日本年金機構が6月17日に更新した「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」によれば、65歳以上で公的年金の源泉徴収の対象とならない年金額が、現行の205万円未満から214万円未満に引き上げられました。
手取り額に直結する税制改正の話題が注目される中、老後の生活を支える重要な柱である「公的年金」について、ご自身が将来いくら受け取れるのか、具体的に把握していますか?
筆者は日々メディアの編集部で年金や経済の動向を見ていますが、客観的なデータに基づいてご自身の受給額の目安を把握しておくことは非常に重要だと感じています。
日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建て構造になっており、現役時代の働き方によって受給額が大きく変わります。
この記事では、年金の基本的な仕組みから、厚生年金・国民年金の最新の平均受給額、そして年金生活者のリアルな家計収支まで、公的なデータを基にわかりやすく解説します。ご自身のライフプランを見つめ直すきっかけとして、ぜひご活用ください。
【年金の基本】国民年金と厚生年金の「2階建て構造」とは?
日本の公的年金制度は、基礎となる1階部分の「国民年金」と、会社員などが加入する2階部分の「厚生年金」で構成される、いわゆる「2階建て」の仕組みになっています。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入するもので、公的年金の土台となる部分です。国民年金保険料(※1)は、所得にかかわらず一律です。
一方、厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。保険料は毎月の給与や賞与の額に応じて決まります(※2)。
国民年金保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、65歳から満額(※3)の老齢基礎年金を受け取れます。保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて年金額が減額される仕組みです。
厚生年金の受給額は、加入期間の長さと、現役時代に納めた保険料の総額によって決まります。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7930円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万142円
年金の支給日はいつ?【2026年版】支給日カレンダーで確認
公的年金は、原則として偶数月の15日に、その前月までの2カ月分がまとめて支給されます。15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に支給されます。
参考までに、2026年の年金支給日と対象月を確認してみましょう。
2026年における年金支給日の一覧
【一覧表】2026年の年金支給日カレンダー
- 年金支給日:支給対象月
- 2026年2月13日(金):12月・1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月):4月・5月分
- 2026年8月14日(金):6月・7月分
- 2026年10月15日(木):8月・9月分
- 2026年12月15日(火):10月・11月分
このように、年金は2カ月に一度の支給となるため、毎月給与を受け取っていた現役時代とは家計管理の方法を変える必要があるかもしれません。
厚生年金と国民年金、平均で月いくらもらえる?最新データで見る受給額
老後の生活設計において重要な収入源となる公的年金ですが、受給額は加入状況によって一人ひとり異なります。
実際にどれくらいの差があるのか、最新のデータで確認してみましょう。
厚生年金の平均受給額
厚生年金の平均額(全年齢)
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均受給月額は以下の通りです。
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金部分を含む
受給額の分布(1万円ごと)について
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
全体の平均月額は14万6429円ですが、男女別に見ると男性が16万6606円、女性が10万7200円と、約6万円の差があります。
また、受給額の分布を見ると、月額1万円未満の方から30万円以上受け取っている方まで、非常に大きな個人差があることがわかります。
国民年金の平均受給額
国民年金の平均額(全年齢)
同じく厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、国民年金の平均受給月額は以下の通りです。
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
受給額の分布(1万円ごと)の詳細
- 1万円未満:5万8811人
- 1万円以上~2万円未満:24万5852人
- 2万円以上~3万円未満:78万8047人
- 3万円以上~4万円未満:236万5373人
- 4万円以上~5万円未満:431万5062人
- 5万円以上~6万円未満:743万2768人
- 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 7万円以上~:227万3098人
国民年金の平均月額は、男女ともに5万円台となっています。
受給者数が最も多いボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」です。
受給額の分布からは、月額1万円未満から7万円以上まで、こちらも個人差があることが見て取れます。
年金生活のリアルな家計簿。65歳以上の無職世帯、毎月の収支は赤字?
