ROEの57.6%をどう読むか——「絶頂の数字」であることを忘れない
ここで注意したいのは、この57.6%というROEを、キーエンスの13.5%のような「安定した実力値」と同じ物差しで見てはいけない、という点です。半導体産業は好不況の波(シリコンサイクル)が激しく、アドバンテストの業績はその波に大きく揺れます。
実際、同社のROEはこの数年で乱高下しています。2023年3月期は約39%、ところが半導体市況が落ち込んだ2024年3月期には約15.6%まで急落し、当期純利益も前年から半減しました。そして2025年3月期に約34%、2026年3月期に約57.6%と、わずか2年で一気に駆け上がったのです。デュポン分解が示した利益率と回転率の上昇は、裏を返せば、需要が反転すればどちらも急速にしぼむということでもあります。57.6%は、いまがサイクルの絶頂に近いことを映した数字だと理解しておくのが冷静な見方です。見るべきは、この高収益がどこまで続くのか、そしてAI投資の一巡や在庫調整が起きたときに、利益率と回転率がどこまで沈むのか、という「振れ幅」のほうです。
イズミダの視点:数字の大きさより、「サイクルのどこにいるか」
私はかつてテクノロジーアナリストとして半導体産業を追いかけてきましたが、ROE57.6%という数字を見て真っ先に思うのは、「見事だ」よりも「いま、サイクルのどのあたりにいるのか」です。アドバンテストは、AI半導体テスタという分野への専業度が極めて高い会社です。だからこそ、AI半導体の生産が爆発すれば全社業績に丸ごと直結し、これほどのROEを叩き出せる。専業度と寄与度の高さが、この会社の魅力であり、同時に宿命でもあります。
ここで一つ、通説をひっくり返しておきたいのです。「ROEが高い会社=良い会社」とは限りません。少なくとも、ROEの絶対水準だけを見て判断してはいけない業種があります。半導体の装置メーカーはその典型で、同じ会社のROEが2年で15%から57%まで動くのですから、ある一年の数字を「実力」と受け取ると足をすくわれます。私がいつも言うように、大事なのはファンダメンタルズ(業績の中身)とサイクル(波のどこか)を切り分けることです。今回のデュポン分解で見えたのは、アドバンテストのROE急騰が利益率と回転率という「本業の質」で説明できる、健全な上昇だということ。ここは大いに評価できます。そのうえで、この利益率と回転率が景気の追い風で最大限に回った「満潮の数字」であることを忘れず、次にAI投資が一巡したとき、営業レバレッジが逆回転してどこまで利益が沈むか——その下振れの深さをあらかじめ見積もっておく。数字の大きさに見とれるのではなく、波のどこにいるかで読む。これが、これからのアドバンテストを見るうえで一番の注目ポイントです。
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
