この記事はここがポイント
- オルカンは世界47カ国へ分散、S&P500は米国主要500社へ集中投資するファンド。
- 設定来はS&P500が、直近短期ではオルカンが好調な実績。
- 両者とも低コストだがオルカンはわずかに安く、投資家は成長戦略で選択。
2026年も後半に入り、新NISAでの資産形成を本格化させたいものの、「オルカン」と「S&P500」のどちらを選ぶべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
筆者はファイナンシャルアドバイザーとして、これまで多くのお客様の資産運用のご相談をお受けしてきましたが、「実際、オルカンとS&P500のどちらを選んだらいいの?」と悩まれるお声を数多く聞いてきました。
現在、多くの個人投資家から関心を集めている三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンド、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」通称オルカンと、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。
今回は、最新の交付目論見書(2026年7月25日現在)をもとに両者を比較します。目論見書だけで今後のすべてが予測できるわけではありませんが、客観的な比較材料として役立ちます。目論見書の流れに沿って、4つのポイントで分かりやすく解説していきます。
【オルカン vs S&P500】目論見書で読み解く「4つのポイント」
投資を検討している方や保有ファンドの見直しをしたい方に向けて、目論見書の記載項目から重要な4つのポイントをピックアップします。
交付目論見書でみる4つのポイント
比較ポイント1:ファンドの目的・特色
投資の基本的な考え方や、分散の範囲に違いが見られます。
オルカン(全世界株式)の特色
- 投資目的: 日本を含む先進国および新興国の株式市場の値動きに連動する投資成果を目指します。
- 連動対象(ベンチマーク): MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)。
- 分散の対象: これ1本で世界47カ国・地域(先進国23、新興国24)の株式等へ幅広く分散投資する効果が期待できます。
- 主な国別構成比: アメリカが63.0%と大部分を占め、次いで日本が5.1%、台湾3.1%、イギリス3.0%、カナダ2.9%と続きます。
- 組入銘柄数: 世界各国の2,416銘柄にのぼります。
- 為替ヘッジ: 原則行わないため、為替相場の変動による影響を直接的に受ける傾向があります。
S&P500(米国株式)の特色
- 投資目的: 米国の代表的な株価指数である「S&P500指数」の値動きに連動する投資成果を目指します。
- 連動対象(ベンチマーク): S&P500指数(配当込み、円換算ベース)。
- 分散の対象: 米国の主要企業(ニューヨーク証券取引所等に上場している時価総額上位500銘柄)に投資します。
- 主な国別構成比: アメリカ一国に実質的にほぼ100%投資します。
- 組入銘柄数: 米国の代表的な503銘柄です。
- 為替ヘッジ: 原則として行いません。
比較ポイント2:投資リスク
どちらのファンドも元本保証はなく、株式市場や為替の変動による影響をダイレクトに受けます。
両ファンドに共通する主なリスク
- 価格変動リスク: 株式の価格は企業の業績や経済状況を反映して変動するため、組み入れている株式の価格下落が基準価額の下落要因になります。
- 為替変動リスク: 原則として為替ヘッジを行わないため、円高ドル安などになると基準価額の押し下げ要因になります。
- 信用リスク: 投資先企業の財務状況悪化などにより、基準価額が下がることがあります。
- 流動性リスク: 市場に十分な需要や供給がない場合、不利な価格での取引となり、基準価額にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
オルカン特有のリスク
- カントリー・リスク(新興国リスク): 新興国(構成比約11.4%〜12.2%)への投資は、先進国に比べて政治体制の急変や重大な規制導入などの影響を受けやすく、各種リスクが大きくなる可能性があります。
比較ポイント3:運用実績(値動き、純資産総額、騰落率など)
2026年6月30日現在の最新月次レポートに掲載されている実績データです。なお、どちらのファンドも信託財産の成長を最優先させるため、分配金実績は「設定来0円」となっており、分配を抑制しています。
基準価額と純資産総額(2026年6月30日現在)
- オルカン: 基準価額 38,017円 / 純資産総額 127,439.58億円
- S&P500: 基準価額 44,399円 / 純資産総額 122,755.12億円