総務省が公表した「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」を参考に、65歳以上の無職世帯(夫婦のみ・単身)の1カ月あたりの家計収支を見ていきましょう。
65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支
65歳以上の生活費(夫婦世帯)
毎月の実収入は25万5000円です
■うち社会保障給付(主に年金)22万7000円
毎月の支出は29万円です
■うち消費支出(いわゆる生活費):25万9000円
- 食料:7万7000円
- 住居:1万7000円
- 光熱・水道:2万2000円
- 家具・家事用品:1万2000円
- 被服及び履物:6000円
- 保健医療:1万8000円
- 交通・通信:2万8000円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6000円
- その他の消費支出:5万3000円
- うち諸雑費:2万2000円
- うち交際費:2万4000円
- うち仕送り金:1000円
■うち非消費支出:3万1000円
- 直接税:1万1000円
- 社会保険料:2万円
毎月の家計収支の内訳
- 3万5000円の赤字
この夫婦世帯では、毎月の実収入25万5000円に対して支出が29万円となり、結果として月々3万5000円の赤字が生じている計算です。
65歳以上の無職単身世帯の家計収支
65歳以上の生活費(単身世帯)
毎月の実収入は13万5000円です
■うち社会保障給付(主に年金):12万2000円
毎月の支出は16万3000円です
■うち消費支出:15万円
- 食料:4万2000円
- 住居:1万3000円
- 光熱・水道:1万5000円
- 家具・家事用品:7000円
- 被服及び履物:3000円
- 保健医療:9000円
- 交通・通信:1万5000円
- 教育:15円
- 教養娯楽:1万5000円
- その他の消費支出:3万1000円
- うち諸雑費:1万3000円
- うち交際費:1万7000円
- うち仕送り金:1000円
■うち非消費支出:1万3000円
- 直接税:7000円
- 社会保険料:6000円
毎月の家計収支の結果
- 2万8000円の赤字
単身世帯の場合、1カ月の実収入13万5000円に対し、支出の合計は16万3000円となり、毎月2万8000円が不足している状況です。
国民年金の受給額を増やすには?月400円でできる「付加年金」制度
国民年金のみを受給する場合、その額は厚生年金と比べて少額になる傾向があります。働き方が多様化する現代、フリーランスや自営業など厚生年金に加入しない働き方を選ぶ人も増えています。
ここでは、国民年金の受給額を増やす方法の一つとして、比較的始めやすい「付加年金」についてご紹介します。
付加保険料を納付する制度とは
国民年金付加年金制度
毎月の国民年金保険料(2026年度は1万7930円)に、月額400円の「付加保険料」を上乗せして納付することで、将来受け取る年金額を増やせる制度です。
付加保険料を納付できる対象者
- 国民年金第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
付加保険料を納付できない対象者
- 国民年金保険料の納付を免除・猶予されている人(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、学生納付特例)
- 国民年金基金に加入している人
個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は同時に加入できますが、iDeCoの掛金額によっては併用できないケースもあるため注意が必要です。
付加保険料を20歳から60歳までの40年間納付した場合の試算
65歳以降に受け取れる「付加年金額」は「200円×付加保険料納付月数」で計算されます。仮に20歳から60歳までの40年間、付加保険料を納め続けた場合を試算してみましょう。
- 40年間に納付した付加保険料の総額:19万2000円(400円×480カ月)
- 65歳以降に受け取れる付加年金額(年間):9万6000円(200円×480カ月)
この場合、毎年の年金受給額に9万6000円が上乗せされます。納付した保険料の総額は19万2000円なので、付加年金を受け取り始めてから2年で元が取れる計算となり、長生きするほどお得になる制度といえるでしょう。
会社員として厚生年金に加入しながら副業をしている場合を除き、自営業やフリーランスとして働く20歳から60歳の人は国民年金の加入対象となります。
【元銀行員の筆者から老後に向けたアドバイス】
この記事では、公的年金の基本的な仕組みや、厚生年金・国民年金の平均受給額、高齢者世帯の家計収支について、具体的なデータをもとに解説しました。
私が銀行に勤務していた頃、年金支給日(偶数月の15日)には、多くのシニア世代のお客さまが窓口を訪れていました。その中で印象的だったのは、現役時代の年収が同程度でも、年金生活において「不安そうに過ごす人」と「ゆとりを持って暮らしている人」がいたことです。
両者を分けていた大きな違いは、退職を機に生活水準、とくに固定費を見直せたかどうかでした。
家計収支のデータが示すように、老後は現役時代に比べて収入が大きく減少します。それにもかかわらず、住宅ローンの返済や現役時代と変わらない支出、利用していないサブスクリプションなどをそのまま続けてしまうと、現役時代に十分な収入があった人でも、家計はあっという間に赤字に陥る可能性があります。
家計収支の赤字額だけを見て、必要以上に不安になる必要はありません。大切なのは、老後を迎える前から家計を見直し、収入に合った支出へとスリム化しておくことです。それが、安心して老後を迎えるための最も現実的で効果的な備えになると感じています。
まずは、ご自身の家計を見直し、将来受け取れる年金額を把握することから、老後への備えを始めましょう。
参考資料
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
