他人の数字と比べること」を終わりにしてください。
そして代わりに、スマートフォンを開き、ご利用の銀行口座で「給料日の翌日に、毎月1万円(または5千円でも)が自動的に別口座へ移る積立設定」を一つだけ完了させるというアクションを実行してください。
貯蓄の差は、生まれ持ったセンスの差ではなく、この「最初の1回の手間(仕組み化)」を面倒がらずに実行したかどうかが重要です。
国の難解な制度やマクロな平均値に振り回されることなく、ご自身の口座に手堅い自動化の仕組みを構築すること。このワンアクションこそが、おひとりさまの将来を守る防衛策となるでしょう。
参考資料
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