騰落率(分配金再投資、2026年6月30日現在)
- 過去1カ月: オルカン +0.7% / S&P500 +0.3%
- 過去3カ月: オルカン +18.2% / S&P500 +19.4%
- 過去6カ月: オルカン +13.9% / S&P500 +12.3%
- 過去1年: オルカン +38.2% / S&P500 +36.5%
- 過去3年: オルカン +93.2% / S&P500 +95.9%
- 設定来: オルカン +280.2% / S&P500 +344.0%
3年以上の長期保有では、好調な米国市場を背景にS&P500の騰落率が勝っていますが、直近1カ月や6カ月、1年などのスパンでは、全世界に分散しているオルカンが上回る局面も見られます。
主な組入銘柄トップ5(2026年6月30日現在)
どちらも上位には、世界を牽引する巨大IT・ハイテク企業が名を連ねています。S&P500は米国のみに集中投資するため、オルカンに比べてトップ企業への組入比率(集中度)が高くなっているのが特徴です。
- オルカン上位: 1位 NVIDIA(4.4%)、2位 APPLE(4.0%)、3位 MICROSOFT(2.5%)、4位 AMAZON(2.3%)、5位 ALPHABET CL A(2.0%)
- S&P500上位: 1位 NVIDIA(7.3%)、2位 APPLE(6.4%)、3位 MICROSOFT(4.2%)、4位 AMAZON(3.6%)、5位 ALPHABET CL A(3.2%)
比較ポイント4:手数料(コスト)
業界最低水準のコスト運用を目指し続ける「eMAXIS Slimシリーズ」であるため、両者ともに極限まで手数料が抑えられています。購入時手数料および信託財産留保額(解約時費用)は、どちらも無料です。
運用管理費用(信託報酬)と実質コスト
- オルカン: 年率0.05775%(税抜0.0525%)以内。直近の実績総経費率は0.07%。
- S&P500: 年率0.08140%(税抜0.07400%)以内。直近の実績総経費率は0.08%。
どちらも純資産総額が一定額を超えるごとに手数料率が段階的に引き下がる「受益者還元型信託報酬」を採用しています。実質的なコスト合計で見ても、オルカンの方がわずかに低コストとなっています。
【オルカン vs S&P500】それぞれのファンド「どのような人に向いている?」
ここまでの比較を踏まえ、それぞれのファンドがどのような人に向いているのかをまとめました。どちらのファンドも新NISAの「つみたて投資枠」「成長投資枠」双方の対象となっており、長期の資産形成に最適な超低コストファンドです。ご自身の投資哲学やリスク許容度に合わせて選んでみてください。
「オルカン」が向いている人
- 究極の分散投資がしたい人: 米国だけでなく、日本、ヨーロッパ、新興国など世界の成長を丸ごと享受したい。
- 管理を完全に手放したい人: 将来的に米国一強の時代が終わり別の国が台頭してきた際にも、自動的に配分比率が調整されるため、リバランスの手間を省きたい。
「S&P500」が向いている人
- 米国の成長を強く信じている人: 今後もイノベーションの中心であり続ける米国のポテンシャルに、最も効率よく投資したい。
- 長期的なリターンを最大化したい人: これまでの実績に裏打ちされた米国のトップ500社の成長力に、より大きな比重を置いて資産を増やしたい。
銘柄選びの前に大切な「資産配分」の考え方
ここまでオルカンとS&P500のリターンや特徴について詳しく見てきました。
筆者である私は普段、個人向け資産運用アドバイザーとして従事しておりますが、お客様からもよく「オルカンか、S&P500か」というご質問をいただきます。
しかし、実際の資産運用において最も大事なポイントは、投資信託の「銘柄選び」よりも、株式と債券や預貯金といった「資産全体のバランス(アセットアロケーション)」にあります。自分自身のリスク許容度や年齢に合わせた資産運用について考えたうえで、まずはリスク資産(株)と安全資産(債券・預貯金)の適切なバランスを見つけてみることが重要です。
その土台を作ったうえで、どのような投資信託を購入するかを決めることで、より長期的に安定した資産形成を実現することができるでしょう。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びTLC資格保有。ジブラルタ生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。

新NISAは運用益が非課税となり、非課税保有限度額の範囲内で長期的な資産形成を後押ししてくれる制度です。オルカンとS&P500のどちらが優れているかではなく、ご自身のリスク許容度や運用方針に合った商品を選ぶことが大切です。
銘柄選びだけに目を向けるのではなく、預貯金や債券を含めた資産全体の配分も意識しながら、無理のない積立投資を続けていきましょう。