IHI<7013>、2027年3月期1Q決算の発表を前に、前通期からの株価と業績回復を読み解く
Kittyfly/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
19:30
IHI<7013>、2027年3月期1Q決算の発表を前に、前通期からの株価と業績回復を読み解く
Kittyfly/Shutterstock.com

この記事はここがポイント

  • IHIは2026年3月期、営業増益と当期利益プラス42.8%、ROE28.4%のV字回復。
  • 回復は防衛・航空エンジンが牽引し、2027年3月期は大幅増収増益の計画。
  • 株価は3,215円から4,303円へ急騰後調整局面、1Q決算が焦点。

一度は大きな赤字に沈んだ会社が、防衛と航空エンジンを追い風に息を吹き返している。IHI<7013>の前通期の本決算は営業増益で着地し、当期利益は4割を超えて伸びた。株価は2026年に入って急騰と調整をこなしてきた。2027年3月期1Q決算の発表を前に、前通期からの回復の中身をたどっていこう。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

2026年2月末の急騰と、その後の調整

出所:各種資料をもとに筆者作成

IHIの株価は、2025年10月末の3,215円からいったん下押ししたのち、2026年2月末には4,303円と高い水準まで駆け上がった。防衛関連への関心の高まりなどが意識された可能性はあるが、短期間の急騰だけに背景を一つに絞るのは難しい。

その後は水準を切り下げ、2026年6月末には2,712円と、同じ期間で最も低い月末水準まで下げた。7月末は2,828円と小幅に戻している。急騰の反動をこなしながら、高値と安値の間で振れている局面だ。

通期は営業増益、当期利益は4割超増

2026年3月期通期は、売上収益が1兆6,434億円、営業利益が1,655億円と前期比プラス15.3%、当期利益(IFRS)が1,610億円と同プラス42.8%となった。売上の伸びは小幅だが、利益の伸びが大きい。

利益はなぜ伸びたのか。会社によると、3Q累計時点で受注高が前年同期比プラス12.4%の1兆3,648億円に達し、防衛事業の拡大や、民間向け航空エンジンのアフターマーケット(整備や部品などの販売)の堅調がけん引した。一方で、中核事業の一部譲渡に伴う減収や、民間向け航空エンジンの整備費用の増加もあり、伸びる分野と鈍い分野が混在する決算だった。前期の2025年3月期も、前々期の損失計上の反動を背景に、受注高がプラス27.2%の1兆7,511億円、売上収益がプラス23.0%の1兆6,268億円へ伸びていた。回復は単年の跳ねではなく、受注を伴って続いている。

赤字からのV字回復と、高いROE

この利益水準は、数年前とはまるで違う。営業利益は2022年3月期の815億円、2023年3月期の820億円と横ばい圏で推移したのち、2024年3月期に701億円の赤字へ転落した。そこから2025年3月期に1,435億円へ転じ、直近はさらに積み上がっている。自己資本利益率(ROE、株主資本に対する利益の効率)は28.4%と、機械の中央値である7%台を大きく上回る。赤字からの反転が、資本効率の数字に鮮明に表れている。

事業の入れ替えも進む。1Qには、持分法適用会社であるジャパンマリンユナイテッドの持分の一部を今治造船へ譲渡することを決め、汎用ボイラなどの事業も譲渡した。中期経営計画に基づき、航空エンジンやロケット、クリーンエネルギーといった分野へ経営資源を移す方針で、稼ぐ領域へ資源を寄せる事業ポートフォリオ改革の途上にある。ただし自己資本比率は26.9%と、機械の中央値である6割台を大きく下回り、重工業らしく負債を厚めに抱えたデットヘビーな財務状態でもある。

会社は2027年3月期について、売上収益1兆8,300億円とプラス11.4%、営業利益2,400億円とプラス45.0%の増収増益を見込む。当期利益は1,650億円とプラス2.5%の計画で、営業段階での伸びを大きく想定している。年間配当も増配を続けており、連続増配は4期に達する。1Qの決算は、この強気の通期計画に対する最初の答え合わせになる。

筆者コメント

直近のIHIは、赤字からの反転局面を迎えている。2024年3月期の営業赤字を底に、翌期から利益が跳ね、ROEは機械のなかでも際立つ水準まで戻った。数年の時系列で見ると、業績のトレンドがはっきり変わっている。

その原動力は、防衛と航空エンジンという、需要の土台が比較的読みやすい分野に寄っている。受注高の伸びは、目先の売上だけでなく、先々の仕事量が積み上がりつつあることを示す。受注が利益に変わるまでには時間がかかるだけに、株価はその時間差を少しずつだが先に織り込みにいっているのかもしれない。

一方で、負債を厚めに抱えた財務は、金利や採算の変動からくるリスクを大きくする。株価が2月の急騰後に調整したのは、回復期待を一度織り込んだ反動という面があるとみられる。回復が本物かどうかは、掲げた大幅増益をどこまで数字で埋められるかにかかっている。まもなく出る1Qの中身が、その最初の試金石になるだろう。

参考資料

  • 株式会社IHI 2026年3月期決算短信

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
Google で優先するソースとして追加
石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

関連タグ