【年金の手取り】額面通りにはもらえない?「ねんきん定期便」の見方と、老後に天引きされる「4つの項目」
Wako Megumi/shutterstock.com
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【年金の手取り】額面通りにはもらえない?「ねんきん定期便」の見方と、老後に天引きされる「4つの項目」

「見込額=受給額」ではない現実。年金から引かれるお金の仕組みと、現役世代が知っておきたい老後の備え

執筆者熊谷 良子編集記者
21:06
【年金の手取り】額面通りにはもらえない?「ねんきん定期便」の見方と、老後に天引きされる「4つの項目」
Wako Megumi/shutterstock.com

6月15日は、偶数月に一度の公的年金の支給日でした。ニュースで報じられるシニア世代の年金事情を目にしたり、ご自身に届く夏のボーナスをきっかけに、「将来、自分の老後資金は足りるのだろうか」とふと考えた現役世代の方も多いのではないでしょうか。

加えて、物価上昇が続くなか、日々の家計への負担はますます大きくなっています。

帝国データバンクの最新調査では、2026年の飲食料品の値上げ品目数が5年連続で1万品目を超える見通しとなっており、現役時代はもちろん、年金生活に入ってからの生活費への影響も懸念されています。

毎月の給与明細を見るたびに、社会保険料や税金など、さまざまな項目が差し引かれていることを実感している方も少なくないでしょう。実は、この「差し引かれる仕組み」は、公的年金を受け取る老後になっても続きます。

現役を退き、「年金でゆとりある暮らしを」と思っていても、実際には年金の支給額から税金や保険料などが天引きされるため、「思っていたより手元に残る金額が少ない」と感じるケースは決して珍しくありません。

この記事では、老後の大切な収入源となる「老齢年金」について、年金から差し引かれる主な費用や、現役世代が今のうちから気をつけるべきポイントについて順を追って見ていきます。

おさらいしよう!「国民年金」と「厚生年金」の基本と違い

まずは、日本の公的年金制度の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

大前提として、日本の公的年金は「自分が払ったお金が積み立てられて、将来そのまま戻ってくる」という個人の貯金のような仕組みではありません。

現在の現役世代が納める保険料を、現在の高齢者の年金給付に充てる「世代間扶養(賦課方式)」という考え方で成り立っています。

この原則を土台とした上で、日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」と、その上に「厚生年金」が積み重なる2階建ての仕組みとなっており、原則として65歳から受給が始まります。

年金制度の「2階建て構造」

年金制度の「2階建て構造」
年金制度の「2階建て構造」

【1階部分】全員加入の「国民年金(基礎年金)」

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円

【2階部分】会社員・公務員の上乗せ「厚生年金」

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

2階部分にあたる厚生年金は、主に会社員や公務員などが加入する制度で、国民年金に上乗せされる年金として支給されます。加入条件や保険料の決まり方、受給額の算出方法は国民年金とは異なります。

そのため、老後に受け取れる年金額は一律ではなく、これまでの働き方や収入、加入期間などによって受給額に大きな違いが生まれます。

また、公的年金の支給額は毎年同じではありません。物価の変動や現役世代の賃金水準などを踏まえながら、毎年度見直される仕組みになっている点も押さえておきたいポイントです。

※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

年代で違う?「ねんきん定期便」の正しい見方とチェックポイント

このように、公的年金の受給額は加入期間や収入によって変わるため、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」の内容を確認しておくことが大切です。

【50歳未満】これまでの「実績額」を確認しよう

50歳未満の方に届く「ねんきん定期便(ハガキ)」の見方

50歳未満の方に届く「ねんきん定期便(ハガキ)」の見方

50歳未満の方に送付される「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に基づいて算出された年金額が記載されています。

これは、これまで納めた保険料だけをもとに計算した実績額であり、今後納付する予定の保険料は反映されていません。

そのため、60歳まで引き続き保険料を納めていけば、将来受け取れる年金額は、記載されている金額より増えていくことになります。

【50歳以上】将来のリアルな「年金見込額」をチェック

50歳以上の方に届く「ねんきん定期便(ハガキ)」の見方

50歳以上の方に届く「ねんきん定期便(ハガキ)」の見方

50歳以上の方に届く「ねんきん定期便」には、現在の加入状況のまま60歳まで保険料を納め続けた場合を前提とした「年金見込額」が記載されています。

実際に老後受け取る金額に近い将来の見込み額を確認できるため、内容を定期的にチェックしておくことが大切です。

見込額=手取りじゃない!「年金振込通知書」の《4つの天引き項目》

ここからは、現役世代ではなく、実際に年金を受け取っている「受給世代」向けに届く通知書の解説です。

将来受け取れる年金の見込額は、現役時代に届く「ねんきん定期便」で確認できますが、老後を迎えて実際に口座へ振り込まれる金額は「年金振込通知書」で確認します。

年金振込通知書は、年金額の改定内容が反映される6月に、日本年金機構から原則として送付されます。

現役時代の給与が「総支給額(額面)」と「手取り額」で異なっていたように、公的年金も支給額と実際の振込額には差があります。

「ねんきん定期便」などに記載されている年金額は、各種控除前の総支給額であるため、そのままの金額が振り込まれるわけではありません。

では、実際に届く「年金振込通知書」にはどのような内容が記載されているのか、項目ごとに確認していきましょう。

年金振込通知書には何が記載されている? 

