貯蓄が「ある人」と「ない人」を分けるポイントとは
ここまで年代別の平均貯蓄額と中央値を見てきましたが、同じ年代でも資産状況には大きな差があることが分かります。
では、貯蓄を着実に増やしている人と、なかなか貯蓄ができない人ではどのような違いがあるのでしょうか。
代表的なポイントを見ていきましょう。
お金の状況を具体的に把握しているか
貯蓄の有無を分ける要因の一つとして、自身のお金の流れをどれだけ具体的に理解しているかが挙げられます。
たとえば家計収支を把握していれば、収入と支出のバランスが明確になり、「なぜお金が残らないのか」を分析しやすくなります。
また、どの支出を優先するのか、どこを節約するのかといった判断もしやすくなるでしょう。
貯蓄額についても同様です。
現在の資産額や毎月の貯蓄額、今のペースで積み立てた場合の将来の見込み額などを把握しておくことが大切です。
さらに、老後に受け取れる年金額についても確認しておきたいところです。
「ねんきんネット」を利用すれば将来の年金見込み額を確認できます。
公的年金だけで生活することは簡単ではないため、まずは自分の受給見込み額を知ることが老後資金づくりの第一歩となるでしょう。
先取りで貯蓄する仕組みを活用しているか
忙しい毎日の中で、常に家計を管理し続けるのは簡単ではありません。
そのため、貯蓄を習慣化している人は「先取り貯蓄」の仕組みを活用しているケースが多く見られます。
たとえば、給与が振り込まれたタイミングで一定額を自動的に積み立てるサービスを利用すれば、自分で毎月移動する手間を省くことができます。
金融機関によっては自動積立定期預金などのサービスを提供しており、こうした仕組みを利用することで無理なく貯蓄を続けやすくなります。
お金に関する情報へ関心を持っているか
資産形成に取り組む人とそうでない人では、お金に関する情報収集の姿勢にも違いが見られます。
資産運用に対して「難しそう」「リスクが怖い」と感じ、情報収集そのものを避けてしまう人も少なくありません。
しかし、情報を知っているかどうかによって選択できる手段は大きく変わります。
まずは制度や商品について知り、自分で調べたうえで判断することが大切です。
リスクを正しく理解し、自身が許容できる範囲の中で行動することが資産形成につながるでしょう。
【元記者の視点】極端な「平均値」の錯覚から抜け出し、現在地を視覚化する
記者として長年マクロなデータを追いかけてきて実感したのは、統計上の「平均値」がいかに個人の感覚を惑わしているかということです。
特に単身世帯のデータは、家族構成や教育費に縛られないためライフスタイルの幅が非常に広く、一部の飛び抜けた資産家が全体の数字を大きく押し上げる傾向にあります。
そのため、ニュースで報じられる平均額と自分の通帳を見比べて、「自分はやりくりが下手なんだ」と不必要に落ち込んでしまう人もいるかもしれません。
大切なのは、平均値ではなく「中央値」をリアルな現在地として受け止めること。
そして、手元に貯蓄がないことを個人の性格や我慢不足のせいにせず、「お金が自動的に貯まるシステム」が生活に組み込まれていないだけだと、客観的に割り切ることです。
意志に頼らず、スマートフォンの銀行アプリで「自動振替」を設定する
単身世帯の年代別データが静かに物語っているのは、何もしなければ年齢とともに貯蓄格差は広がり続けるという客観的な事実です。
しかし、資産形成に手遅れはありません。そして、貯めるために必要なのは過度な我慢ではなく、「無意識のうちにお金が移動するシステム」を生活に組み込むことだけです。
たとえばお使いの銀行アプリを開き、毎月の給料日(またはボーナス支給日)の翌日に「1万円(あるいは5千円)」を別口座へ移す『定額自動振替』の設定を完了させるなどの方法もあります。
極端な平均値に振り回されて漠然と焦らず、目の前の支出をシステムで物理的に制限するこの「数分間の設定作業」こそが、誰の力にも頼らずにご自身の確かな未来を自らの手で築き上げる第一歩となるでしょう。
参考資料
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
