50歳代は、住宅ローンや子どもの教育費が一段落し、老後資金の準備を本格的にスタートさせる年代です。
定年退職まで残り10年を切り、退職金の見込み額や年金の受給額が具体的に気になり始める時期でもあるでしょう。
できればそれなりの貯蓄を作っておきたいと思うものです。
そんな50歳代の二人以上世帯では、「金融資産2000万円以上」を保有する世帯はどれくらいの割合を占めるのでしょうか。
今回は、金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年」の最新データをもとに、50歳代の貯蓄事情と老後を支える年金の平均額まで解説します。
50歳代・二人以上世帯の金融資産「2000万円以上」は何割?
金融経済教育推進機構が公表した「家計の金融行動に関する世論調査2025年」(二人以上世帯)によると、50歳代の金融資産保有額は次のとおりでした。
50歳代二人以上世帯の貯蓄額
- 平均値:1908万円
- 中央値:700万円
平均値と中央値の差から、一部の富裕層が全体を押し上げていることが読み取れます。より実感に近いのは中央値のほうです。
次に、50歳代・二人以上世帯における金融資産額の分布を見てみましょう。
- 金融資産を保有していない:18.2%
- 100万円未満:6.5%
- 1000万円以上:42.3%
- 2000万円以上:26.9%
- 3000万円以上:18.8%
2000万円以上を保有する世帯は26.9%と、およそ4世帯に1世帯という結果です。一方で「金融資産なし」(18.2%)と「100万円未満」(6.5%)を合わせると24.7%となり、こちらも約4世帯に1世帯が老後資金の準備に不安を残す層と重なります。
50歳代は、資産形成が進んだ層と足踏みしている層の差が大きく開く年代だとわかります。
では、老後生活を迎えたあとの収入の柱である「年金事情」はどのようになっているのでしょうか。まずは年金のしくみについて整理したあと、今のシニアが受け取る平均額を見ていきましょう。
年金の基本、国民年金と厚生年金は「2階建て構造」
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金は原則として、国内在住の20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、年金のベースとなります。国民年金保険料(※1)は全員一律です。
厚生年金は企業や官公庁などで働く人たちが、国民年金に上乗せして加入する年金です。毎月の給与や賞与に応じた保険料(※2)を納めます。
厚生年金は「年金加入月数」と「納めた保険料」で老後の年金額が決まるため、受け取る金額は一人ひとり異なります。現役時代に高い給与や賞与を得ながら長く勤めた人ほど、受給額が大きくなる仕組みです。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
老齢年金の平均月額はいくら?男女別に厚生年金と国民年金を確認
家計を左右する老後の主要な収入源が公的年金です。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢年金の平均月額は男女別に大きな差があります。
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額
厚生年金 階級別受給権者数
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金の男女別平均月額
国民年金の平均額(全年齢)
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
厚生年金の階級別分布を見ると、月10万円未満の層が全体の19.0%、月20万円超の層が18.8%と、こちらも受給額の格差が広がっています。
夫婦2人の合計を試算しても、勤続年数や現役時代の給与によって月30万円台と月15万円台のような開きが出るのが実情です。
【筆者からのアドバイス】50歳代からの資産形成、3つの視点
50歳代の10年間は「老後資金の最終確認期」ともいえるタイミングです。2000万円以上を貯めた世帯とそうでない世帯の差が広がる中、これから何ができるかを3つの視点で整理してみます。
家計の棚卸しから始める
まずは金融資産と負債の全体像を把握しましょう。
住宅ローンの残債、教育費のピーク、生活防衛資金(生活費の6か月〜1年分)を書き出し、そのうえで「老後に回せる金額」を数字で確認します。
ねんきん定期便で受給見込みを確認
50歳代に届くねんきん定期便には、『現在の収入条件のまま60歳まで働き続けたと仮定した場合』のリアルな年金見込額が記載されています。
夫婦2人の見込額を合算し、老後の月々の生活費との差額が「取り崩す必要のある金額」です。この数字が、必要な貯蓄額の目安になります。
また、筆者はかつて自治体の窓口で年金や保険の相談を受けていましたが、天引きされるお金についての問い合わせがとても多かったのを覚えています。
年金の金額によって税金や社会保険料がかかるので、実際の手取り額は想定以上に低くなるものです。
こうした負担も念頭に置いて、老後の計画を立てておきましょう。
iDeCo・NISAで最後の10年を活かす
iDeCoは掛金全額が所得控除の対象となり、現役時代の税負担軽減と老後資金の準備を同時に進められます。
NISAは運用益が非課税で、いつでも引き出せる柔軟性があります。
50歳代は投資期間が短い分、ハイリスクな運用より、生活防衛資金を確保したうえで安定的な運用を検討するのが現実的な選択肢となります
ただし、合う方法は家庭の状況によっても異なります。取れるリスクを把握し、メリットデメリットもしっかり理解した上で選択しましょう。
まとめにかえて
50歳代・二人以上世帯で金融資産2000万円以上を保有するのは全体の26.9%、およそ4世帯に1世帯にとどまります。一方、金融資産なしと100万円未満を合わせた層も24.7%と同水準にあり、二極化がはっきり見えてきました。
公的年金は男女で受給額に差があるうえ、単身か夫婦かでも老後の月収は大きく変わります。まずは自身の年金見込額を確認したうえで、残された10年で「取り崩し不要な家計」を目指す設計が、老後の安心につながります。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