年金振込通知書

年金振込通知書

項目① 年金支払額(税金などが引かれる前の額面)

公的年金は原則として偶数月に、2カ月分をまとめて支給する仕組みです。

この欄には、税金や社会保険料などが差し引かれる前の、今回支給される2カ月分の「総支給額(額面)」が記載されています。

項目② 介護保険料額(老後も続く天引き)

現役時代は給与から天引きされていた介護保険料ですが、年金受給が始まると、原則として年金から差し引かれるようになります。

項目③ 後期高齢者医療保険料・国民健康保険料(税)

介護保険料と同様に、後期高齢者医療保険料や国民健康保険料(税)も年金から控除されます。

なお、天引きの対象となっていない場合は、この項目には金額は記載されません。

項目④ 所得税額および復興特別所得税額

年金額に応じて計算された所得税と復興特別所得税も差し引かれます。

社会保険料や各種控除を差し引いた後の金額に、5.105%の税率を掛けて算出された税額が記載されています。

項目⑤ 個人住民税額および森林環境税

所得税と同じように、個人住民税と森林環境税についても、対象となる場合は年金から控除されます。

項目⑥ 控除後振込額(これが実際の「手取り額」!)

「年金支払額」から社会保険料や税金などを差し引いた後、実際に指定口座へ振り込まれる金額が記載されています。

つまり、この金額が実際に受け取る年金の「手取り額」となります。

見込額=受給額ではない 「ねんきん定期便」を読む際の注意点

ここまで見てきたように、年金振込通知書には実際に差し引かれる税金や社会保険料の内容が記載されています。

現役時代の給与と同じように、公的年金にも各種控除があるため、「思っていたより振込額が少ない」と感じる方も少なくありません。

そのため、「ねんきん定期便」に記載されている見込額と、実際に口座へ入金される金額には差が生じます。

これは、保険料や税金などが現役時代と同様に年金から天引きされるためです。

さらに、介護保険料は3年ごとに見直しが実施されます。少子高齢化の進展などにより、今後は負担が増える可能性もあるため、制度改正の動向にも目を向けておきたいところです。

最終的な手取り額を正確に見積もることは簡単ではありませんが、資金計画を立てる際は、「ねんきん定期便」に記載された見込額よりも、実際の受取額は少なくなることを前提に考えておくと安心です。

また、公的年金は偶数月に2カ月分まとめて支給されるため、奇数月の生活費に備えて、自分年金や計画的な貯蓄などを準備しておくことも有効な選択肢といえるでしょう。

天引きされる人・されない人の違いは?「特別徴収」の仕組み

年金から保険料や税金が差し引かれる仕組みは、多くの受給者に適用されますが、すべての人が同じ方法で徴収されるわけではありません。

年金から直接差し引かれる「特別徴収」と、自分で納付する「普通徴収」があり、受給している年金額や自治体の運用などによって徴収方法が異なります。

自動で差し引かれる「特別徴収」とは?

介護保険料や後期高齢者医療保険料、住民税などは、一定の条件を満たすと年金から自動的に差し引かれます。

この仕組みを「特別徴収」といいます。

納付のために金融機関やコンビニへ出向く必要がなく、納め忘れを防げる点が特徴です。一方で、振り込まれる金額はあらかじめ保険料や税金が差し引かれた後の「手取り額」となります。

自分で納付する「普通徴収」になるケース

すべての人が特別徴収になるわけではありません。

たとえば、年金を受け取り始めたばかりの人や、転居した人、保険料額が変更された直後などは、一時的に普通徴収となることがあります。

普通徴収では、自治体から送付される納付書や口座振替などを利用して、自分で保険料を納めます。

その後、条件を満たせば特別徴収へ切り替わるケースも少なくありません。

年金の受給額が少ないと天引きの対象外に?

介護保険料などの特別徴収は、一定以上の年金を受給していることが条件の一つです。

一般的には、老齢年金などの受給額が年額18万円未満の場合は年金から天引きされず、普通徴収となるケースがあります。

また、住民税や医療保険料についても、所得や加入している保険制度などによって天引きの有無が変わるため、すべての控除項目が一律に適用されるわけではありません。

お住まいの自治体によって運用が異なる場合も

住民税や国民健康保険料の徴収方法は、自治体ごとの制度運用によって違いが見られることがあります。

同じような収入や年金額でも、居住する自治体によって納付方法や徴収時期が異なるケースもあるため、通知書の内容を確認し、不明な点があれば自治体へ問い合わせることが大切です。

年金を受け取り始めた後は、「どの項目が天引きされているのか」「自分は特別徴収なのか普通徴収なのか」を一度確認しておくことで、実際の手取り額や納付方法を把握しやすくなります。

年金は「手取り額」で把握!今から始めるインフレ&老後対策

今回は、公的年金の「ねんきん定期便」と「年金振込通知書」をもとに、年金の見込額と実際に受け取る手取り額の違いについて確認しました。

【60歳代・70歳代世帯】年金に対する意識&年金にゆとりがない理由

【60歳代・70歳代世帯】年金に対する意識&年金にゆとりがない理由

J-FLECの調査によれば、70歳代の家計で「ゆとりがない・苦しい」と感じる世帯は、二人以上世帯・単身世帯ともに約9割にのぼり、その最大の理由として半数以上が「物価上昇」を挙げています。

公的年金は生活の基盤ではありますが、それだけでインフレに対応するのは難しいのが実情です。

受給後の家計を考える際は、見込額の「額面」ではなく、実際の手取り額を踏まえて生活費とのバランスを確認しておくことが大切です。

もし年金だけでは生活費を十分に賄えない可能性がある場合は、公的年金を補うための老後資金をあらかじめ準備しておくことも有効な選択肢となります。

資産形成の方法としては、預貯金に加え、iDeCoや新NISAなどの制度を活用する方法が考えられます。

ご自身の家計状況やリスク許容度を踏まえたうえで、将来の暮らしを安心して迎えるためにも、今のうちからできる備えを一つずつ進めていきましょう。

参考資料

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熊谷 良子編集記者株式会社モニクルリサーチ

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