この記事はここがポイント
- 相続トラブルの未然防止は、親が元気なうちの話し合いと情報共有が鍵
- 遺産分割事件の約78%が遺産5000万円以下の“普通の家”で発生、金額より家族関係や財産の分け方で揉める実態
- 東京など大都市圏で相続トラブルが多発、最高裁統計で3件に1件が解決まで1年以上かかる長期化傾向
いよいよお盆休みが近づいてきました。帰省などで家族や親戚が集まるこの時期、ふと「実家の今後」について頭をよぎることはありませんか?「うちは普通の家だし、資産家じゃないから相続争いなんて無縁」と思っている方は、少し注意が必要です。
筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として長年、暮らしやお金にまつわるご相談を受けてきましたが、実は骨肉の争いに発展して揉めているのは、資産家よりもごく一般的なご家庭であるケースが圧倒的に多いのです。
今回は最新の司法統計データをもとに、なぜ「普通の家」や「都市部」でトラブルが起きやすいのか、その実態と対策を解説します。この夏、ご家族で話し合うきっかけになれば幸いです。
【全国1万5379件】相続トラブルが多い地域トップ5を占めるのは「大都市圏」!
相続トラブルが多い地域トップ5
最高裁判所が公表する令和6年の司法統計年報(家事編)によると、遺産分割事件(相続トラブル)で件数が多い地域は、東京・大阪・横浜・名古屋・さいたまなど大都市圏が上位を占めています。
全国の総数は1万5379件。上位の内訳を見ると、東京が2018件と突出しており、都市部ほど相続問題が表面化しやすい傾向がうかがえます。「資産家だけの問題」と捉えられがちな相続ですが、実は都市部に住むごく一般的な家庭こそ注意が必要です。
都心の住宅地は評価額が高くなりやすく、遺産が「自宅のみ」という状況では、分け方を巡って兄弟間で不公平感が生じやすいためです。
金額の大小に関わらず、不動産という「分けにくい財産」をどう扱うかが、円満相続の大きな分かれ道となります。
【3件に1件が1年以上】泥沼化すると長引く?相続トラブルの審理期間
審理期間、どれくらいかかることが多い?
家庭裁判所で手続きがはじまってから最終的に終結するまでの期間を審理期間と言います。遺産分割の争いは、感情面の衝突も重なりやすく、短期間で終わるとは限りません。
司法統計年報(家事編)では、3件に1件は解決まで1年以上かかっているとされています。相続が発生すると、名義変更や預貯金の手続きなども進めにくくなり、生活に影響が出ることも。だからこそ、事前の備えと、期限を守ることが重要です。
【78%が遺産5000万円以下】”普通の家”がいちばん危ない理由
相続トラブル多発!遺産価額ボリュームゾーンはどこだ?
「揉めるのは遺産が高額な家庭だけ」というイメージもありますが、統計では遺産分割事件のうち、遺産価額のボリュームゾーンは5000万円以下が約78%。つまり、“一般的な家庭”でもトラブルに発展する可能性は十分あります。
相続は金額ではなく、「家族関係」「財産の分け方」「情報の共有不足」で揉めるケースが少なくありません。
【優先順位は3パターン】まず押さえたい!「相続」と法定相続人の基本
ここで、相続の基本をおさらいしておきましょう。
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や権利・義務を、家族などの相続人が引き継ぐことです。遺言書がない場合は、民法のルールに従って遺産を分けることになります。
相続の基本と法定相続の仕組み
相続には、亡くなった人の配偶者と、一定の範囲の血族が「法定相続人」として選ばれます。配偶者は常に相続人となりますが、血族には優先順位があります。
- 第1順位:子ども
- 第2順位:親
- 第3順位:兄弟姉妹
なお、事実婚(内縁関係)や離婚した元配偶者は相続人には含まれません。もし本来の相続人が既に亡くなっている場合は、その子ども(孫や甥・姪)が代わりに引き継ぐ「代襲相続」という仕組みもあります。
相続が始まると、プラスの財産(預貯金や不動産)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も引き継ぐことになるため、誰が何を相続するのかを早期に正しく把握することが重要です。
まとめにかえて
ここまで、最新データに基づく相続トラブルの実態と対策について解説しました。
FPとして数多くの相続相談に向き合ってきましたが、トラブルを未然に防ぐ最大の鍵は「親が元気なうちの話し合い」に尽きます。親の健在時に財産の話をするのは「縁起でもない」と避けられがちですが、いざ相続が起きてから慌てても、分けにくい財産を前に感情がぶつかり合ってしまうことが多いのです。
お盆休みは、離れて暮らす家族が顔を合わせる絶好のチャンスです。まずは「実家はどうするつもりか」「エンディングノートを書いてみるか」といった身近な話題から、少しずつ情報共有を始めてみてはいかがでしょうか。遺言書の有無や、財産の全容を共有しておくだけでも、その後の手続きは劇的にスムーズになります。
もし、家族間だけで話を進めるのが不安な場合は、早めにFPや税理士、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

相続トラブルは、決して一部の富裕層だけの問題ではなく、どの家庭にも起こり得る身近なリスクです。とくに不動産が含まれる場合は平等に分けることが難しいため、生前からの財産把握と家族間でのコミュニケーションが欠かせません。このお盆休みを機に、ぜひご家族で将来に向けた話し合いの場を設けてみることをおすすめします。