JFEホールディングス<5411>、2027年3月期1Q決算の発表を前に、前期からの株価動向を読み解く
Dmytro Mikriukov/shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
12:30
JFEホールディングス<5411>、2027年3月期1Q決算の発表を前に、前期からの株価動向を読み解く
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この記事はここがポイント

  • JFE株価は2026年7月急反発、2027年3月期には当期利益倍増を予測。
  • 2026年3月期は鉄鋼事業の利益率が1.4%と低く、商社・エンジニアリング事業が利益を牽引する構図。
  • 2026年3月期の当期利益は23.6%減の702億円、ROE2.7%・PBR0.44倍ながら高配当性向72.5%を維持。

鉄鋼は重厚長大の代名詞でありながら、株価では長く1倍割れの評価が続いてきた。JFEホールディングス<5411>もその一社だ。2026年3月期通期の当期利益(IFRS)は前期比▲23.6%と落ち込み、株価は2026年6月末にかけて1,500円台まで下げた。ところが7月末には1,800円台まで上昇した。2027年3月期1Q決算の発表を前に、減益の底と回復への期待が交錯する足元を整理したい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

下落トレンドから一転、2026年7月の急反発

出所:各種資料をもとに筆者作成

JFEホールディングスの株価は、2025年秋から2026年2月にかけて1,800円台から2,200円台へ水準を上げ、この2月末が過去12か月の月末終値では最も高い水準となった。しかしそこからは流れが反転する。3月末以降は下値を切り下げ、6月末には1,560円台と、直近1年で最も低い月末水準まで沈んだ。

2026年7月はこの下落基調が一変した。直近終値は1,800円台と、前月末から2割近く水準を切り上げている。株式市場全体の地合いや鉄鋼株への見直しが意識された可能性はあるが、背景を一つに絞るのは難しい。ここでは、株価が動く前提となる業績と評価の水準を押さえておきたい。

当期利益は2割超の減益、ROEは2.7%へ

2026年3月期通期は、売上収益が4兆5,393億円、当期利益が702億円で着地した。当期利益は前期の919億円から▲23.6%の減益である。自己資本利益率(ROE、株主資本に対する利益の効率)は2.7%まで下がり、鉄鋼業の中央値である4%台を下回った。株価純資産倍率(PBR、株価が1株当たり純資産の何倍か)は0.44倍と、1倍を大きく割り込んだままだ。

数字だけを見れば、資本効率は物足りない。ただし配当性向は72.5%と、鉄鋼業の中央値である4割を大きく上回る。年間配当は80円へと前期の100円から引き下げられたが、それでも利益の7割超を配当に回す姿勢は崩していない。低いROEと高い配当性向が同居しているのが、いまの同社の姿だ。

鉄鋼本業より商社・エンジが稼ぐ利益構造

社名が示すとおり本業は鉄鋼だが、利益の出方は一致しない。2026年3月期のセグメント別営業利益を見ると、売上の6割を占める鉄鋼事業の営業利益は380億円で、利益率は1.4%にとどまる。これに対し、売上構成では4分の1ほどの商社事業が402億円を稼ぎ、金額では鉄鋼本体を上回った。

利益率の差はさらに際立つ。鉄鋼事業の1.4%に対し、商社事業は3.3%、エンジニアリング事業は4.1%と、規模の小さい事業ほど採算が高い。売上の1割強にすぎないエンジニアリングは、前期比で営業利益を2割以上伸ばしている。鉄鋼メーカーという括りだけで見ていると、実際にどこが利益を生んでいるのかを見落としかねない。本体の市況変動を、商社やエンジニアリングが和らげる構図が読み取れる。

会社が見込む当期利益の倍増予想

足元の弱さと対照的なのが、会社の来期見通しだ。会社は2027年3月期について、売上収益4兆8,000億円(+5.7%)、当期利益1,500億円(+113.8%)と、当期利益で倍増を超える回復を見込む。減益で沈んだ2026年3月期に反して、大きく反発するシナリオを描いていることになる。

配当は80円の据え置き予想で、増益を見込む局面でも、まずはキャッシュを事業に使う姿勢がうかがえる。株価が7月に急反発したことは、この回復期待や相場全体の流れを映した可能性がある。倍増の見通しは鉄鋼の市況や数量がどこまで戻るかにかかっており、その確度は次の四半期の進捗で確かめていくことになる。

筆者コメント

本業が最も薄利という事実と、市場評価が純資産の半値という事実。この二つを並べると、何が見えてくるだろうか。

鉄鋼本体の採算が細るあいだも、商社とエンジニアリングは金額でも利益率でも鉄鋼事業を上回って稼いできた。減益の谷でも黒字と高めの還元を保てたのは、この収益構造が効いているからだろう。会社が翌期に大きな回復を見込めるのも、周辺事業が土台を支えているぶん、本体の反発が利益に乗りやすいという読みがあるとみられる。

だとすれば、市場が1倍割れの評価を解くきっかけは、周辺事業ではなく本体の鉄鋼にあるだろう。稼ぐ主役が周辺へ移ったからこそ、逆に本体の採算が戻るかどうかに視線が集まる。7月の株価反発をその前触れと見るか否か、分かれ目は本体である鉄鋼事業の採算の戻りにあるとみている。

参考資料

  • JFEホールディングス株式会社 2026年3月期決算短信

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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